距離標設置基準と種類及び設置方法や測量

距離標設置基準と種類及び設置方法や測量

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距離標設置基準

📍 距離標設置基準の要点
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道路距離標の基本

起点からの距離を表示し、1km間隔を標準として設置される道路の付属物

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河川距離標の基準

河口または合流点から河心線に沿って200m間隔で設置される測量基準点

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設置の法的根拠

道路法および道路標識設置基準により設置方法と規格が定められている

距離標とは、道路や河川などの起点からの距離を表示する標識であり、道路管理者が道路管理を行う上で不可欠な付属物です。一般に「キロポスト」とも呼ばれ、道路の付属物として路面上に一定間隔で設置され、起点からの距離を把握するために用いられます。距離標は事故の場所や渋滞の長さを示すためにも活用され、道路管理における重要な基準点となっています。
参考)https://www.mlit.go.jp/common/001085090.pdf

道路標識設置基準によれば、距離標は道路法上の道路に道路管理者が整備する場合に適用され、道路構造を保全し道路交通の安全と円滑を図る上で不可欠な道路の附属物として位置づけられています。設置にあたっては道路利用者に対して適切に情報を伝達できること、適切な視認性が確保できること、維持管理の確実性及び容易さに配慮することなどの要件が考慮されます。​
建築事業者にとって距離標は、工事現場の位置特定や測量の基準点として活用できる重要な設備です。特に道路工事や河川工事に携わる際には、距離標の設置基準を正確に理解しておく必要があります。
参考)https://www.mlit.go.jp/river/shinngikai_blog/lp_kentoukai/dai01kai/dai01kai_siryou5.pdf

距離標の設置間隔と位置の基準

道路における距離標の設置間隔は、一般に1キロメートル毎を標準としています。高速道路や一般国道その他の主要な道路(都道府県道など)に設置され、路肩や中央分離帯などに設けられます。道路によっては100メートル距離標も設けられ、距離値表示はキロメートル数と小数点第1位で表示されますが、全く設置されていない道路も多く、設置の形態はさまざまです。
参考)距離標 - Wikipedia

高速道路に設置される距離標は、中央分離帯に目立つ形で設置される1km標に加えて、100メートル距離標も路側脇に小さく設置されます。距離標の設置位置は、道路管理者が道路の付属物として路面上に一定間隔で設置し、起点からの距離を把握するために用いられます。
参考)https://www.nilim.go.jp/lab/bcg/siryou/tnn/tnn0493pdf/ks049305.pdf

河川における距離標設置測量では、距離標は河川の河口または幹川の合流点から河心線に対して直角方向に200m間隔で設置することが標準とされています。距離標は両岸の距離標間の見通しが利く必要があるため、堤防法肩または法面等に設置され、あらかじめ地形図上で位置を選定し、その座標値に基づいて近傍の3級基準点等から放射法などにより設置します。
参考)1か月で間に合わせる!測量士補ミニ講座⑫応用測量(ファイナル…

距離標の種類と規格の詳細

距離標には用途や設置場所に応じて複数の種類があります。道路用の距離標としては、50km標、10km標、1km標、100m・500m標、20m標があり、設置場所に応じて土中基礎式、支柱共架式、壁面式等様々なバリエーションがあります。
参考)距離標

高速道路用の距離標は、NEXCO設計要領第五集距離標設置要領に準拠した規格があり、A:10KmP、B:1KmP、C:100mP、D:20mPの4つのタイプに分類されます。標示板には主に「押出形材」と「平板」があり、押出形材はUバンドなどで支柱に設置し、平板はアンカーボルトで壁面に設置します。
参考)https://www.kashimura.com/rd/content/a801-NEXCO-KP.html

令和4年(2022年)の改訂により、使用フォントが数字はフルティガー(Frutiger)、英文字はビアログ(Vialog)に変更されており、反射シートは封入プリズム型が標準とされています。道路標識設置基準では、標示板の材質は厚さ1.2mmの耐食アルミニウム合金板(JIS H4000-A5052-H34)の一枚板を使用し、反射シートは広角プリズム型(超高輝度反射シート)を基本とすることが規定されています。
参考)https://www.pref.gifu.lg.jp/uploaded/attachment/331960.pdf

河川の距離標は、将来起こり得る河床の変動状態の調査等の基準となるため、変動を受けない場所を選び設置することが重要です。材質等に特段の規定はありませんが、錆びることなく劣化に比較的強い石柱がよく使われる傾向があります。​

