軟化点測定方法と環球法の手順・注意点を解説

軟化点測定方法と環球法の手順・注意点を解説

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軟化点測定の方法と環球法の手順・品質管理への活用

軟化点試験は「だいたいの温度がわかれば十分」と思っていると、現場の品質トラブルで数百万円規模のやり直しが発生します。


この記事の3ポイント要約
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軟化点測定とは何か

アスファルトには明確な融点がなく、「規定条件下で軟化する温度=軟化点」をJIS K2207の環球法で測定します。

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環球法の手順と液浴の選び方

予想軟化点が80℃未満なら水浴、80℃以上ならグリセリン浴を使用。毎分5℃の温度上昇速度を守ることが測定精度のカギです。

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品質管理と選定への活用

軟化点が高いほど高温変形に強く、防水工事用アスファルトの選定や竣工後の品質保証に直結します。見落とせない管理指標です。


軟化点とは何か:アスファルト測定における定義と重要性

軟化点(Softening Point)とは、固体から液体へ変化するまでの中間状態で「規定された条件下で物質が軟化し始める温度」のことです。アスファルトは鉄やガラスとは異なり、単一の化合物ではなく数千種類以上の化合物の集合体です。そのため、一定の融点が存在しません。


つまり軟化点は融点ではありません。


アスファルトはある温度を超えると徐々に流動性を帯び始め、その挙動は含まれる成分の組み合わせによって異なります。だからこそ「ある規定された条件下で試料が規定距離まで垂れ下がるときの温度」として軟化点を定義し、それを測定することに意味があります。


建築・土木の現場では、この数値が品質判定の基準として機能します。たとえばJIS K2207(石油アスファルト)では、防水工事用アスファルト1種の軟化点は85℃以上、3種は100℃以上と規定されています。軟化点が基準を外れると、夏季の高温時に舗装が変形したり、屋根防水層が流動してしまうリスクが高まります。


軟化点が高いほど、高温での変形に強い材料です。


防水工事用アスファルト 軟化点の規格 主な用途
1種 85℃以上 室内・地下構造部分(比較的軟質)
2種 90℃以上 一般地域の緩勾配歩行用屋根
3種 100℃以上 一般地域の露出屋根・高温地域
4種 95℃以上 寒冷地域の屋根など(特に軟質)


防水アスファルト選定時には、軟化点と用途の対応を確認するのが原則です。また、ストレートアスファルト(舗装用)でも、針入度40〜60タイプの軟化点は47〜55℃、針入度80〜100タイプは42〜50℃という規格値があり、数値を把握することが材料受け入れ時の品質確認につながります。


参考:JIS K2207(石油アスファルト)規格と試験方法詳細
kikakurui.com|JISK2207:2006 石油アスファルトの規格・試験方法一覧(環球法の詳細手順を含む)


軟化点測定の環球法:試験装置と基本的な構成

環球法(Ring and Ball Method)は、JIS K2207で定められたアスファルト類の軟化点測定方法です。この試験では「環(リング)」と「球(ボール)」という2つの部品が中心的な役割を果たします。名称はまさにその形状に由来しています。


試験装置の構成は以下のとおりです。


  • 🔩 環(リング):黄銅製の肩付き環。試料(アスファルト)をここに充填します。内径は約15.9mm、高さ約6.4mmの規格品です。
  • 球(ボール):直径9.525mm(3/8インチ)、質量3.5±0.05gの鋼球。試料の中央に静置します。
  • 🧪 球案内:球が試料の中心に均等に乗るよう位置を固定するためのガイド部品です。
  • 🏠 環台(支持台):環を水平に保持し、環の下面から底板上面まで25mmの距離を確保します。この25mmが「規定距離」です。
  • 🌡️ 加熱浴槽・温度計:液体(水またはグリセリン)を満たした浴槽と、毎分5℃の速さで昇温するための加熱装置です。


試験の仕組みはシンプルです。環にアスファルトを充填し、その上に球を置いて液浴中で加熱します。温度が上がるにつれてアスファルトが軟化し、球の重み(3.5g)によってアスファルトが垂れ下がります。環の下面から底板まで25mm垂れ下がった瞬間の温度を読み取ったものが、その試料の「軟化点」です。


