再生可能エネルギー種類と特徴、建築事業者向け活用法

再生可能エネルギー種類と特徴、建築事業者向け活用法

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再生可能エネルギー種類と特徴

この記事でわかる主なポイント
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再生可能エネルギーの主要7種類

太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス、太陽熱、波力など法律で規定された種類と特性を解説

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建築業界での活用方法

ZEBや省エネ建築における導入事例と実践的な活用ノウハウ

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導入のメリットとコスト削減策

発電効率の比較、初期投資回収方法、補助金活用のポイント

再生可能エネルギー種類の法律上の定義

再生可能エネルギーは、法律によって7種類に規定されています。具体的には太陽光、風力、水力、地熱、太陽熱、バイオマス、その他の自然界に存在する熱が含まれます。これらは「エネルギー源として永続的に利用することができると認められるもの」として定義され、石油や石炭などの化石燃料とは異なり枯渇しないエネルギー資源です。
参考)再生可能エネルギーは何種類?国内の発電に占める割合も解説 -…

再生可能エネルギーの最大の特徴は、自然界に存在するエネルギー源であり、発電時にCO2を排出しないことです。また、国内で生産できるため、エネルギー自給率が低い日本において、自給率の改善にも効果をもたらすことが期待されています。建築事業者にとって、これらのエネルギー源を理解することは、今後のプロジェクト設計において重要な知識となります。
参考)https://green-innovation.nedo.go.jp/article/renewable-energy/

日本政府は2030年度までに再生可能エネルギーの電源構成比率を36〜38%まで達成することを目指しており、これにより再エネの発電設備建設が今後進むことは間違いなく、建設業界にとって大きな市場となります。
参考)建設業におけるカーボンニュートラル達成に向けて|企業事例紹介…

再生可能エネルギー種類別の発電効率比較

発電効率は再生可能エネルギーの種類によって大きく異なります。水力発電が約80%と最も高い発電効率を誇り、次いで風力発電が約30〜40%、地熱発電とバイオマス発電が約20%、太陽光発電が約15%〜20%となっています。
参考)発電効率とは?種類別ランキング・太陽光発電の損失(ロス)を解…

発電方法 発電効率 主な特徴
水力発電 約80% 水の位置エネルギーを利用し、摩擦損失が小さい
風力発電 約30〜40% エネルギー変換効率が高く、強い風があれば火力発電と同等の発電量も可能
地熱発電 約20% 地球の持つエネルギーを利用し、CO2を排出しない
バイオマス発電 約20% 動植物由来の生物資源を燃焼、排熱を暖房や温水として有効活用
太陽光発電 約15〜20% 自然エネルギーで最も発電量が多く、設置場所の自由度が高い

水力発電は水路に流したときの摩擦損失が小さく、ほとんどを運動エネルギーに変換できるため、発電システムで生じる損失を加えても高い効率を維持します。一方、太陽光発電は効率が低めですが、設置場所の制約が少なく、建築物の屋根や壁面に設置できる利点があります。
参考)太陽光発電のメリットとデメリットについてわかりやすく解説

風力発電は、最大約60%の発電効率が理論上可能とされていますが、発電機での摩擦などの損失により、実際の効率は約20~40%に低下します。しかし、変換効率が良く、風があれば夜間でも発電可能なため、導入量は2000年以降増加しており、設置基数は2,000基以上、設備容量は335.7万kWとなっています。​

再生可能エネルギー種類ごとのメリットとデメリット

再生可能エネルギーには共通のメリットとして、エネルギー源が枯渇しないこと、温室効果ガスの排出量を削減できること、多くの地域でエネルギーが調達可能なことが挙げられます。また、有害物質廃棄物が発生しにくく、新たな設備投資による経済効果も期待できます。
参考)再生可能エネルギーとは?メリット・デメリットや種類、問題点を…

一方で、デメリットとしては天候などの影響で発電量が変動しやすいこと、発電コストが高いこと、エネルギー資源の供給地や発電所の設置場所を検討する必要があることが挙げられます。電力は蓄積・保存しておくことが難しいエネルギーのため、常に安定供給できるかどうかが重要なポイントです。​
太陽光発電のメリットは、発電時に二酸化炭素の排出がないこと、自家消費で電気代を節約できること、売電収入を得られること、災害・停電時の非常用電源になることです。ただし、晴れている時にしか発電ができないため、安定した電力の供給には弱い面があり、導入コストが高い点も課題として挙げられます。
参考)太陽光発電の仕組みを図解でかんたん解説!特徴や基礎知識もご紹…

水力発電は太陽光や風力に比べて発電量が天候に左右されにくく、電力供給に安定感があるのがメリットで、水量を調節することで発電する量を変えることもできます。一方で、ダムの建設による自然環境の破壊などが問題視されており、降水量が極端に少ないと十分な発電ができなくなってしまうのも難点です。
参考)再生可能エネルギーとは?特徴や種類などわかりやすく解説

バイオマス資源は光合成により二酸化炭素を吸収、固定して成長するため、燃焼時に発生する二酸化炭素は大気中の二酸化炭素濃度に影響しません。化石燃料の代わりに使うことで地球温暖化防止につながり、未利用材の利用を通じて山林の整備や新しい産業・雇用の創出など、地域の活性化にも貢献します。
参考)再生可能エネルギーってなに?

