大阪北部地震とは被害の実態と建築事業者が学ぶ教訓

大阪北部地震とは被害の実態と建築事業者が学ぶ教訓

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大阪北部地震とは被害と特徴

大阪北部地震の主な特徴
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発生状況

2018年6月18日午前7時58分、大阪府北部を震源とするマグニチュード6.1、震源の深さ13kmの地震が発生

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被害規模

死者6名、負傷者462名、住家全壊21棟、半壊483棟、一部破損61,266棟の被害を記録

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建築物への影響

ブロック塀倒壊による死亡事故が2件発生し、旧耐震基準の建築物に被害が集中

大阪北部地震とは発生メカニズムと震源断層

大阪北部地震は2018年6月18日午前7時58分に大阪府北部を震源として発生した都市直下型地震です。震源の深さは13kmと浅く、マグニチュード6.1を記録しました。大阪市北区、高槻市、枚方市、茨木市、箕面市で震度6弱を観測し、大阪府で震度6弱以上を観測したのは1923年以降で初めてのことでした。
参考)都市直下型地震 その時役立つメディアとは? ~大阪北部地震の…

この地震の発生メカニズムは当初複雑で断層の特定が困難とされていましたが、解析が進むにつれて小さな断層が別方向にズレたことで起こった地震であると結論付けられました。具体的には地下の断層が2つに分かれ、南北方向の逆断層と北東南西方向の横ずれ断層がそれぞれ動くことで溜まった歪が一気に解放されたと推定されています。
参考)大阪府北部地震の震源地や断層の動きとは?

震源域の北側では逆断層型の余震が多く、45〜50度程度の東傾斜を示し、南側では横ずれ断層型のメカニズム解を持つ余震が多く観測されました。この複雑な発生メカニズムにより、震源の真上にある高槻市だけでなく、断層の破壊が進む方向に位置した茨木市にも強い揺れによる被害が集中しました。
参考)https://irides.tohoku.ac.jp/media/files/earthquake/eq/2018_osaka_eq/20180620_sokada.pdf

大阪府には有馬−高槻断層帯、生駒断層帯、上町断層帯など多くの活断層が存在していますが、今回の地震ではこれらの既知の活断層は直接関係しないとされています。しかし、地震が起これば複数の断層が連動し、大きな被害を起こす可能性があることが指摘されています。
参考)大阪府の地震活動の特徴

大阪北部地震とは被害状況と人的損失

大阪北部地震による被害は、2019年8月20日時点の総務省消防庁の集計によると、大阪府内で死者6人、2府5県で負傷者462人(うち重傷者62人)に達しました。死者は高槻市、茨木市、大阪市、箕面市で発生し、このうち箕面市の1名は地震で持病が悪化して地震当日に亡くなったもので、災害関連死に認定されています。
参考)令和元年版 防災白書|特集 第1章 第1節 1−2 大阪府北…

特に深刻だったのは、ブロック塀の崩落による死亡事故です。高槻市では登校中の小学4年生の女児が小学校のブロック塀の下敷きになって死亡し、もう1件のブロック塀倒壊による死亡事故も発生しました。
参考)3.被害の概要 - 防災危機管理eカレッジ

住家被害については、大阪府を中心に全壊が21棟、半壊が483棟、一部破損が約61,266棟、床上浸水3棟、床下浸水3棟となりました。また、大阪府と兵庫県で火災が7件確認されています。
参考)大阪府北部地震 - Wikipedia

地震保険の支払額は2018年10月11日時点で946億円を超え、東日本大震災、平成28年熊本地震に次いで第3位となる規模でした。これは都市部で発生した内陸活断層型地震の被害が非常に甚大になることを示しています。
参考)2018年6月18日大阪府北部の地震について~都市直下型災害…

建築時期が古い住宅や建築物で倒壊等の大きな被害が発生しており、昭和56年の建築基準法改正により新耐震基準が導入される以前の旧耐震基準で建設されたものの被害が顕著に大きくなっていました。
参考)耐震化-個人のお客様 - 大阪建築物震災対策推進協議会

大阪北部地震とはライフラインと交通機関への影響

大阪北部地震は朝の通勤ラッシュ時に発生したため、都市機能に深刻な影響を及ぼしました。電力は大阪府・兵庫県内で最大約17万戸が停電しましたが、当日3時間後には復旧しています。水道は大阪府高槻市・吹田市で断水し、近畿各地で漏水が発生して約9万戸に影響しましたが、翌日19日未明に復旧しました(ただし、数日間濁水が続きました)。
参考)https://committees.jsce.or.jp/eec2/system/files/%E5%A4%A7%E9%98%AA%E5%8C%97%E9%83%A8kwt_JSCE.pdf

最も復旧に時間を要したのはガスで、大阪ガス管内で約11万戸の供給が停止し、4日後の24日にようやく復旧しました。NTTでは1万5000回線に影響が出ましたが、翌日19日に復旧しています。​
交通機関への影響は極めて大きく、関西の鉄道各社は軒並み運行を見合わせ、計540万人以上に影響が出ました。山陽・東海道新幹線は一時運休・運転見合わせとなり、航空機も日本航空・全日空で18日発着予定の計74便が欠航しました。
参考)【大阪北部地震】鉄道、帰宅困難、ライフライン…浮かび上がった…

