施工図と設計図の違いとは?目的や作成者から役割まで解説

施工図と設計図の違いとは?目的や作成者から役割まで解説

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施工図と設計図の違い

施工図と設計図の3つの違い
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作成者の違い

設計図は建築士や設計事務所が作成し、施工図は施工管理者や協力業者が作成します

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目的の違い

設計図は法的適合性の確認と建築許可取得用、施工図は現場での正確な作業指示用です

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記載内容の違い

設計図は全体像と基本仕様、施工図は詳細な寸法や納まり、施工手順を記載します

施工図と設計図の作成者と責任の違い

設計図は建築士や設計事務所が作成する図面で、建築主の要望や敷地条件、法令などを踏まえて建物の設計意図を反映した基本的なプランを示します。建築士法には「設計とはその者の責任において設計図書を作成すること」と定められており、設計図の作成には法的な責任が伴います。設計図が不十分な場合や計算間違いが含まれていた場合、建築士に対して法的責任を追及することが可能です。

 

一方、施工図は施工管理者もしくは協力業者といった施工者が作成する図面です。設計図をベースに、細かな寸法や施工可能な納まりを網羅した図面を作成します。施工図作成が当たり前でなかった時代は小規模であれば設計図で建てることも可能でしたが、建物が大規模になり情報が多岐にわたる昨今の建物では、調整された施工図なしには建物を建てることができないのが現状です。

 

参考:施工図と設計図の違いについて(建築における法的責任の詳細)

施工図と設計図の目的と役割の違い

設計図の主な目的は、建築に関連する法律と予算の裏付けを取り、建築許可を得ることにあります。法律に適合していなければそもそも建物を建てることはできず、施主と契約するには予算を明確にしておく必要があります。設計図は「何を作るか」を示し、建物の大きさや仕様、梁や柱等の構造体の情報から部屋の分類やその仕上げ等の情報が図面に明記されています。

 

施工図の目的は、現場で職人が正確に作業を行うための詳細な指示を提供することです。「どのように作るか」を具体的に指示し、壁の厚さや仕上げ方法、ドアや窓の取り付け位置と寸法、設備の配管・配線ルートなど、設計図には記載されていない詳細な情報が含まれます。施工図があることで職人が迷うことなく正確に作業を進められるようになり、施工ミスや手戻りを防ぐことができます。

 

設計図は施主用であり法的な適合性を確認するためのものですが、施工図は現場用であり職人が作業しやすくするためのものという明確な違いがあります。

 

施工図の種類と躯体図・仕上図の特徴

施工図には大きく分けて躯体図と仕上図の2種類があります。躯体図とは、柱や梁、壁、階段などの建物の骨組みとなる躯体工事に必要な図面のことで、コンクリートの打設位置、寸法、通り芯、コンクリートの断面寸法などを記載します。大きな建物の骨組みはコンクリートや鉄筋を用いるため、コンクリート施工図、コンクリート躯体図とも呼ばれます。

 

躯体図は構造図と平面詳細図をもとに作成する図面で、基礎伏せ図、床伏せ図、屋根伏せ図なども躯体図の種類に含まれます。躯体図を見て作れるのは骨組みまでであり、建物を構成する骨組みの図面として最終的に見えなくなってしまうことが多いですが、非常に重要な図面です。

 

仕上図は躯体図が建物の骨組みを表す図面であるのに対し、建物の最終的な状態を表す図面になります。平面詳細図、断面詳細図、外構図などが含まれ、間取りや建具などの情報を組み込み、建物を真上から見た状態で表現します。仕上図には仕上げ材の種類、壁や天井のボード張り、床の仕上げ方法など、最終的に見える部分の詳細が記載されています。

 

参考:施工図の種類について(躯体図と仕上図の詳細解説)

施工図作成における総合図の役割

施工図作成の流れにおいて、総合図は非常に重要な位置づけにあります。総合図とは、意匠、構造、設備などの分野別に作成された設計図書に基づき相互に関連する工事内容を一枚の図面に表したものです。総合図の作成目的は、発注者・設計者・監理者・受注者等が建築・設備その他関連する工事の全体概要と相互関係を把握し、その工事内容を共有することにあります。

 

総合図作成では、まず設計図上に明記されている情報を全て原寸で入力します。具体的には、意匠図・構造図・設備図・電気図の4種類の図面を重ね合わせし、初期の段階で施主の合意を取ります。総合図で重ね合わせしたときに、例えば意匠図に明記してある仕上げを完成するためには構造図に明記されている躯体の位置では成立しない、設備の配管が鉄骨梁の拡幅に干渉しているので設備シャフトの壁を移動しないといけない、といったような問題が見えてきます。

 

こうした細かな納まりがすべて成立するように検討していくのが施工図担当者の主な役割となります。総合図をベースとして業種毎に分類し、施工図を作成していくことで、工事内容の相互確認および検討課題の抽出と解決の方針をつくることができ、各種施工図の適正化と展開の効率化を図ることができます。

 

参考:総合図の手引き(総合図の位置づけと作成方法の詳細)

施工図作成で現場の無駄を排除する方法

施工図を作成することで、現場での施工ミスを防ぐだけでなく、施工の無駄を排除することができます。施工図には寸法・材料・配管・配線などの詳細な情報が記載されており、施工時に必要なものが明確になります。これにより誤った部品や数量を用意したり、間違った位置に取り付けたりするようなミスを防げます。

 

施工図には作業の順序や段取りが記載されているため、無駄な移動や待ち時間を減らして効率よく作業できます。必要な人員や機材も記載されており、これに基づいて計画を立てると過不足なく人員や機材を確保でき、コストや時間の節約につながります。安全上の注意事項や危険箇所も示されており、これに従って作業することで事故やトラブルの回避が可能です。

 

施工図作成の重要性は、建物建設の最後の砦と言うほど重要なものです。施工業者は施工図に書かれている寸法・納まりを頼りに、建物のそれぞれの箇所を一つ一つ施工していきます。工場で製作された部品がもし間違っていたら作り直しとなり、工程に大きな影響が出てしまうため、施工図をベースに部品の製作図もチェックし、現場で施工できるかどうかきっちりと検討していく必要があります。

 

施工図作成においては、図面の正確性と視認性を考慮することが重要です。施工図は実際の施工における作業指針となるため、寸法や部材の詳細、施工順序を明確に記載する必要があります。また、施工図はさまざまな人間が利用するため、情報が一目でわかるように工夫することが求められます。異なる線種や色を使用して構造物の種類や重要度を明示することが有効で、デジタル形式で作成することで拡大・縮小時に情報が失われることなく視認性も向上します。

 

参考:施工図を作成する重要性(現場での無駄排除とミス防止の詳細)