再生可能エネルギー種類別の建築事業者向け活用法

建築業界においては、再生可能エネルギーをうまく活用することで温室効果ガスの排出量削減につなげることができます。石炭・石油・天然ガスを使用した化石燃料の代わりに、温室効果ガスを発生させない環境にやさしい再生可能エネルギーを活用する建設現場も少しずつ増えてきています。
参考)建築業におけるカーボンニュートラル実現へ向けた課題やできるこ…

国内で実際に行われている建築物における再生可能エネルギーの活用方法として、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)があります。ZEBとは「快適な室内環境を維持しつつ、建物で消費する年間の1次エネルギー収支をゼロにすること」を目指した建物です。省エネで使用エネルギーを減らし、創エネで使用するエネルギーを創ることで、建物運用におけるエネルギー消費量をゼロにするのがZEBの目的です。​
環境省のZEB事例集では、全国の新築ZEB建築物の事例が公開されており、設計段階から参考になる具体的な導入技術や省エネ手法が確認できます
三菱電機株式会社のZEB関連技術実証棟では、自然エネルギーの活用、高効率設備の導入等による徹底的な省エネに加え、すべて建物上に設置した太陽光発電により建物単体でZEBを達成しています。都市部の中規模オフィスビルにおいてZEBが実現可能であることを立証した他、省エネと快適性・健康性の両立を実現しています。
参考)ZEB(ゼブ)の事例を11個紹介!公共建築物と民間の建築物に…

ダイキン工業福岡ビルでは、改修をきっかけに空調や換気、照明技術を取り入れZEB Readyの認証を取得しており、屋上には太陽光発電システム、二重窓、ZEBモニターも導入し、設備を更新することで夏も冬も快適性を維持しながら省エネ性能の向上を実現しました。
参考)ZEB(ゼブ)の事例10選を一覧でご紹介~公共施設やオフィス…

再生可能エネルギー種類別の導入コスト削減手法

再生可能エネルギーの導入コストを下げるための取り組みとして、他社と共同で再生可能エネルギーの発電設備を導入・運用を行うことでコストの低減につながります。1社だけで再生可能エネルギーを導入すると高額な費用を負担しなければなりませんが、共同導入・運用をすることでコストを分散可能です。
参考)日本の再生可能エネルギーのコストが高額な理由と対処法を解説!…

共同導入や運用を行う例として、1つの建物において事業を行っている企業同士での共同運用があり、具体的には屋上や敷地内への再生可能エネルギーの発電設備の設置などが挙げられます。これは建築事業者が複数のテナントが入居する建物を設計する際に、提案できる付加価値となります。​
太陽光発電と風力発電は日本においても普及が拡大しており、建設コストを下げられる可能性があります。経済産業省の試算によると、2020年~2030年までの期間中、太陽光発電(在宅)は約7万円、太陽光発電(事業用)は約4万円程度建設コストを低減できます。さらなる再生可能エネルギーの普及拡大が見込まれることで、発電設備の大量生産と単価を下げられる効果も期待できます。​
資源エネルギー庁の発電コスト検証資料では、各電源のコスト面での特徴や構造が詳しく解説されており、2040年に向けたエネルギー政策の参考になります
ステッカー式太陽光パネルの利用も、コスト削減につながる1つの方法です。通常の太陽光パネルの場合は架台を設置しなければならず、購入から施工まで高額な費用がかかる傾向にありますが、ステッカー式太陽光パネルであれば貼り付けるだけで利用できるため手軽に設置可能です。太陽光パネルの裏面は粘着素材であり、安定感がよいという特徴もあります。​
発電コストも建設コストと同じで、太陽光発電と風力発電にかかる発電コストを低減できる可能性があり、大量生産で1つあたりのコストを下げられることに加え、技術開発が進歩したことが理由として考えられます。経済産業省の試算では、2020年~2030年までに太陽光発電(在宅)は約3万円~9万円、太陽光発電(事業用)は約1万円~3万円、風力発電(洋上)は約4万円、風力発電(陸上)は2万円~10万円程度削減できる見込みです。​