大阪北部に在住する回答者のうち、25%の人が「歩いて帰宅した」「自宅に帰らず外出先などに泊まった」「普段と違う交通機関を使って帰宅した」などと回答し、いわゆる「帰宅困難者」になっていたことが調査で明らかになっています。​
帰宅の可否を判断するのに利用したメディアについては、「インターネットのポータルサイト(Yahoo!・Google等)」が27%で最も多く、次いで「NHKテレビ」(23%)、「交通機関のサイト・乗り換え案内アプリ」(17%)、「民放テレビ」(16%)となっていました。​

大阪北部地震とはブロック塀倒壊の原因と教訓

大阪北部地震で最も社会的な注目を集めたのは、ブロック塀倒壊による死亡事故でした。高槻市の調査委員会がまとめた最終報告書によると、倒壊したブロック塀の72%の鉄筋が長さ不足であり、「設計・施工不良と腐食が倒壊の主因」との見解が示されました。
参考)「危機感希薄になってきた」…大阪北部地震6年 私有地で進まぬ…

この事故を受けて、大阪府は「大阪府北部を震源とする地震による建築物等の被害を踏まえたブロック塀等の安全対策」に取り組むこととなりました。実は、ブロック塀の倒壊は過去の地震でも繰り返されており、1978年の宮城県沖地震では28人がブロック塀等の下敷きになって亡くなっています。
参考)https://www.pref.osaka.lg.jp/documents/1883/tyukantorimatome_2.docx

これを教訓に、1981年の建築基準法の改正に合わせて、ブロック塀の高さの限度が見直されるなど、耐震基準が強化されましたが、今回の大阪北部地震でも同様の被害が発生してしまいました。2024年1月の能登半島地震の被災地でも死者が出ており、危険なブロック塀撤去の必要性が改めて指摘されています。
参考)https://www.osaka-angenet.jp/files/upload/admin/eccde2ae64c0779e3c97673817ceb712.pdf

大阪府教育庁は地震後、所管する府立学校で倒壊の恐れがあるブロック塀撤去とフェンスへの置き換えを進め、令和3年度末までに132校で完了させました。市町村でも、昭和56年5月31日以前に建築された木造住宅の耐震化を目的とした補助制度が設けられています。​
高槻市では令和4年度から幹線沿いや通学路沿いなど倒壊した場合の被害が大きい場所にあるブロック塀645件をリストアップし、所有者を訪問していますが、私有地では状況の把握すら容易ではなく、実効性ある対策が立てられていないのが現状です。​

大阪北部地震とは建築事業者が取り組むべき耐震化対策

大阪北部地震から建築事業者が学ぶべき教訓は多岐にわたります。平成7年1月の阪神・淡路大震災では、建築物の耐震基準が大きく改定された昭和56年以前の住宅・建築物の倒壊等が原因となり、多くの尊い人命が失われました。震災関連死を除く直接的な死者5,502人の方のうち、約9割にあたる4,831人の方が、建物の倒壊や家具の転倒などによる圧死・窒息死により亡くなっています。
参考)住宅・建築物の耐震化について/大阪府(おおさかふ)ホームペー…

新耐震基準の建築物は大地震時でも被害が少なかったことから、同等レベルまで耐震化を行うことにより、人的・経済的被害を確実に軽減することができるといわれています。建築事業者は、特に昭和56年(1981年)以前に建てられた木造住宅の耐震診断を積極的に勧めることが重要です。​
耐震診断は、大規模な地震(震度6~7)に対する建物の安全性を評価し、耐震改修が必要かどうかを「評点」という数値で表して判断します。耐震性が不足していると評価された場合、耐震改修設計をおこない、耐震補強工事計画を立てる必要があります。​
大阪建築物震災対策推進協議会では、一般財団法人大阪建築防災センターに委託し、電話、メール、面接による相談窓口の開設、耐震に係る業者紹介をおこなっています。また、耐震改修工事を行う場合には、行政の補助や住宅金融支援機構の融資などの支援制度を活用できます。​
大阪府内には、昭和56年5月31日以前に建築された木造住宅の耐震化を目的とした補助制度があり、市町村によって補助制度の有無、要件、補助上限額、補助率が異なります。建築事業者は、これらの制度を熟知し、顧客に適切な情報提供をおこなうことが求められます。​
一定の耐震改修工事を行なった場合の税控除等の制度もあり、現行の耐震基準に適合しない中古住宅を取得した場合であっても、所要の手続を行い、確定申告等の際に必要書類を提出することにより、住宅ローン減税等の特例措置が適用できます。​
参考リンク:大阪建築物震災対策推進協議会の耐震化に関する詳細情報
耐震化-個人のお客様 - 大阪建築物震災対策推進協議会
参考リンク:大阪府の住宅・建築物の耐震化に関する総合情報
住宅・建築物の耐震化について/大阪府(おおさかふ)ホームペー…