

スチーム式の電気代は「消費電力(W)÷1000 × 使用時間(h)× 電力量料金(円/kWh)」で概算できます。スチーム式は1時間あたり300〜400W程度が目安とされ、1日8時間で約100円、1か月で約3,000円程度という解説もあります。なお、同じスチーム式でも機種や運転モードで幅があり、消費電力300W〜800W程度とする例もあり、単純比較は危険です。
建築従事者の説明で大事なのは「同じ家でも電気代が変わる」点です。理由は、必要な加湿量(=どれだけヒーターが働くか)が、室温・換気量・隙間風・在室人数・洗濯物の室内干しの有無で変わるからです。まず施主や現場の利用者には、カタログの定格Wだけでなく「実際の運転パターン(夜だけ、終日、自動)」を聞き取り、時間を置いて見積もるのがトラブル回避になります。
電気代の“見えにくい罠”は、立ち上げ(湯沸かし)と維持運転の違いです。スチーム式は水を沸かして蒸気を作るため、運転開始直後や給水直後に電力が上がりやすく、短時間のON/OFFを繰り返すと「毎回立ち上げの電力」を踏みがちです。結果として「タイマーでこまめに切ったのに、思ったほど安くならない」ケースが起きるので、現場では“切り方”より“自動運転でヒーター稼働時間を減らす”発想が効きます。
スチーム式が「電気代が高い」と言われる最大要因は、ヒーターで加熱し続ける方式そのものにあります。一般的な目安として、スチーム式の消費電力は300W〜800W程度、1時間あたりの電気代が約3.2円〜8.6円という整理も見られます。さらに、加湿量300ml程度の一般的な製品で消費電力約300Wとして、1時間あたり約9円、1日8時間で約74円、1か月で約2,232円という試算例も提示されています。
ここで建築側が押さえたいのは、運転モード(強・弱・自動)と室内条件で「平均W」が変わることです。自動運転(湿度センサー制御)がある機種は、目標湿度に達した後に出力を落とし、結果としてヒーター稼働率が下がります。逆に、隙間風が強い現場事務所・仮設休憩所、あるいは換気量が多い(常時換気が強い、ドア開閉が多い)空間では、目標湿度に届かず強運転が続き、カタログ上の「目安より高い電気代」になりがちです。
また、同じ“加湿”でも方式で消費電力は大きく違います。スチーム式が常時ヒーター稼働で電力が大きい一方、温風気化式はスチーム式の3分の1程度の消費電力で済む、湿度が安定したらより消費電力の少ない気化式に切り替わる、といった説明もあります。施主の不満が「電気代」起点の場合、方式変更(ハイブリッド・気化)も含めて提案できるよう、方式ごとのエネルギー感覚を共有しておくと会話が早いです。
節約の基本は、ヒーター稼働時間(高Wの時間)を減らすことです。具体策として、弱設定にする、タイマー機能を使う、過剰運転を避けるといった方向性は、多くの解説で共通しています。特に「強・連続」固定は電気代が読みにくく、必要湿度までの立ち上げ後は自動制御や弱運転に落とす方が、体感を損ねずに効くことが多いです。
設置位置は、建築側のひと言で改善しやすい“現場コスパが高い”ポイントです。例えば、エアコンの気流に乗せる置き方(風の通り道)を推奨する解説もあり、蒸気を部屋全体に拡散しやすくなります。拡散が悪いと、センサー周りだけ湿って停止→部屋の隅は乾く→また立ち上げ、というムダが起き、結果として運転が安定せず電気代も体感も悪化します。
もう一つ、意外に効くのが「加湿しすぎない」ことです。湿度を上げすぎると結露・カビのリスクが上がり、建物側の損傷やクレーム(窓がびしょびしょ、押入れが臭う)につながります。加湿器の連続運転では、湿度が高くなりすぎると結露やカビの原因になるため、定期的な換気が必要という注意喚起もあり、建築側は“電気代と同時に結露リスクも管理する”説明が求められます。
建築実務では、加湿は「快適性」だけでなく「結露(熱橋・窓・換気不足)」とワンセットです。スチーム式は加湿立ち上がりが早く、短時間で湿度が上がる利点がある一方、断熱が弱い部位や窓の性能が低い現場では、露点に達しやすく結露が増えることがあります。結露水はカビの温床になりやすく、仕上げ材(石膏ボード、木部、クロス)の劣化リスクも上がるため、単に「電気代が高い/安い」より優先して注意喚起すべき論点です。
対策は、湿度の上限管理と換気のやり方の設計です。ポイントは「換気=湿度を下げる」だけでなく、「換気=乾いた外気を入れて室内の水蒸気を運び出す」行為なので、加湿器が頑張れば頑張るほど電気代が増える構造になりがちです。だからこそ、換気は“ゼロ”ではなく“適正”が重要で、現場では「窓の結露が連日出る」「押入れ・北側の角が湿っぽい」などの兆候が出たら、目標湿度を下げる、運転時間を短くする、サーキュレーターで温度ムラを減らす、といった運用で建物側のリスクを先に潰します。
意外に見落とされるのが、加湿器の置き場所と近傍素材です。蒸気が直接当たる位置に木材・合板・紙クロスがあると、局所的に高湿度となり、表面結露や変色が起きることがあります。建築側の引き渡し時には「壁・家具から距離を取る」「窓際に寄せすぎない」「床への落下結露(微細な水滴)に注意」といった、設備図面に載らない運用注意を一枚にまとめて渡すと、クレーム予防として効きます。
スチーム式は単体の電気代だけ見ると高く見えますが、建築の現場では“暖房負荷とのセット”で評価すると話が変わることがあります。湿度が上がると体感温度が上がり、暖房の設定温度を下げられて結果的に節電につながる、という考え方は電力会社系の解説でも触れられています。つまり「加湿器で数千円増えた」と見えても、エアコンや他の暖房を1〜2℃下げられて相殺、あるいはトータルで下がる可能性があります(もちろん家の断熱・気密、暖房方式、在室時間で結果は変わります)。
ここが“検索上位にありがちな”単純な方式比較と違う点で、建築従事者が価値を出せる領域です。現場での現実解は、(1) 目標湿度を高くしすぎない、(2) 暖房設定を微調整して体感を合わせる、(3) 結露が出るラインを超えない、の3点を同時に満たす運用です。例えば「湿度を上げて暖房を下げる」運用をするなら、窓の結露量・サッシ周りのカビ兆候を“安全弁”として観察し、結露が増えるなら湿度側を下げる、といったフィードバックが実務的です。
最後に、施主説明で納得感が出る言い回しを用意しておくと便利です。電気代の話を「加湿器の請求額」だけで終わらせず、「建物(断熱・換気)×運転(自動・弱・タイマー)×目標(結露しない範囲で快適)」の掛け算で最適化する、と整理すると合意形成しやすくなります。
加湿器の電気代(方式別の相場・計算の考え方)
https://home.osakagas.co.jp/column/electricity/appliance-cost/steam-humidifier-electricity-bill/
スチーム式の電気代試算(1時間・1日・1か月の目安例)
https://energy.rakuten.co.jp/column/posts/20250929_141/
スチーム式とハイブリッド式の消費電力の違い(スチーム式は常時ヒーター稼働、温風気化は抑えやすい)
https://www.dainichi-net.co.jp/products/mainichi-plus/37117/
連続運転時の換気注意(湿度過多→結露・カビのリスク)
https://www.yamada-denkiweb.com/media/24385/