

「コンタミネーション(contamination)」は、一般に「汚染」や「混入」を意味し、本来そこに存在してはいけない異物・不純物が付着したり混ざり込んだりする状態を指します。
製造分野では「コンタミ」と略され、空気・ガス・溶液・接触部などを介して、塵埃(ちり・ほこり)や加工屑、汚染物質、微生物などが対象物に入り込むリスクとして説明されています。
建築現場に置き換えると、対象は「製品」ではなく、仕上げ面・設備機器・居室空気・ダクト内部・天井裏・搬出入経路などに広がり、異物も粉じん、繊維、臭気成分、結露水、薬剤ミスト、カビ胞子など多岐にわたります。
現場で伝わる「言い換え例」を先に持っておくと、協力会社への指示が早くなります。
特に「清掃したのに汚れる」事故は、清掃品質よりも、空気の流れ・養生の隙間・動線設計の欠陥が原因になりやすい点が要注意です。
クロスコンタミネーション(交差汚染)は、汚染されたものを介して、汚染されていない側へ汚染が“移る”現象として説明されています。
建築で起こりやすいのは、作業者・台車・脚立・掃除機・ウエス・手袋・養生材の再利用などを媒介に、解体側や粉じん発生側の要素が仕上げ側へ持ち込まれるパターンです。
また、空調や換気の状態によって微粒子が移動し、隣接区画へ入り込むリスクがある点も、異物混入の一般説明と整合します。
クロスコンタミ対策は「清潔側を守る」発想でルール化すると回りやすいです。
ここで意外に効くのが「写真での共有」です。養生の完成状態、出入口の運用、廃材仮置きの位置、掃除機・フィルタ交換の記録などを写真で残すと、次現場での再現性が上がります(言い争いの予防にもなります)。
粉じんの飛散を抑える考え方として、石綿(アスベスト)対策の公的資料は参考になります。
環境省の資料では、除去作業の手順に「床・壁の隔離養生」「集じん・排気装置の設置」「粉じん飛散抑制剤の散布」「清掃」「養生撤去と二重袋詰め」などが並び、隔離と清掃が一体の工程として整理されています。
また、隔離養生はプラスチックシートで密閉し、出入口以外の扉・窓・換気口などは目張りして室内を密閉する、といった具体的な考え方が示されています。
ここから建築一般に転用できるポイントは、「養生=貼る作業」ではなく「汚染を閉じ込め、外へ出さず、最後に回収する仕組み」という点です。
養生を“厚く広く”すれば安全、とは限りません。隔離範囲が広いほど片付け・清掃範囲が増え、粉じんが残る可能性の範囲も広がり、負圧などの維持管理も難しくなるため、隔離範囲は一般に狭い方がよい、という考え方が明記されています。
現場で実装するなら、次の観点で「設計→施工→運用→撤去」を揃えます。
参考(隔離養生・施工区画・掲示・負圧などの具体)。
環境省資料(石綿飛散防止対策の概要)
https://www.env.go.jp/air/asbestos/litter_ctrl/manual_td_1403/chpt3-04.pdf
隔離は「密閉養生」と「集じん・排気装置による負圧維持」によって成立し、隔離養生が破れたり負圧でなくなったりすると漏えいの危険が高まる、という整理が示されています。
さらに、集じん・排気装置はHEPAフィルタで粉じんを捕集しつつ、作業場内を負圧に維持して汚染空気の漏洩を防ぎ、セキュリティゾーンを経由して外部の新鮮空気を作業場へ送るための装置、と説明されています。
また、能力設計の目安として「隔離空間の内部の空気を1時間に4回以上換気できるように台数を決定」する考え方や、負圧の目安(例:-2~-5Pa)が記載されています。
ここが“意外に見落とされる”のは、負圧を作ること自体が目的化して、逆に汚れを引っ張る構造になるケースです。
たとえば、清潔側の隙間(天井点検口、EPS、ドア下、配管スリーブ未処理部)が残ったまま強い負圧をかけると、建物内の別の汚れ(天井裏の堆積粉、機械室の粉じん、外気側の砂埃)を“吸い込む”方向の流れが生まれます。
つまり「どこから給気される前提で負圧を作るか」を決めずに運用すると、隔離のつもりが“集塵機”として建物全体の汚れを集める装置になり得る、という逆転現象が起こります。
対策は、難しい機器更新よりも、点検と運用の精度で改善できることが多いです。
建築現場のコンタミは、専門用語を覚えるより「何が、どこから、どこへ、どう移るか」を工程表と平面図に落とす方が、再発防止に直結します。
参考)コンタミネーションとは?起こる原因と対策方法を解説
そのうえで、汚染源(粉じん発生、臭気発生、湿潤化、薬剤散布、解体ガラ、作業着)ごとに、養生・清掃・動線・換気の4点セットで対策を組むのが実務的です。