

鋼材強度計算の「フリーソフト」と一口に言っても、実務で求める機能は大きく3系統に分かれます。まず、見積・積算・発注に直結する「重量計算(形鋼、プレート、パイプなど)」系、次に強度計算の前提になる「断面性能(断面二次モーメントI、断面係数Z、断面積A、重心位置など)」系、そして梁や部材として安全性を確かめる「強度計算(応力、たわみ、場合によっては応力図)」系です。現場で「強度計算がしたい」と言っていても、実は断面性能の計算がボトルネックになっているケースが多く、最初にこの整理をしておくと導入が速くなります。
公開されている無料ツールの中には、鋼材重量計算や断面特性(断面二次モーメント等)をまとめて扱えるものがあり、設計の入口作業を電卓から解放してくれます。例えば、鋼材の重量計算・強度計算・断面性能などを目的別に紹介しているページでは、重量計算、数量計算、断面特性計算、二次部材設計などに用途を分けてツールが整理されています(例:断面特性計算名人、SSPAN フリー版など)。
参考)https://d-engineer.com/unit_formula/haritawami.html
一方で、梁の応力・たわみまで一気に出したい場合は、梁計算専用のフリーソフトやWebツールが便利です。応力、たわみ、曲げモーメント図の自動作成をうたうフリーソフトもあり、「公式集を引く→式変形→単位合わせ→図化」という工程を短縮できます。
参考)無料で揃う【鋼材の重量計算・強度計算】向けフリーソフトが充実…
実務上の注意点として、重量計算・断面性能・強度計算が同じツール内に見えても、計算の前提(材料定数、形状の丸め、フィレットRの扱いなど)が異なると結果にズレが出ます。特にH形鋼や角形鋼管は「寸法表どおりの理想形状」ではなく、R部を無視するかどうかで断面性能が微妙に変わるため、精密な比較やチェックでは「どの前提で算出されたI・Zか」を必ず明記して運用するのが安全です。
参考:鋼材計算フリーソフトの種類(重量・断面特性・二次部材設計などの整理)
https://constupper.com/kouzai01/
フリーソフトの提供形態は、ざっくり「Excel(VBA含む)」「Webツール」「インストール型(Windows等)」に分かれます。Excelは社内配布やカスタマイズがしやすく、入力項目の追加(部材番号、工区、備考、単価連携など)もしやすいのが強みですが、バージョン差・マクロ制限・保護ビューなど運用面の落とし穴があります。
Webツールはインストール不要で、現場PCでもすぐ使える反面、入力できる荷重ケースや境界条件が限定されることがあります。例えば、梁のたわみ・応力を自動計算するツールは「単純梁」「片持ち梁」など典型ケースに強い一方、複合断面や座屈、接合部などは対象外になりやすいので、適用範囲を見て「一次検討用」と割り切ると運用が安定します。
参考)【強度計算】はりのたわみ計算ツール
インストール型は図や帳票(荷重図・応力図など)を出せるものがあり、作業が“計算→報告”までつながりやすいのが利点です。梁の応力・たわみ・曲げモーメント図の自動作成を特徴にするフリーソフトもあり、検討結果を共有するときに強いです。
参考)はりのたわみと応力の計算 フリーソフト
選定のコツは「入力のしやすさ」ではなく、次の3点を最初に確認することです。
・何を出力するソフトか(重量、断面性能、応力、たわみ、図、帳票)
・前提(材料定数E、せん断弾性係数G、単位系、許容応力度の考え方)
・運用(社内のExcel環境、マクロポリシー、Webアクセス制限、現場PCの権限)
特にExcel系の計算は“改変できる”がゆえに、誰かがセルを触って式が壊れる事故が起きがちです。業務で使うなら、入力セルの色分け、保護、計算根拠の表示(参照したI、Z、Eなど)を最低限セットにして「壊れても気づける」設計に寄せるのが現実的です。
無料ツール運用で最も大切なのは、ボタン一発の結果を“正しい数字”と信じることではなく、「何を満たしているか」を検算で確認することです。建築の鋼材では、許容応力度や基準強度Fの扱いは建築基準法施行令や告示で体系化されており、鋼材種類ごとに基準強度が定められ、長期・短期などの考え方もルール化されています。
例えば、鋼材(炭素鋼)の許容応力度について、長期許容応力度(圧縮・引張・曲げ)が F/1.5、長期のせん断が F/1.5/3、短期は長期の1.5倍といった整理が一般向け解説でもまとめられています。ここを理解していないと、ツールが出した「応力(MPa)」と「許容応力度(MPa)」を比較する段階で、長期なのか短期なのかが曖昧になり、判断がブレます。
参考)鋼材の許容応力度等 – 建築士の必要知識