距離標設置測量の手順と方法

距離標設置測量は、後に実施される縦断測量、横断測量等のために、河川の河心線に対して直角方向の両岸に、ほぼ等間隔に距離標を設置する作業です。距離標は河川の河口または幹川の合流点から河心線に対して直角方向に200m間隔で設置し、距離標の間隔は河心線に対して直角方向とするため、右岸と左岸では距離間隔が異なります。​
距離標の設置方法として、あらかじめ地形図上で位置を選定し、その位置をデジタイザなどで読み取り、その座標値に基づいて近傍の3級基準点等から放射法などにより設置します。基準点測量では、国土地理院が基本測量として設置・測量する国家基準点(一等~三等三角点等)や、公共事業等を行う際に市町村等が設置する公共基準点など、様々な種類があります。
参考)基準点測量|地籍調査Webサイト

道路基準点は、地点標(路線の起点からの距離を示す道路付属物)の近傍に設置した道路基準点の緯度経度を公共測量により測量したもので、1/500縮尺図面程度の精度を有します。当面は、直轄国道のキロポスト(KP:1kmごとの地点標)に簡易な鋲を設置し、公共測量により緯度・経度・標高を計測しています。
参考)道路基準点案内システムトップページ

距離標設置測量における水準基標の設置間隔は5km~20kmを標準とし、水位標に近接した位置に努めて設置します。測量作業では、選点で決定した場所に土地の所有者・管理者の承諾を得て標識を設置し、GNSS測量機やトータルステーション等を使用して測量(観測)が行われます。
参考)河川測量

距離標の維持管理と活用方法

道路標識設置基準によれば、距離標は設置後においてその効用が損なわれることがないよう維持管理を十分に行い、常に良好な状態に保たれるよう配慮しなければならないとされています。適宜巡回点検を行う必要があり、台風等の災害の直後にも点検を行うことが望ましいとされています。​
点検により異常を認めた場合は速やかに補修し、建築限界を侵している場合は特に速やかに補修しなければなりません。道路標識の設置の状況を明らかにし、設計及び施工に関する事項のうち将来の維持管理に必要な事項を記録し、これを保管することが求められています。​
距離標は道路管理だけでなく、事故や故障が発生した際の位置特定にも活用されます。高速道路では場所を示す看板がないため、交通管理隊や警察が素早く現場に到着するためにキロポストが重要な情報となります。建築事業者にとっても、工事計画や測量において距離標を基準点として活用することで、正確な位置情報の管理が可能になります。
参考)道路基準点案内システム

国土交通省「道路標識設置基準」では距離標を含む道路標識の設置に関する技術的基準が詳細に規定されています
国土交通省「道路基準点案内システム」では距離標(キロポスト)を基準とした道路基準点の緯度経度情報を検索できます

距離標設置における特殊な留意事項

距離標の設置には地域特性や現場状況に応じた特殊な配慮が必要です。積雪地域に設置する道路標識については、当該地域の積雪深等を考慮して1.8m以上の適切な設置高さとする必要があります。これは冬季の積雪により距離標が埋没しないようにするための重要な措置です。​
道路標識を歩道等に設置する場合には、原則として歩車道境界と支柱及び標示板との間を25cm以上離すことが定められており、中央分離帯及び交通島に設置する場合も同様に分離帯端等から25cm以上(第1種第1級及び第2級の道路にあっては50cm以上)離すことが必要です。これは歩行者の安全確保と道路管理上の配慮によるものです。​
距離標設置位置が交差点内またはトンネル区間などに当たる場合は、設置可能な地点にずらして設置することが認められています。サイクリングロードなどでは前後100m以内に設置可能な箇所が存在すれば、ずらして設置することが許容されており、現場の実情に応じた柔軟な対応が可能です。
参考)https://www.city.fukuyama.hiroshima.jp/uploaded/attachment/145998.pdf

河川における距離標設置では、亡失や破損の恐れのない場所に設置する必要があり、設置間隔は河心に沿って200mを基準とし、構造物(橋等)がある場合は追加距離をもって表示します。未改修河川では、河心線を洪水時の流心線で想定し、近傍に適当な基準点が無い場合は3級基準点測量により距離標を設置します。
参考)http://www.kinomise.com/sokuryo/shiho/jyuuyou/ouyou/ouyou03-kasenippan.pdf

興味深いことに、高速道路のキロポストが示す数字は上り線でも下り線でも同じです。高速道路では「上り線の起点」「下り線の起点」という考え方はなく、あくまで起点は一つという考え方が採用されており、これは道路管理の効率化と情報伝達の明確化のための工夫といえます。
参考)高速道路の『キロポスト』ってどこからの距離?(ドライブまめ知…