
公称電圧は、電気系統を代表する標準的な線間電圧として定義されています 。建築現場では、電気事業法で定められた電圧分類に基づいて電力供給系統を計画する際の基準値となります。具体的には、低圧系統では100V、200V、100/200V、230V、400V、230/400Vが公称電圧として規定されており、高圧系統では3,300V、6,600V、11,000V等が標準値として使用されています 。
参考)【電気用語解説】公称電圧と最大使用電圧
建築業界では、キュービクルの設置や受変電設備の計画において、この公称電圧を基準として設計を行います 。特に大型建設現場では、6.6キロボルトの高圧電力を受電し、キュービクルを使用して100Vや200Vに変圧する際の基準電圧として公称電圧が重要な役割を果たします 。また、電気設備の絶縁耐力試験では、最大使用電圧を公称電圧に基づいて算出するため、安全性確保の観点からも欠かせない概念です 。
参考)建設現場で電気を使うための手続きやコスト削減の方法をご紹介
定格電圧は、電気機器や装置に対して製造業者が性能や特性を保証する電圧値を指します 。建築現場で使用される照明器具、動力設備、制御機器等において、安全かつ正常に動作することが保証される電圧範囲として表示されています。例えば、AC100V、DC12V、100-240V AC 50/60Hzなどの表記で機器本体や取扱説明書に記載されています 。
参考)定格|電源の用語集|松定プレシジョン
建築業従事者にとって定格電圧の理解は機器選定時に極めて重要です。建設現場では電圧変動が発生しやすく、定格電圧範囲内での使用が機器の寿命や安全性に直結します 。特に建築設備工事では、照明やスイッチ、コンセント等の電気設備において、定格電圧が150Vを超える器具については特別な取り扱いが必要となります 。また、電動工具や建設用重機の電気式機器においても、定格電圧の適合性確認が故障防止と作業安全性確保の基本となります。
参考)https://www.mlit.go.jp/common/001472792.pdf
建築現場における電圧の使い分けでは、公称電圧は電力供給システムの設計段階で使用され、定格電圧は具体的な機器選定や設置段階で重要となります 。例えば、建物の受電設備を計画する際は公称電圧6,600Vの高圧受電として設計し、実際の機器選定では各機器の定格電圧仕様を確認して適合性を判断します。
参考)公称電圧、定格電圧、最大使用電圧、耐電圧の違いについてのまと…
電気設備工事では、使用電圧(公称電圧)に対する最大使用電圧の概念も重要です。最大使用電圧は公称電圧に安全係数を乗じた値で、絶縁耐力試験の基準となります 。高圧電路では「公称電圧×1.15/1.1≒公称電圧×1.045」として算出されることが一般的です 。建築業従事者は、この関係性を理解して適切な絶縁設計を行う必要があります。また、電源側(発電・送電系統)では公称電圧、負荷側(電気機器)では定格電圧という使い分けが基本となっています 。
参考)定格電圧、公称電圧の違いを教えて下さい。現在電験3種の参考書…
建築工事における電圧管理では、工期との関係も重要な要素となります。1年未満の短期工事では臨時電力契約を利用しますが、この場合の電気料金は通常契約より約20%高く設定されています 。また、建設現場特有の環境条件により電圧変動が生じやすく、定格電圧範囲を超える使用は機器故障の原因となるため、電圧監視装置の設置が推奨されます。
PAS(気中負荷開閉器)の選定においても、定格電圧は公称電圧の1.2/1.1倍として算出されます。例えば、公称電圧6.6kVの場合、定格電圧は「6.6kV×1.2/1.1=7.2kV」となります 。この計算は常時の系統電圧変動を考慮した安全設計の基本となっており、建築電気設備の設計者は必ず理解しておくべき概念です。さらに、太陽光発電設備を建築物に設置する際は、公称電圧12Vの太陽電池モジュールが標準として使用されるため、これらの組み合わせ設計においても電圧概念の正確な理解が不可欠です 。
参考)PASの設計|PASの仕様選定方法と定格電流の計算方法につい…
建築電気設備における絶縁設計は、公称電圧を基準とした厳格な規格に従って実施されます。電気設備の技術基準では、使用電圧(公称電圧)に応じて具体的な絶縁耐力試験電圧が規定されており、7000V以下の設備では「最大使用電圧の1.5倍の電圧を10分間連続印加」という基準が設けられています 。
参考)高圧受電設備で使用される電力ケーブルや器具等の絶縁耐力試験器…
建築業従事者が特に注意すべき点は、公称電圧1000V以下と1000V超の電線路で異なる安全基準が適用されることです 。低圧電路では100V、200V、100/200V等の公称電圧が使用され、高圧電路では3,300V、6,600V等が標準となっています 。これらの電圧区分に応じて、絶縁材料の選定、離隔距離の確保、保護装置の設置などが法的に義務付けられており、建設現場での安全確保の根幹となる重要な概念です。また、電気工事士の資格区分も電圧レベルに応じて定められており、適切な有資格者による工事実施が法的に要求されています。
参考)https://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/sangyo/electric/files/20181022-3.pdf