
リブラスは、平ラスを製造する際に素板部分を一定間隔で残し、その残った素板部に同一面方向へ山形加工を施したメタルラスの一種です。リブとは「山形」を意味し、この立体的な形状がリブラス最大の特徴となっています。
参考)メタルラス
リブの形状にはV型とハット型があり、リブの高さは一般的に30mm、リブ間隔は120mm、原板の厚さによって種類が分けられています。この立体構造により、モルタルとの付着面積が増加し、優れた保持力を発揮します。
参考)リブラス
主な用途は鉄骨造の内外壁、梁、柱などの耐火被覆下地材として使用され、建物の不燃化や高層軽量化、プレハブ建築の内装材としても活用されています。標準的な製品寸法は幅610mm×長さ1,820mmで、ピッチ120mm、高さ30mmの規格が一般的です。
メタルラスは、亜鉛めっき鋼板に千鳥状の切れ目を入れて引き延ばし、菱形の網目状に加工した製品です。1枚の板から作られるため、網目がもつれたりほどけたりせず、メッシュの立体的な形状によりモルタル中でアンカー効果が大きくなります。
平ラスは最も基本的なメタルラスで、ラス下地用として製造され、標準製品寸法は610mm×1,829mmです。メッシュ寸法はⅠ形(関東目)でR25mm×S14mm、Ⅱ形(関西目)でR31.75mm×S16/19mmの2種類があります。
単位面積当たりの質量によって呼び方が異なり、#390A(F450)は450g/㎡、#450A(F500)は500g/㎡などの規格があります。平ラスは耐火性や耐震性に優れ、壁材以外にも利用されており、木造建築の壁下地として広く使用されています。
参考)木造建築に多く使用されるラス下地とは!?確認しておきたいこと…
リブラスは主に鉄骨造の柱や梁といった役物施工に最適とされています。リブ構造により剛性が高く、垂直面や天井面でのモルタル保持力が優れているため、耐火被覆が必要な構造部材の下地として選ばれます。
一方、メタルラス(特に平ラス)は木造建築の壁下地として一般的に使用されます。木造の外壁を湿式仕上げとする場合、防水紙の上にメタルラスを張り、その上からモルタルを塗る工法が標準的です。
参考)https://www.sumai-info.com/wp-content/uploads/2019/01/spec_wood_h20_9.pdf
波形ラスは平ラスを一定方向に波形加工したもので、ピッチ31mm、高さ6mm・8mm・10mmの種類があり、曲面や特殊形状の下地に使用されます。施工時には縦張りとし、重ね幅は50mm以上を確保し、開口部隅角部に継ぎ目を設けないという規定があります。
参考)ラスの施工方法
建築現場では、施工場所の構造(木造か鉄骨造か)、施工部位(壁か柱梁か)、求められる性能(耐火性、モルタル保持力)によって、最適なラス材を選定することが重要です。
参考)メタルラス 種類と特徴から見る左官工事の下地材選び方
リブラスの最大のメリットは、モルタル付着性の高さです。リブ構造により表面積が増加し、モルタルとの機械的結合力が平ラスよりも優れています。また、役物(柱や梁などの複雑な形状部分)への施工が容易で、鉄骨造の耐火被覆下地として高い性能を発揮します。
建物の不燃化、高層軽量化、プレハブ建築の内装材としても使用可能で、防火性能の要求が高い建築物に適しています。リブの立体構造により、モルタルの塗り厚を確保しやすく、施工品質の安定性が向上します。
参考)ラス型枠とは?メリット・デメリット留意点について解説
一方、デメリットとしては、平ラスと比較して材料コストが高い点が挙げられます。また、リブラスを使用したラス型枠工法では、メッシュ状のため余剰水とともに若干セメントペーストが流出してしまうため、かぶり厚を10~20mm大きく取る対策が必要です。
寒中コンクリートなど型枠による初期養生が必要な場合には向いておらず、リブラスの発錆が問題になる場所では使用できません。施工時には、これらのメリット・デメリットを理解した上で、適切な判断が求められます。
メタルラスやリブラスの施工で最も注意すべき点は防錆対策です。モルタルの塗り厚が薄くなると、ラスが空気に触れる面積が多くなり錆が発生する恐れがあります。特にリブラスの発錆が問題になる場所では使用を避ける必要があります。
ラス材の選定時には、JIS G3302(溶融亜鉛めっき鋼板及び鋼帯)に規定される鋼板で、700g/m²以上の質量があるものを選ぶことが推奨されています。防錆処理されたラスを使用し、施工後は適切なモルタル厚を確保することが重要です。
参考)ラスのJIS規格
外壁に錆が発生した場合の対策として、エポキシ樹脂系のサビ止め塗料が最も推奨されます。付着性や防食性、耐久性に優れ、防サビ効果が高いためです。また、完全に除去できなかった錆には錆処理材を塗布し、水と酸素を遮断してそれ以上の錆の進行を防ぐ処理も有効です。
参考)外壁に錆び?原因を解説!|現場ブログ|大阪市の外壁塗装ならラ…
