

FIT制度の買取期間が終わっても、売電収入はゼロにはなりません。
固定価格買取制度(FIT制度)が正式にスタートしたのは、2012年7月1日です。根拠となる法律は「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(再エネ特措法)」で、2011年8月に成立、翌年7月から施行されました。
ただし、制度の"前身"はもう少し早く存在していました。2009年11月から「太陽光発電の余剰電力買取制度」がスタートしており、家庭で使い切れなかった太陽光の電気を電力会社が買い取る仕組みがすでに動いていたのです。つまり、「買取の概念」自体は2009年から、「風力・水力・地熱・バイオマスを含む本格的なFIT制度」は2012年からと整理できます。
2012年のスタートを後押しした最大の出来事が、2011年3月の東日本大震災と福島原発事故です。原子力への依存度を下げ、国産の再生可能エネルギーを大量普及させる必要が生じたことが、制度を前倒しで整備する直接の引き金になりました。
当時の日本のエネルギー自給率はわずか約8%で、先進国の中でも最低水準でした。この状況を打開するため、初年度の買取価格は住宅用(10kW未満)42円/kWh、事業用(10kW以上)40円/kWhという高水準に設定されました。この価格設定は投資として十分に魅力的なものだったため、太陽光発電の導入量はFIT開始後5年で約8倍(5GW→約39GW)まで急拡大しています。
建築業の現場に引きつけて考えると、2012年当時から新築住宅の屋根に太陽光パネルを乗せるニーズが急増したのも、この42円という高単価が背景にあります。「FITがいつから始まったか」を正確に知っておくことは、顧客に対して制度の経緯を説明する際の基礎知識として欠かせません。
資源エネルギー庁による制度の詳細はこちらで確認できます。
資源エネルギー庁|過去の買取価格・期間等(2012年度~2024年度)
FIT制度の開始から現在まで、買取価格(売電単価)は毎年引き下げられてきました。これは「太陽光パネルの製造コストが世界的に低下しているため、高い補助は不要になった」という考え方に基づいています。
住宅用太陽光(10kW未満)の主な価格推移を整理すると、以下の通りです。
| 年度 | 住宅用(10kW未満) | 事業用(10kW以上) | 主な出来事 |
|---|---|---|---|
| 2012年 | 42円/kWh | 40円/kWh | FIT制度スタート |
| 2014年 | 37円/kWh | 32円/kWh | — |
| 2017年 | 28円/kWh | 21円/kWh | FIT法改正・入札制導入 |
| 2020年 | 21円/kWh | 12円/kWh | 再エネ特措法再改正 |
| 2022年 | 17円/kWh | 10円/kWh | FIP制度開始 |
| 2024年 | 16円/kWh | 8〜9円/kWh | — |
| 2026年度〜 | 24円/kWh(最初の4年間) | 19円/kWh(最初の5年間) | 初期投資支援スキーム導入 |
わずか10年間で買取価格は当初の3分の1以下になっています。これは大きな変化です。
特に建築業の方が顧客に太陽光搭載を提案する際に重要なのが、「申請した年度の買取価格が10〜20年間固定される」という点です。たとえば2016年度に申請した住宅なら31円/kWh、2024年度申請なら16円/kWhが固定されます。申請のタイミングが収益に直結するため、「早めに動いたほうが得か」というご質問には、こうした価格推移の背景知識が必要になります。
2025年度以降は「初期投資支援スキーム」と呼ばれる新方式が導入されました。最初の数年は高単価、後半は低単価という2段階構成に変わったため、従来と比べて仕組みが複雑になっています。顧客への説明がより重要になったといえるでしょう。
FIT制度は2017年4月に大幅な法改正を迎えました。この改正を理解しておくことは、建築業の現場で太陽光案件を扱う際に直接役立つ知識です。
改正の主な引き金は「未稼働案件の急増」でした。制度開始当初、買取価格が高かった時期に設備認定(現在の事業計画認定)だけを取得し、実際には設備を建設しない業者が大量に現れたのです。これらは「権利だけを持ち、実際には発電しない案件」として問題視されました。
国全体での未稼働案件は最終的に5.3万件・4.2GWにのぼり、2023年4月に経済産業省が一括で認定を失効させています。これは東京ドーム約30個分の屋根面積に相当する規模です。
