マグネシウム合金 価格とコスト削減を実現する製造技術

マグネシウム合金 価格とコスト削減を実現する製造技術

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マグネシウム合金 価格の現状と変動要因

この記事でわかること
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マグネシウム合金の価格動向

2024-2025年の最新価格推移と市場予測

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コスト削減技術

製造工程の改善による大幅なコスト低減方法

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建築分野での活用

不燃認定材料としての実用例と特性比較

マグネシウム合金の市場価格推移と最新動向

マグネシウム合金の価格は、原材料であるマグネシウム地金の市場動向に大きく影響されます。2025年10月時点では、マグネシウムは1トンあたり17,500人民元(CNY)で取引されており、前月比で約2%下落しています。過去の推移を見ると、2021年9月には史上最高の71,500人民元を記録しましたが、その後は価格調整が続いている状況です。
参考)https://jp.tradingeconomics.com/commodity/magnesium

2024年の国内マグネシウム需要実績では、構造材向けのマグネシウム合金需要量が前年比6.3%増の6,790トンとなり、堅調な成長を示しています。一方で、原材料費については2025年の市場予測において、前年同時期比で約6.61%減少する見込みとなっており、価格面での改善傾向が見られます。
参考)http://magnesium.or.jp/_wp/wp-content/uploads/2025/03/%E5%9B%BD%E5%86%85%E3%83%9E%E3%82%B0%E3%83%8D%E3%82%B7%E3%82%A6%E3%83%A02024%E5%B9%B4%E9%9C%80%E8%A6%81%E5%AE%9F%E7%B8%BE2025%E5%B9%B4%E9%9C%80%E8%A6%81%E4%BA%88%E6%B8%AC.pdf

建築事業者にとって重要なのは、マグネシウム合金の価格が鉄鋼材料より3倍以上高いものの、アルミニウム合金とは同水準にあるという点です。ただし、加工性の良さや軽量性による総合的なコストメリットを考慮すれば、用途によっては十分に競争力のある選択肢となります。
参考)マグネシウム(Mg)合金

マグネシウム合金のコスト構造と製造費用

マグネシウム合金の製造コストは、原材料費、加工費、光熱費、人件費などで構成されています。従来のAZX611合金では5,300円/kgと高コストでしたが、製造工程の改善により1,660円/kgまでコスト削減が実現されました。これは製造工程において溶融清浄化技術や高速双ロール鋳造技術を導入し、圧延工数を削減したことによる成果です。
参考)https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/sapoin/portal/seika/2013/160902kantou01.pdf

具体的なコスト削減の内訳として、200kgのコイル化達成と圧延工数削減が大きく貢献しています。従来は鋳造ロールの冷却能力不足によりコイル化できなかったため、製造コストが大幅に増加していましたが、均熱圧延ロールの導入により、AZ61合金およびAZX611合金でも効率的な生産が可能になりました。​
2015年には鍛造に直接供給できるマグネシウム小径ビレットの連続鋳造技術が確立され、従来比約50%の製造コストダウンが実現可能となりました。このような技術革新により、マグネシウム合金展伸材の製造コストは従来アルミニウム合金展伸材の3倍以上とされていましたが、大幅な改善が進んでいます。
参考)マグネシウム合金の研究開発動向

マグネシウム合金とアルミニウム合金の価格比較

建築事業者が材料選定を行う際、マグネシウム合金とアルミニウム合金の価格比較は重要な検討事項です。重量比でのコスト比較では、アルミニウムを1.0とした場合、マグネシウム合金のダイキャスト加工品は重量比0.7で価格21.0円/g、一方アルミニウム切削加工品は重量比1.0で価格17.0円/gとなっています。
参考)マグネシウム合金  強度があり軽量化【アルミ・樹脂とそれぞれ…

マグネシウム合金の密度は約1.74~1.81Mg/m³で、アルミニウム合金の2.7Mg/m³に比べて約35%軽量です。この軽量性により、同じ体積で比較した場合、マグネシウム合金は材料使用量を削減でき、輸送コストや施工時の人件費削減にもつながります。
参考)難燃性マグネシウム合金や耐熱マグネシウム合金の開発と応用

加工コストの面では、マグネシウム合金は切削抵抗がアルミニウム合金の約1/2と小さく、切削性が良好なため、工具寿命の延長や加工時間の短縮が可能です。初期材料費はアルミニウムより高いものの、加工速度の高速化やダイカストにおける工具寿命の延長などにより、大量生産用途では総合的な製造コストを相殺できる可能性があります。
参考)マグネシウム合金鋳物をアルミニウム合金鋳物の代替材として使用…

