
ねじ込み継手寸法表の基礎となるのは、JIS B 2301「ねじ込み式可鍛鋳鉄製管継手」規格です。この規格では、継手の寸法精度や品質基準が厳格に定められており、金属加工現場での信頼性確保に不可欠な要素となっています。
主要な継手種類と特徴。
各継手の寸法表では、呼び径(A)、外径(D)、長さ(L)、ねじ部長さ(ℓ)などの基本寸法が規定されています。特に注意すべきは、継手端部の形状・寸法がJIS B 2301で厳密に規定されている点です。
白・黒ねじ込み式管継手は、表面処理の違いによって呼び分けられており、それぞれ異なる用途と寸法管理が求められます。
白継手(亜鉛めっき品)の特徴。
黒継手(黒皮仕上げ)の特徴。
寸法表上の重要ポイント。
継手種類 | 寸法管理項目 | 白継手特徴 | 黒継手特徴 |
---|---|---|---|
エルボ | A寸法精度 | ±0.5mm | ±1.0mm |
チーズ | 分岐部寸法 | 高精度 | 標準精度 |
ソケット | ねじ部長さ | めっき考慮 | 基準寸法 |
実務では、白継手の場合、めっき厚(通常0.05-0.1mm)を考慮した寸法管理が必要となります。配管設計時には、この微細な寸法差が累積的な影響を与える可能性を念頭に置いた計算が重要です。
ステンレス製ねじ込み継手は、可鍛鋳鉄製とは異なる寸法体系と材質特性を持ちます。SCS13(SUS304相当)を主材とするステンレス継手は、化学プラント・食品工業・海洋環境での使用が多く、より厳密な寸法管理が要求されます。
ステンレス継手の寸法特徴。
製造メーカー別の寸法差も重要な検討要素です。
メーカー | 外径公差 | ねじ精度 | 品質管理 |
---|---|---|---|
オーエヌ工業 | ±0.15mm | JIS準拠 | 全数リークテスト |
シーケー金属 | ±0.2mm | JPF準拠 | 抜取検査 |
リケン | ±0.1mm | JIS準拠 | 統計的品質管理 |
ステンレス継手特有の注意点として、熱膨張係数の違いがあります。炭素鋼の約1.5倍の熱膨張率を持つため、高温配管では熱応力による寸法変化を考慮した設計が必要です。
径違い継手の寸法計算は、異なる径の配管を接続する際の重要な技術要素です。適切な寸法管理により、配管系全体の強度と密封性を確保できます。
径違いエルボの基本計算。
径違いエルボでは、大径側(G1)と小径側(G2)それぞれの中心から端面までの距離(L1、L2)を正確に把握する必要があります。
計算例(25A×20A径違いエルボ)。
径違いチーズの寸法管理。
径違いチーズでは、主管径と分岐径の組み合わせパターンが多様であり、各部の寸法確認が重要です。
主要な径違いパターン。
計算時の注意点。
入り代調整(ねじ込み寸法設定)は、ねじ込み継手の密封性と強度を決定する重要な技術です。従来のJIS規定値だけでなく、実際の施工条件を考慮した調整方法が現場品質向上の鍵となります。
入り代の基準値設定。
実務における入り代調整の判断基準。
配管条件 | 推奨入り代 | 理由 |
---|---|---|
高圧配管 | JIS+2mm | 密封性向上 |
振動環境 | JIS+1mm | 緩み防止 |
腐食環境 | JIS規定値 | 過度締付防止 |
メンテナンス頻繁 | JIS-1mm | 分解容易性 |
現場での実測による最適化手法。
特に重要なのは、ステンレス継手での入り代調整です。材質の特性上、過度な締付けによるかじりや、不十分な締付けによる漏れが発生しやすいため、経験値に基づく微調整技術が必要です。
現場での品質向上事例として、入り代調整データの蓄積により、特定の配管系統で漏れ発生率を30%削減できた実績があります。これは、継手ごとの最適入り代値をデータベース化し、作業標準化を図った結果です。
金属加工従事者として、ねじ込み継手寸法表の活用は単なる寸法確認にとどまらず、品質向上と作業効率化を両立させる重要な技術要素として位置づけることが、現代の製造現場では不可欠となっています。