

シラン系含浸撥水材(シラン系表面含浸材)は、コンクリート表面や空隙壁面を疎水化して吸水を抑え、水や塩化物イオン等の侵入を抑制する「浸透性の保護材料」として扱われます。
材料の反応イメージとしては、主成分のアルコキシ基がコンクリート表層の水分と反応(加水分解)し、撥水性を示す吸水防止層を形成する、と整理すると現場判断が速くなります。
この「水分と反応して層を作る」性質が、メリットでもあり罠でもあります。
意外と誤解されがちですが、「撥水=完全な防水」ではありません。狙うのは“吸水抑制層”であり、現場では雨掛かり部の劣化要因(水+塩分+凍結融解)を減らす予防保全の位置づけで使うのが安全です。
施工は塗布自体が簡便でも、性能を決めるのは下地の状態です。特に「素地の乾燥」「表層の汚れ・レイタンス等の除去」「必要な場合の補修(ひび割れ・断面修復)」を先に片付けておかないと、含浸のばらつきが出やすくなります。
また、新設コンクリート直後の“養生が終わったから即塗る”は、冬期ほど危険です。冬期は湿度が高く表面から水が蒸発しにくいため、表層が湿潤化し、含浸しづらくなることが現場報告として整理されています。
参考:冬期施工で「水分率管理」「加温(塗布前日〜塗布翌日)」「含浸深さ確認」の考え方がまとまっています。
冬期におけるシラン系表面含浸材の塗布時の留意点(北海道開発技術研究発表会)
シラン系含浸撥水材は、塗布時のコンクリート表面付近の水分率(含水状態)の管理が重要で、水が多いと表面近くで加水分解が進み、深く含浸せず吸水防止層が十分に形成されにくくなります。
冬期の実例では、塗布前に表層を乾燥状態に調整し、塗布後も含浸挙動を継続させるために加温を続けることが有効とされ、養生囲い内温度を40℃程度まで上げる運用が紹介されています。
同報告では、電気抵抗式水分計のカウント値で乾燥度合いを管理し、「乾燥状態」を確認してから塗布する運用が具体化されています。
「意外なポイント」として、塗布前に乾燥状態でも、塗布後に湿度が上昇して表層が湿潤状態になると含浸しない例があるため、施工後(特に翌朝まで)の環境維持が効きます。
研究報告では、シラン系表面含浸材は撥水・吸水防止効果を持つ含浸層を形成し、水分や劣化要因物質の浸透に抵抗してコンクリートの劣化進行を抑制する技術として整理されています。
また、性能は含浸深さに依存し、含浸深さが深いほど外部環境からの水分や劣化要因物質の浸透抑制効果が高くなる、という考え方が明示されています。
中性化については、透湿度(透湿比)の違いが性能差として出やすく、透湿度が低い材料ほど中性化抑制効果が高くなる傾向が示されています。
現場目線での注意点は、「塩害・中性化は単独で進むより、水分の出入りとセットで加速・変動する」ことです。だからこそ、含浸深さを確保できる施工条件(乾燥・温度・湿度)を先に作るのが、結果的に一番コストが安くなります。
参考)https://www.j-cma.jp/j-cma-pics/10003646.pdf
参考:シラン系表面含浸材の性能評価(透湿度・中性化抑制・含浸深さと水分率の関係など)がまとまっています。
シラン系表面含浸材の性能評価に関する研究(コンクリート工学年次論文集)
検索上位の一般解説では「撥水するかどうか(散水試験)」で終わることが多い一方、実務の落とし穴は“見える撥水域=性能の全てではない”点です。
研究では、割裂面の目視で確認できる撥水・吸水防止層の深さとは別に、目視で撥水が確認されない深さでも、成分が浸透して塩分溶出の抑制が認められる可能性が示されています。
つまり、散水して弾いたからOK/弾かないからNG、の二択で短絡すると、材料評価も施工評価もブレます。
ここで建築従事者向けに提案したいのが、「確認方法を2系統に分ける」考え方です。
冬期の事例では、テストピースを割裂し割裂面に水を噴霧して撥水範囲を含浸域と判断し、含浸深さをノギスで測定する運用が紹介され、加温・水分管理に留意した結果として7.67mmの含浸が確認されています。
さらに踏み込むなら、将来の説明責任(発注者・監理・上司チェック)に備えて、「いつ・どの水分状態で・どの環境条件で・どれだけ含浸したか」を一枚の施工管理記録に落とし込むと、クレーム対応コストが下がります。