この試験で球が25mm垂れ下がるのを待つことが基本です。


なお、環球法はJIS規格以外にもASTM D36(国際的に使われる米国規格)やISO EN 1427(欧州規格)でも標準試験として採用されています。海外メーカーのアスファルト材料を使用する現場では、規格表記の違いに注意が必要です。


軟化点測定の手順:試料準備から読取りまでの全ステップ

軟化点測定は手順を一つ間違えると、数℃単位の測定誤差につながります。ここでは、JIS K2207に基づく環球法の手順を段階的に解説します。


① 試料の溶融と充填


アスファルトは加熱して溶融させ、環に充填します。このとき、予想される軟化点より90℃以上高い温度に加熱してはいけません。過加熱は軽質成分の蒸発や酸化を引き起こし、本来の軟化点より高い値が出てしまいます。溶融時間は30分以内が目安です。


充填後は試料が環から少し盛り上がる程度まで入れ、室温に30分以上放置して試料を安定させます。余分にはみ出た部分は加熱したヘラで水平にカットします。


② 液浴の選択


液浴の選択は、試験精度に直結する重要な判断です。


  • 💧 水浴:予想軟化点が80℃未満の試料に使用します。
  • 🫙 グリセリン浴:予想軟化点が80℃以上の試料に使用します。水は100℃で沸騰してしまうため、高軟化点の試料には沸点の高いグリセリンが必要です。


液浴の選択を間違えると試験自体が成立しません。


改質アスファルト(ポリマー改質アスファルト)では、軟化点が56℃以上(Ⅱ型)、70℃以上(Ⅲ型)、80℃以上(H型)と高い規格があります。特にH型は水浴では試験できないため、グリセリン浴が必須です。


③ 初期温度の設定


液浴の初期温度は、予想軟化点に応じて設定します。


  • 予想軟化点が80℃未満の場合:浴の初期温度を5±1℃に設定します。
  • 予想軟化点が80℃以上の場合:浴の初期温度を32±1℃に設定します。


④ 加熱と温度上昇速度の管理


浴温を毎分5℃の速さで均等に上昇させます。これがもっとも重要な操作条件です。温度上昇速度が速すぎると軟化点が高めに、遅すぎると低めに出ます。JIS規格では「毎分5±1℃」の範囲内での昇温が要求されています。


試験は2個の試料を同時に行い、2個の値の差が1℃以内であれば平均値を軟化点として採用します。差が1℃を超えた場合は試験をやり直す必要があります。


⑤ 軟化点の読み取り


球を包み込んだ試料が環台の底板に触れた瞬間の温度計の示度を読み取ります。温度計の感温部(水銀球の下端)は、環の下面と同じ高さに位置させておく必要があります。これがずれていると正確な温度が読み取れません。


再現性の目安として、同一試験室・同一操作者の繰り返し精度は±1℃以内が求められます。


参考:日本改質アスファルト協会による軟化点試験(環球法)の解説と動画
JMAA 日本改質アスファルト協会|アスファルト用語解説(軟化点試験・環球法の定義と各種試験の説明)


軟化点測定でよくある失敗と測定精度を左右する注意点

現場の試験担当者がやりがちなミスと、見落としやすいポイントを整理します。知っているだけで測定トラブルを防げます。


昇温速度の乱れ


最も多い失敗は昇温速度のコントロールミスです。加熱を始めてから急激に温度が上がったり、逆に途中で遅くなったりすると、測定値に誤差が生じます。特に試験序盤は液温が不安定になりやすく、毎分5℃というペースを守るために途中で温度計を確認しながら加熱量を調整することが重要です。


電気式の自動軟化点試験器を使用すれば昇温速度が自動管理されるため、この誤差はほぼ解消できます。ただし、「自動試験器の結果に疑義が生じた場合は手動の結果を採用する」というJIS規定があるため、手動操作の理解は必須です。