検算の実務的な進め方は次の通りです。
✅ まず単位を固定:N/mm2(MPa)なのか、kN・mm系なのかを入力前に決める(混在が最悪)。
✅ 断面性能の出典を固定:JIS形鋼の表の値なのか、ツールが算出した値なのかを記録する。
✅ 代表ケースを手計算で照合:単純梁・集中荷重・等分布荷重など、公式が明確なケースで一致するかを見る。
✅ “許容値側”も検算:Fの参照(鋼材種、板厚条件)を確認し、長期/短期で比較しているか確認する。
参考)https://www.mlit.go.jp/notice/noticedata/pdf/201703/00006510.pdf
あまり知られていない落とし穴として、「材料強度」と「許容応力度」を同じ“強度”として見てしまうミスがあります。告示には基準強度(許容応力度の基準強度)と材料強度の基準強度が整理されており、ツールがどちらを採用しているかで安全側/危険側の判断が逆転し得ます。
参考:鋼材等の許容応力度・基準強度(告示本文)
https://www.mlit.go.jp/notice/noticedata/pdf/201703/00006510.pdf
建築従事者が「鋼材強度計算」で最初に効率化できるのは、実は主架構よりも“二次部材・付帯部材”の一次検討です。母屋、胴縁、小梁、架台、開口補強などは、荷重条件が比較的単純で、梁のたわみ・応力の検討が回るほど設計が前に進みます。こうした領域では、たわみ量、応力、曲げモーメント図まで自動作成するフリーソフトが、検討速度を大きく上げます。
ポイントは、ソフトに入れる前に「荷重のモデル化」を一段だけ丁寧にすることです。例えば、等分布荷重に見えるものでも、実際は設備の架台反力で集中荷重に近い場合があり、等分布に丸めると最大曲げモーメントがズレます。フリーソフトは“モデルを正しく作れる人ほど強い”道具なので、入力前に「支持条件」「荷重位置」「スパン」「許容たわみ(例:スパン比)」を紙に1回書いてから入れると、手戻りが減ります。
H形鋼の扱いでは、断面性能(I、Z)を手入力不要にしてくれるツールもありますが、その場合でも「採用断面が本当に想定のH鋼か」を別のルートで確認するのが安全です。鋼材重量計算や断面特性計算を扱うページでは、形鋼の重量・断面性能をまとめて扱えるツールが紹介されており、梁計算前の準備に向きます。
加えて、梁の計算ソフト側が「断面二次モーメントI、断面係数Z、断面積Aを用意しておく」ことを前提にしている場合もあります。つまり、梁計算ツール単体では完結せず、断面性能計算のツール(または形鋼表)とセットで運用するのが現実的です。
検索上位の記事では「おすすめソフト一覧」「無料で使える」「便利」といった紹介が中心になりがちですが、実務で本当に困るのは“上司チェック”や“第三者説明”の場面です。フリーソフトで算出した数値が正しくても、「その数値がどの前提で出たか」を説明できないと、結局やり直しになります。そこで有効なのが、社内承認に耐える「ログ設計」を最初から組み込む運用です。
具体的には、ExcelでもWebでも、次のログが残る形に寄せます。
・入力ログ:スパン、支持条件、荷重(長期/短期)、材料、断面寸法、単位系。
・参照ログ:断面性能I・Z・Aの出典(ツール算出か、形鋼表か)とバージョン。
・結果ログ:最大曲げ応力度、最大たわみ、許容値、判定(OK/NG)と計算日時。
・検算ログ:代表ケースでの手計算値(1ケースでよい)と一致/差分理由。
この“ログ”を残すだけで、無料ツールでも品質保証の形が整い、上司や審査側が見たいポイント(再現性、追跡性)が満たしやすくなります。実際、鋼材計算ツール紹介でも「計算ミス防止」「再計算の速さ」「新人教育に有効」などがメリットとして挙げられており、これは裏返すと「運用ルールがあれば業務で武器になる」ということです。
意外に効く小技として、ツール出力のスクリーンショットよりも「入力値をテキストで残す」ほうが監査・承認に強いです。スクリーンショットは見た目が分かりやすい反面、後で数値のコピペや再計算ができず、比較検討の段階で詰まります。Excelなら入力シートを“そのまま”PDF化し、計算式セルを別紙で一覧出力(または保護して参照可能)にすると、無料シートでも説得力が出ます。
参考:梁の応力・たわみ・曲げモーメント図の自動作成という発想(説明の組み立てに使える)
はりのたわみと応力の計算 フリーソフト

NTS GIKEN (NTS技研) シャックル 強度計算書付き 左右セット JA11 / SJ30 /JA71 / SJ10 / JB31 ジムニー jimny ジムニー用 JIMNY 強度計算書 強度検討書 (20mmロング【リア用】)