実際の販売価格では、モノタロウでのマグネシウム合金板材(AZ31、2mm厚)が2,890円~(税込3,179円~)で提供されており、用途に応じて1mm単位でのカスタムオーダーが可能です。
参考)https://www.monotaro.com/s/q-%E3%83%9E%E3%82%B0%E3%83%8D%E3%82%B7%E3%82%A6%E3%83%A0%E5%90%88%E9%87%91/

マグネシウム合金の種類別価格と特性

マグネシウム合金は添加元素により複数の種類があり、それぞれ価格と特性が異なります。最も一般的なAZ31系合金は、アルミニウム3%、亜鉛1%を含有し、展伸材として広く使用されています。この合金は固溶硬化と加工硬化で強化され、成形性と溶接性に優れるため、板材、管材、棒材として最も多く採用されています。
参考)マグネシウムの基礎知識:規格

AZ61系合金はアルミニウム6%を含有し、AZ31とAZ80の中間的な強度を持ちます。押出材や鍛造材として使用され、車椅子やMTB用リムなどの用途に適しています。AZ91系合金は機械的性質と鋳造性のバランスが取れた代表的なダイカスト合金で、自動車部品や携帯電子機器の筐体に多用されています。
参考)不二ライトメタル株式会社

原材料費の例として、2013年価格でAZ61インゴットが380円/kg、カルシウムを添加したAZX611が462円/kgとなっており、添加元素により価格差が生じます。難燃性マグネシウム合金のAMX602やAZX912は、発火性を抑制した材料として、建築分野での利用価値が高く、高速道路ETC遮断機や鉄道車両の荷棚受部材などに採用されています。​
超軽量マグネシウム合金LZ91は比重1.51で、AZ31Bに比べて約19%軽量化されており、小型携帯機器の筐体などに使用されます。KUMADAI耐熱マグネシウム合金(Mg-Zn-Y系)は比重1.89で高強度・高耐熱性を併せ持ち、ピストンやターボチャージャー用ファンなどの高性能部品に適していますが、高機能材のため価格は高めに設定されています。​

マグネシウム合金の建築分野における価格競争力

建築分野でのマグネシウム合金活用において、価格競争力を高める要素として不燃認定の取得があります。権田金属工業が開発したAZX612合金(アルミニウム6%、亜鉛1%、カルシウム2%)は、2013年11月12日に国土交通省の不燃認定(認定番号:NM-3781)を建材として初めて取得しました。
参考)当社のマグネシウム合金が建材に採用されました。

この不燃マグネシウム合金は、東日本大震災後に施行された建築基準法令第39条の吊天井対策として、エキスパンションジョイントに採用されています。従来、マグネシウム合金は発火性が課題でしたが、難燃性合金の開発により、建築材料としての実用性が飛躍的に高まりました。
参考)https://gondametal.jp/smarts/index/19/

熊本大学が開発したKUMADAI耐熱マグネシウム合金は、微量のイッテルビウム(Yb)、カルシウム(Ca)、ベリリウム(Be)を添加することで、発火温度1,000℃超を達成し、不燃性を実現しています。これにより航空機や自動車だけでなく、建築分野への応用も期待されています。
参考)KUMADAI耐熱マグネシウム合金の不燃化に成功~航空機部品…

建築用途での価格面でのメリットとして、マグネシウム合金は振動吸収性が高く、耐くぼみ性があるため、意匠性の高い建材として利用できます。鉄道車両や自動車の軽量化、建設用の軽量素材として、長期的な省エネ効果を含めた総合的なコストパフォーマンスで評価されるべき材料です。
参考)マグネシウム加工

マグネシウム合金の入手方法としては、専門商社を通じた輸入販売が一般的で、希望のサイズ、形状、数量に合わせた購入が可能です。AM100A、AM60B、AZ91E、AZ31Bなど多様な合金種が対応可能で、納品時には材料証明書が提出され、部品・製品加工にも対応しています。空輸または海上輸送での納品が選択でき、見積もりから国際輸送、通関手続き、国内配送まで一括して対応するサービスも提供されています。
参考)マグネシウム合金の販売

マグネシウム合金等の価格動向に関する詳細データ(日本鋳造協会)
高品質マグネシウム合金板のコスト半減技術開発事例(中小企業庁)
マグネシウム地金価格推移の統計資料(日本マグネシウム協会)
建材向け不燃認定マグネシウム合金の施工実績(権田金属工業)