液浴の誤選択


グリセリン浴を使うべき場面で水浴を使用した場合、水が100℃で沸騰し試験が途中で成立しなくなります。これは結果的に材料の受け入れ判定ができず、工程遅延につながります。使用する改質アスファルトの種別(Ⅰ型・Ⅱ型・Ⅲ型・H型)を事前に把握しておくことが肝心です。


工程遅延は直接コストに響きます。


球の位置ズレ


試験前に球案内が正しくセットされていないと、球が中心からずれた位置で試料の上に乗ることになります。その場合、試料の垂れ下がり方が不均等になり、正確な軟化点温度が測定できません。セット時には目視で球の位置を確認することを習慣にしてください。


温度計の位置


温度計の感温部(水銀球の下端)が環の下面と同じ平面上にあることを確認する必要があります。感温部の位置が高すぎると測定値が低めに出ます。逆に低すぎると高めに出ます。環台をセットするたびに位置確認を行うことが測定精度の基本です。


試料準備時の過加熱


試料を溶融する際に高温で長時間加熱すると、アスファルトが熱劣化します。JIS規格では「軟化点より90℃以上高くしないこと」「30分以上加熱しないこと」と明示されています。現場での材料溶融は作業効率を優先して高温加熱になりがちですが、この行為が測定値を本来より高く出す原因になります。


試料溶融の温度管理が原則です。


参考:日本アスファルト協会によるアスファルト試験法の詳細解説
日本アスファルト協会|アスファルトの種類・規格と試験(軟化点を含む各種試験の意義と規格値の目安)


軟化点測定の結果を品質管理に活かす独自視点:現場への応用と選材判断

軟化点試験は「やるべき試験」として実施されることが多いですが、その数値を積極的に現場判断に使っている技術者は少数派です。ここでは、测定結果を使った具体的な判断のポイントを解説します。


軟化点と感温性の関係


アスファルトの軟化点と針入度を組み合わせると「針入度指数(Penetration Index:PI)」を算出できます。PIはアスファルトの感温性(温度変化に対する硬さの変わりやすさ)を示す指標で、値が大きいほど感温性が小さく、夏冬の温度差が大きい地域でも性状が安定します。


防水工事用アスファルトは1種でPI 3.5以上、2種・3種はPI 4.0以上・5.0以上と規格化されており、単なる軟化点の数値だけでなく感温性まで確認することが品質管理の精度を上げます。


改質アスファルトの受け入れ確認


ポリマー改質アスファルトはグレード(Ⅰ型〜H型)ごとに軟化点の下限値が設定されています。規格を一覧すると以下のとおりです。


グレード 軟化点(下限) 主な適用箇所
Ⅰ型 50℃以上 一般的な箇所
Ⅱ型 56℃以上 大型車交通量が多い箇所
Ⅲ型 70℃以上 大型車交通量が著しく多い箇所・交差点
H型 80℃以上 排水性舗装用(ポーラスアスファルト)


施工前の受け入れ確認では、納入されたアスファルトの軟化点を実測し、このグレード規格値を満たしているかを確認することが品質保証の第一歩です。規格外の材料をそのまま使用してしまうと、完成後のわだち掘れや骨材飛散が発生しやすくなります。


これは施工後クレームに直結します。


防水工事での活用


建物の屋根防水や地下防水では、選定したアスファルトの種別と軟化点が「設計仕様書の要求値を満たしているか」を確認する書類として試験成績書を活用できます。特に3種・4種の露出防水では軟化点100℃以上という高い規格があり、夏季の直射日光による防水層の流動を防ぐ重要な指標になります。


実際の施工管理では、材料受け入れ時に試験成績書を確認するだけでなく、ロットが変わったタイミングで再確認する習慣が品質管理の信頼性を高めます。大規模な防水工事では1つのロット差異で数十㎡単位での補修が必要になるケースもあります。


これだけ覚えておけばOKです。軟化点は「受け入れ確認 → 試験方法の正確な実施 → 規格値との照合」という3ステップで品質管理に活用できます。


参考:一般社団法人 日本改質アスファルト協会 ポリマー改質アスファルトポケットガイド(品質規格・適用箇所の詳細)
JMAA 日本改質アスファルト協会|ポリマー改質アスファルトポケットガイド(軟化点規格・適用の考え方を含む詳細資料)