施工マニュアルでは、防水紙付きリブラスの施工方法が示されており、防水紙の施工、通気用縦胴縁の施工、リブラスの留め付け間隔など、細かな施工基準が定められています。これらの基準を遵守することで、長期的な耐久性と防錆性能を確保できます。
参考)https://www.nsk-web.org/wp-content/uploads/2023/07/rasu201307.pdf
メタルラスの価格は種類と質量によって大きく異なります。一般的な平ラスの場合、30枚セット(600×1800mm)で11,500円程度で販売されており、1枚あたり約380円という価格帯です。単品では1枚152円(税込)から入手可能な製品もあります。
参考)メタルラス 30枚 600×1800mm ラス網 メッシュ …
平ラスの規格による価格差も存在し、#240シリーズ(240~300g/㎡)は1坪25枚梱包、#390~#450シリーズ(450~500g/㎡)は1坪20枚梱包、#600A以上(700~1050g/㎡)は1坪10枚梱包となり、質量が重いほど単価は上昇します。
リブラスは平ラスよりも高価ですが、具体的な価格情報は製品規格や発注量によって変動するため、専門業者への見積もりが必要です。ただし、型枠として使用する場合、解体工事が不要なため、その分のコスト削減を考慮すると実質的なコスト差は小さくなります。
選定基準として重要なのは、施工場所の構造(木造・鉄骨造)、求められる耐火性能、モルタル塗り厚、防錆性能です。高品質な施工を求める場合は、単なる価格比較ではなく、長期的な耐久性とメンテナンスコストを含めた総合的な判断が求められます。
参考)ラス網とは
リブラスの標準規格は、呼び方がRR、材質は冷延鋼板または亜鉛鉄板、幅610mm×長さ1,820mm、ピッチ(P)120mm、高さ(H)30mm、メッシュ寸法R10mm×S5mmが一般的です。1梱包は5坪(15枚)単位で供給されています。
リブラスの留め付け施工では、留め付け間隔が非常に重要です。単層下地構法の場合、リブラスに施工するモルタルの押さえ強さと通気層断面寸法確保の関係を考慮して、適切な間隔で固定する必要があります。
参考)住宅紛争処理技術関連資料集
防水紙付きリブラスを使用する場合、まず防水紙を施工し、次に通気用縦胴縁を施工してから、リブラスを留め付けます。ステープル(L1019Jまたは同等以上)を使用し、継目は縦・横とも30mm程度以上重ね継ぐことが標準仕様です。
参考)住宅紛争処理技術関連資料集
ラス型枠工法でリブラスを使用する際は、鋼製フレームと締付け金物や横端太材で固定します。細かく結束し、コンクリート側圧によってラス網が外れることがないよう留意する必要があります。打設時も一気に打ち上げるのではなく、段階的に施工することで品質を確保します。
参考)ラス網によるコンクリート打継ぎの留意点
メタルラス施工における工期短縮の最大のポイントは、ラス型枠工法の活用です。金網状のラス型枠は木製型枠に比べ軽量で、運搬などの労力が大幅に軽減されます。捨て型枠(埋め殺してしまう型枠)のため、型枠の解体工事が不要となり、工期が大幅に短縮されます。
従来の合板型枠では解体・撤去作業に多くの時間を要しましたが、ラス型枠工法ではこれが不要となるため、工期、資材置場、騒音問題などを大幅に解決できます。木製型枠の組み立て・解体時に発生する騒音も、ラス型枠では比較的音が少なく、住宅密集地での施工にも適しています。
形状の自由度も高く、ラス型枠は切断、折り曲げ、曲面などの加工がしやすいため、複雑な形状への対応が容易です。木製型枠では技術力が必要だった形状でも、ラス型枠であれば対応できるため、現場での変更対応もスムーズに行えます。
生コンの打設時には、金網状のラス型枠を通して打設状況を目視で確認できるため、余剰水や気泡問題を軽減できます。これにより、品質管理と工期短縮を同時に実現できる効率的な施工が可能になります。実際の施工現場では、工期を70%に短縮した実例も報告されており、コスト面でも優れた選択肢となっています。
参考)https://www.monotaro.com/k/store/%E3%83%A2%E3%83%AB%E3%82%BF%E3%83%AB%E4%B8%8B%E5%9C%B0%20%E3%83%A9%E3%82%B9/
参考リンク(メタルラス標準施工マニュアル・鉄骨造編の詳細):
https://www.lath.jp/survey/pdf/metal-lath.pdf
参考リンク(ラス下地既調合軽量セメントモルタル塗り工法の施工要領):
https://www.nsk-web.org/wp-content/uploads/2023/07/rasu201307.pdf
参考リンク(モルタル外壁の適切なラス選択に関する技術資料):
https://www.kenzai.or.jp/past/kouryu/image/49-02.pdf