視覚障害者誘導用ブロック種類と特徴、設置基準、施工方法の解説

視覚障害者誘導用ブロック種類と特徴、設置基準、施工方法の解説

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視覚障害者誘導用ブロック種類

視覚障害者誘導用ブロックの主要ポイント
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2つの基本種類

進行方向を示す線状ブロック(誘導ブロック)と、危険箇所を知らせる点状ブロック(警告ブロック)が存在します

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JIS規格による統一基準

2001年制定のJIS T 9251により、突起の形状・寸法・配列が明確に規定されています

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多様な素材タイプ

コンクリート、磁器タイル、合成ゴム、シートタイプなど用途に応じた4つの主要素材があります

視覚障害者誘導用ブロックの基本的な2種類の違い

 

視覚障害者誘導用ブロックは、正式名称を「視覚障害者誘導用ブロック」といい、1965年に日本で発明された視覚障害者の安全な移動を支援する設備です。このブロックには、機能が明確に異なる2つの基本種類が存在します。
参考)http://nichimou.org/impaired-vision/barrier-free/induction-block/

誘導ブロック(線状ブロック)は、進行方向を示すために設計されたブロックで、表面に線状の突起が平行に並んでいます。視覚障害者はこの線状突起を足裏や白杖で確認しながら、突起の方向に従って安全に歩行できます。JIS規格では、30cm×30cmの大きさに線状突起が4本配置されることが基準となっています。
参考)https://www.pref.saitama.lg.jp/a0601/kokoronobf/tactilegroundsurfaceindicators.html

警告ブロック(点状ブロック)は、危険箇所や注意が必要な位置を知らせるブロックで、格子状に点が配列された形状をしています。階段前、横断歩道前、誘導ブロックの分岐点、案内板の前、駅のホームの端などに設置されます。JIS規格では、30cm×30cmの大きさに25個(5×5配列)以上の点状突起を配置することが定められています。
参考)https://www.store.kenshilow.com/hpgen/HPB/entries/17.html

視覚障害者誘導用ブロックのJIS規格による形状と寸法基準

2001年に制定されたJIS T 9251は、視覚障害者誘導用ブロックの突起の形状・寸法・配列を統一的に規定した重要な規格です。この規格制定以前は、メーカーによって色や形状が異なるブロックが流通しており、視覚障害者から統一を求める声が上がっていました。
参考)https://www.soumu.go.jp/main_content/000547008.pdf

線状ブロックの詳細な寸法規格では、線状突起の頂部幅は17mm、基底部幅は27mm、高さは5mmと定められています。線状突起の間隔は75mmで、突起は4本以上配置し、ブロックの大きさに応じて増やすことが求められます。突起断面形状はハーフドーム型とされ、視覚障害者が足裏や白杖で認識しやすい形状となっています。
参考)https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/kiban/machizukuri/manual05.files/10_siryouhennjis.pdf

点状ブロックの規格では、点状突起の上面直径は12mm、基底部直径は22mm、高さは5mmです。隣接する点状突起の中心間距離は55~60mmの範囲内で設定され、ブロックの大きさに応じて一つの寸法を選定して製造します。点状突起は並列配列とし、最低25個(5×5)の配置が必須となっています。
参考)https://www.rehab.go.jp/application/files/7315/2039/6446/07_13_01__PDF2.4MB.pdf

これらの規格は、視覚障害者の安全性と認識性を最優先に考慮して設計されており、不動産開発や公共施設の整備において遵守すべき重要な基準となっています。
参考)https://www.mlit.go.jp/road/road/traffic/bf/kijun/pdf/02-7.pdf

視覚障害者誘導用ブロックの素材による種類分類

視覚障害者誘導用ブロックは、設置場所や用途に応じて選択できる多様な素材タイプが存在します。主な素材種類は、コンクリートタイプ、セラミック(磁器タイル)タイプ、合成ゴムタイプ、シートタイプの4種類に分類されます。
参考)https://www.iwata-kk.co.jp/cms/wp-content/uploads/2020/11/blockforthevisuallyimpaired.pdf

コンクリートタイプは、耐久性と耐摩耗性に優れており、屋外の歩道や公共空間で広く採用されています。プレス成型法による高品質な製品が多く、屋内外両方で使用可能です。厚さは30mm、60mmなど複数のバリエーションがあり、路面の状況に応じて選択できます。
参考)http://www.tsrc.or.jp/item/

磁器タイルタイプは、表面にクリンコート加工を施したものやノンスキッド加工を施した屋外専用タイプがあり、滑りにくさと美観性を両立しています。ISO色のセーフティーイエローを採用した二層成形タイプも製造されており、視認性の高さが特徴です。裏面にコンクリートを付けた製品もあり、設置の安定性を高めています。​
合成ゴムタイプは、屋内用と屋外用で異なる配合が施されており、ゴムチップを使用した製品や裏面コンクリート付きの製品があります。柔軟性があり、歩行者のつまずきリスクを低減する効果が期待されます。シートタイプは、既設の床面に貼り付ける方式で、改修工事や既存建物への後付け設置に適しています。
参考)http://www.miyuki-kasei.co.jp/products/seet/guidance_block.html

素材選定においては、はがれやすい樹脂製を避け、耐久性や耐摩耗性に優れたコンクリートブロック製等を用いることが推奨されています。設置環境や使用頻度、メンテナンス性を考慮した適切な素材選択が、不動産従事者には求められます。
参考)https://www.pref.ishikawa.lg.jp/kenju/bf-tebiki/documents/0404.pdf