2017年改正の主なポイントは4つあります。①事業計画認定制度の導入により、発電設備ごとに計画書の提出・審査が必要になりました。②入札制度の導入により、大規模案件の買取価格は競争入札で決定されるようになりました。③認定から一定期間内に運転を開始しない案件は認定が失効するルールが導入されました。④安全性確保や地域との関係構築など、発電事業者としての責任が明確化されました。
建築業として太陽光案件に関わる際、特に③が重要です。
10kW未満の住宅用は認定から1年以内、10kW以上の産業用は原則3年以内に運転を開始しなければ認定が失効します。工期の遅れや施工業者の問題で期限を超えると、認定そのものが取り消されてしまいます。
「認定をとっておけばいつでも売電を開始できる」という考えは、2017年以降は通用しません。これが条件です。スケジュール管理を含めた提案が、建築業として信頼を得るポイントになります。
資源エネルギー庁|太陽光発電の未稼働案件への対策(経緯と詳細)
FIT制度の「いつから」を考えるとき、「いつ終わるか」もセットで押さえておく必要があります。買取期間が満了した状態を「卒FIT(そつフィット)」と呼びます。
住宅用太陽光(10kW未満)の買取期間は10年間、産業用(10kW以上)は20年間です。FIT制度が2012年7月にスタートしたため、住宅用は2022年以降から順次卒FITを迎えており、産業用は2032年以降に大量の卒FIT案件が発生することが見込まれています。これが「2032年問題」と呼ばれる課題です。
卒FIT後に何が変わるかというと、固定価格での買取が終了し、電力会社と改めて売電契約を結ぶ必要があります。FIT期間中の買取価格と比較すると大きな差があります。たとえば2012年度に42円/kWhで売電していた方は、卒FIT後は電力会社のメニューにもよりますが7〜9円/kWhが相場です。売電収入は実質3分の1以下になります。
建築業としてリフォームや蓄電池提案、屋根の修繕提案に関わる場合、卒FITの時期を把握することはビジネス機会に直結します。2032年以降は産業用案件が順次卒FITを迎えるため、蓄電システムや自家消費型太陽光のリプレース需要が大幅に増加すると予測されています。
三菱総合研究所の試算では、2050年時点の太陽光発電導入見込み量のうち22.5%が卒FIT後に離脱するリスクがあるとされています。これは産業全体での設備撤去・処分ビジネスの需要にもつながる話です。
和上ホールディングス|太陽光発電「2032年問題」の詳細解説
2026年度(2025年10月1日認定申請分以降)から、FIT制度が大きく変わりました。建築業に関わるすべての方が把握しておくべき変更点です。
最大の変化は「初期投資支援スキーム」の導入です。これまでのFIT制度は、申請した年度の買取価格が10年間(または20年間)ずっと同じでした。新制度では買取期間が2段階に分かれています。
住宅用太陽光(10kW未満)の場合、最初の4年間は24円/kWhという高単価が設定され、5年目以降は8.3円/kWhに下がります。事業用(屋根設置)は最初の5年間が19円/kWh、6〜20年目は8.3円/kWhです。これは面白い仕組みです。
なぜこのような制度になったかというと、「初期費用を早期に回収させることで、より多くの人が太陽光を導入しやすくする」という狙いがあります。第7次エネルギー基本計画では、2030年までに新築戸建て住宅の6割に太陽光を設置するという目標が掲げられており、それを達成するための強力な誘導策です。
建築業として見逃せないのが、東京都の太陽光設置義務化との組み合わせです。2025年4月から、都内で年間供給延床面積2万㎡以上の大手ハウスメーカー等は、延床面積2,000㎡未満の新築建物に太陽光パネルの設置が義務付けられています。この義務化対象のハウスメーカーと取引がある下請け・施工業者にとっては、FIT申請の流れや新制度の説明力が直接、受注の質に影響します。
再エネ賦課金(FIT制度の買取費用を全国民が電気料金に上乗せして負担する仕組み)も2025年度は3.98円/kWhと過去最高水準を更新しており、月400kWhを使用する標準家庭では年間約1万9,000円の負担になっています。この金額はA4コピー用紙約2,000枚分の単価に相当するほどの規模感です。制度全体のコスト構造を理解していることが、顧客への誠実な説明につながります。
資源エネルギー庁|買取価格・期間等(最新版・FIT・FIP制度)
経済産業省|2025年度以降の賦課金単価・買取価格の公表(公式)

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