
四号建築物とは、建築基準法第6条第1項第4号に規定される建築物のことで、具体的には以下の条件を満たす木造建築物を指します。
これらの条件を満たす建築物は、一般的な戸建て住宅のほとんどが該当し、日本の住宅の大部分を占めています。四号建築物は建築確認申請において構造関係の審査が省略される「四号特例」の対象となりますが、これは構造安全性の確認自体が不要というわけではありません。
四号建築物においても、建築基準法第20条に基づく構造安全性の確保は義務付けられています。その具体的な方法として「仕様規定」と呼ばれる基準があり、これに従って設計・施工する必要があります。
四号建築物の構造安全性を確保するための「仕様規定」は、3つの簡易計算と8項目の仕様ルールで構成されています。
【3つの簡易計算】
【8項目の仕様ルール】
これらの仕様規定は、許容応力度計算などの本格的な構造計算に比べると簡易的なものですが、最低限の構造安全性を確保するための基準として定められています。
四号建築物の構造安全性に関しては、いくつかの問題点が指摘されています。
最大の問題は、仕様規定が最低限の構造規定であるにもかかわらず、木造住宅全体の構造安全性を確認する規定になっていないことです。仕様規定では、壁量計算や壁の配置バランス、接合部の強度確認といった簡易計算は規定されていますが、柱や梁などの部材検討や地盤・基礎の検討については、詳細な計算を求めていません。
また、四号特例により構造関係図書の提出が免除されていることから、「構造計算を省略してもよい」と誤解している設計者や施工者も少なくありません。本来は建築士の責任において適切な構造検討を行うべきですが、実際には十分な検討がなされないまま建築されるケースも見られます。
過去の地震では、仕様規定のみで設計された四号建築物の中に倒壊した事例も報告されており、特に複雑な形状や大きな吹き抜けなどがある住宅では、簡易的な仕様規定だけでは十分な耐震性を確保できない可能性があります。
2025年4月から、いわゆる「四号特例」が大幅に縮小されることになりました。この法改正は「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律」の一環として行われるものです。
改正後は、現在の四号建築物は「新2号建築物」と「新3号建築物」に分類されます。
【新3号建築物】
※この区分のみ、構造審査の省略が継続
【新2号建築物】
※構造審査が必要となる
また、規模の基準も変更されます。
この改正により、これまで四号特例の対象だった多くの木造住宅で構造審査が必要となり、延べ面積300㎡を超える建物では構造計算が義務付けられることになります。
外壁塗装業者にとって、四号建築物の構造安全性に関する知識は、ビジネス展開において重要な意味を持ちます。
まず、外壁塗装は建物の耐久性に直接関わる工事です。適切な外壁塗装は、木材や下地の劣化を防ぎ、構造体を保護する役割を果たします。特に木造住宅では、外壁の防水性能が低下すると、柱や土台などの構造部材が腐朽し、建物の構造安全性が損なわれる可能性があります。
また、2025年の法改正により、多くの木造住宅で構造審査が必要となることから、リフォームや増改築の際にも構造に関する検討が厳格化される可能性があります。外壁塗装工事と合わせて、外壁の断熱改修や耐震改修を提案するビジネスチャンスが広がるでしょう。
特に省エネ基準適合義務化に伴い、外壁の断熱性能向上が求められる中、外壁塗装業者が断熱塗料の施工や外壁の断熱改修工事に関わる機会が増えると予想されます。こうした工事は建物の重量増加につながるため、構造安全性の確認がより重要になります。
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外壁塗装業者として、四号建築物の構造安全性向上に貢献するためのポイントをいくつか紹介します。
外壁の防水性能は構造体の保護に直結します。特に木造住宅では、雨水の侵入による木部の腐朽が構造安全性を損なう大きな要因となります。シーリング材の打ち替えや適切な防水塗料の選定など、高い防水性能を確保することが重要です。
外壁塗装前の点検で発見された劣化部分は、単に塗装するだけでなく、適切に補修することが必要です。特に構造体に近い部分の腐食や劣化は、建物の安全性に直接影響するため、専門家と連携して対応することをお勧めします。
2025年の省エネ基準適合義務化に向けて、外壁の断熱性能向上が求められています。断熱材の追加や断熱塗料の施工など、断熱改修と外壁塗装を組み合わせた提案が可能です。ただし、断熱材の追加は建物重量の増加につながるため、構造への影響を考慮する必要があります。
外壁塗装の際に、建物の状態を詳しく観察できる機会があります。外壁の劣化状況から構造体の問題が疑われる場合は、耐震診断や耐震改修の提案も検討しましょう。特に築年数の古い住宅では、現行の耐震基準を満たしていない可能性があります。
外壁塗装工事自体が建物に負担をかけることもあります。足場の設置方法や高圧洗浄の強さなど、施工方法によっては建物に悪影響を与える可能性があるため、適切な施工管理が重要です。
これらのポイントを押さえることで、外壁塗装業者として四号建築物の構造安全性向上に貢献することができます。また、お客様に対して単なる美観の向上だけでなく、建物の安全性や耐久性向上というより本質的な価値を提供することができるでしょう。
2025年4月の法改正以降、四号建築物の構造安全性確保に関して、どのような変化が予想されるでしょうか。
まず、構造審査の対象となる建築物が増えることで、設計段階での構造検討がより厳格に行われるようになります。これにより、新築住宅の構造安全性は全体的に向上すると期待されます。特に、これまで仕様規定のみで設計されていた木造2階建て住宅でも、より詳細な構造計算が行われるようになるでしょう。
また、省エネ基準適合義務化と合わせて実施されることから、断熱性能の向上と構造安全性の確保を両立させる技術や工法の開発が進むと考えられます。断熱材の追加による重量増加や、大開口部の設置による耐力壁の減少など、省エネと構造安全性のバランスを取るための新たな設計手法が求められるでしょう。
既存住宅については、リフォームや増改築の際に現行基準への適合が求められるケースが増えると予想されます。特に大規模なリフォームや用途変更を伴う改修では、構造安全性の確認が必要となる可能性が高まります。
外壁塗装業界としては、単なる美観の回復だけでなく、建物の耐久性向上や省エネ性能向上に貢献する「機能性塗装」の需要が高まると予想されます。断熱塗料や防水性能の高い塗料など、建物の性能向上に寄与する塗装材料の開発と普及が進むでしょう。
また、外壁塗装業者と構造設計者、断熱設計者などの専門家との連携が重要になります。総合的な住宅性能向上のためのワンストップサービスを提供する企業が競争優位性を持つようになるかもしれません。
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四号建築物の構造安全性に関する法改正は、住宅業界全体に大きな変革をもたらします。外壁塗装業者としても、この変化を理解し、新たなビジネスチャンスとして捉えることが重要です。お客様に対して、単なる美観の向上だけでなく、建物の安全性や耐久性、省エネ性能の向上といった総合的な価値を提供できる業者が、今後の市場で選ばれるでしょう。
法改正に備えて、構造や断熱に関する知識を深め、関連する資格の取得や専門家とのネットワーク構築を進めることをお勧めします。変化を先取りし、お客様のニーズに応える提案ができる外壁塗装業者が、今後の競争を勝ち抜いていくことができるでしょう。