視覚障害者誘導用ブロックの内方線付き点状ブロックの特徴

駅ホームでの視覚障害者の転落事故を防止するために開発された特殊なブロックが、内方線付き点状ブロックです。このブロックは、従来の点状突起に加えて、ホームの内側部分に線状の突起を設けることで、ホームの端がどちら側にあるかを視覚障害者が足裏や白杖で判別できるように設計されています。
参考)https://www.komei.or.jp/km/kawaguchi-hagiwara-kazuhisa/2016/01/19/%E5%86%85%E6%96%B9%E7%B7%9A%E4%BB%98%E3%81%8D%E7%82%B9%E5%AD%97%E3%83%96%E3%83%AD%E3%83%83%E3%82%AF%E3%81%AE%E8%A8%AD%E7%BD%AE%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6/

視覚障害者の3人に2人がホームでの転落を経験しているという統計があり、この深刻な安全問題への対策として、内方線付き点状ブロックの設置が全国的に推進されています。1日の利用者が1万人以上の全国約2000駅では、2016年3月末をめどに設置が進められ、その後も段階的に整備範囲が拡大されています。
参考)https://www.mlit.go.jp/common/001238698.pdf

JR東日本では、2015年度末に乗降人員10万人以上の94駅で整備を完了し、さらに1万人以上10万人未満の265駅についても2018年度末までの完了を目指して整備を加速させました。この内方線付き点状ブロックは、ホームドアの設置には莫大な費用がかかるため、比較的低コストで実現可能な転落防止対策として重要な役割を果たしています。
参考)https://www.jreast.co.jp/press/2016/20161214.pdf

視覚障害者誘導用ブロックの色彩と輝度比の重要性

視覚障害者誘導用ブロックの色彩選定は、弱視者や残存視力のある方の視認性確保において極めて重要な要素です。JIS規格およびバリアフリー基準では、ブロックの色は黄色を基本とし、周囲の路面との輝度比が大きいことにより、当該ブロック部分を容易に識別できる色とすることが定められています。
参考)https://www.city.yokohama.lg.jp/kenko-iryo-fukushi/fukushi-kaigo/fuku-machi/seibikijun/shisetsu-sebi/manualkoubo230215.files/gen-block.pdf

標準色である黄色以外の色を使用する場合は、必ず併用床材との対比効果(コントラスト)の大きい色を選定し、輝度比2.0程度が好ましいとされています。弱視の人が見やすく、周りとの区別がしやすい色彩設計が求められるのです。
参考)https://www.city.sapporo.jp/fukushi/machizukuri/documents/kokorono_web_a4_35.pdf

近年の景観意識の高まりに伴い、1980年代以降は周囲の環境と調和する色合いを「デザイン優先」で採用する傾向が強まり、歩道に溶け込むような同系色や同材質の点字ブロックが増加しました。しかし、歩道と同系色・同材質のブロックでは、弱視や色弱者の人たちには識別が困難であり、安全性の観点から問題視されています。​
不動産開発や施設設計においては、美観性と機能性のバランスを考慮しつつ、視覚障害者の安全を最優先とした色彩選定が不可欠です。JIS規格に準拠した黄色を基本としつつ、周囲環境との輝度差を確保することで、全ての利用者にとって安全で快適な空間を実現できます。​

視覚障害者誘導用ブロックの施工方法と設置基準の実務知識

視覚障害者誘導用ブロックの適切な施工は、視覚障害者の安全な移動を保証するために不可欠です。施工方法には、新設床材間に挟み込んで埋め込む方法と、既設床材をカッティング後にはつり出して埋め込む方法があり、埋め込みには硬練りモルタル上への圧着が推奨されています。
参考)https://kusatake.co.jp/concrete/concrete_07_03.html

設置位置の基準として、歩道における線状ブロックは道路境界より60cm程度の位置に、歩行方向に30cm(1列)の幅で設置するのが望ましいとされています。視覚障害者誘導用ブロックの不陸や不等沈下が生じないよう、十分に突き固めと転圧を行うことが重要です。
参考)https://www.city.hakodate.hokkaido.jp/docs/2015082800019/file_contents/2015082800019_hk_docs_2015082800019_files_yudo_block.pdf

施工時の重要な注意点として、原則としてブロックは現場加工せず、正方形状のまま設置することが求められます。接着目地には舗装材との整合性や接着性の良いものを用い、舗装材との間やブロック間を十分に結合させる必要があります。また、歩道新設の際には、マンホール蓋等がブロックにかからないよう関係者と事前調整を行うことが推奨されています。​
シートタイプの施工では、雨天時や湿気が多い時は施工を延期し、路面に凹凸がある場合は事前処理が必要です。貼着後はゴムハンマー等で全面を叩いて密着させ、十分な接着強度を確保します。定期的な点検を行い、突起の破損、すり減り、不陸、不等沈下等の異常を認めた場合には、速やかに補修を行う維持管理体制の構築が不動産管理者には求められます。​
国土交通省「道路の移動円滑化整備ガイドライン 第7章 その他の施設等」
視覚障害者誘導用ブロックの設置基準や形状・寸法、材料、色彩に関する公式ガイドラインが詳細に記載されており、不動産開発における設計段階での参考資料として有用です。

 

日本視覚障害者団体連合「点字ブロックについて」
視覚障害当事者団体による点字ブロックの歴史、種類、JIS規格、課題についての包括的な解説があり、利用者視点での理解を深めるための貴重な情報源となっています。