植物プランクトン種類と生態系の役割や水質浄化

植物プランクトン種類と生態系の役割や水質浄化

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植物プランクトン種類と特徴

植物プランクトンの主要分類
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珪藻類

ガラス質の殻を持ち、最も詳しく研究されている浮遊性藻類。海洋で最も多く出現する

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渦鞭毛藻類

2本の鞭毛を持ち運動能力がある。珪藻類の次に多く出現する単細胞藻類

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その他の藻類

緑藻類、藍藻類、円石藻など多様な分類群が存在し、それぞれ異なる生態的役割を持つ

植物プランクトン珪藻類の特徴と構造

珪藻類は植物プランクトンの中で最も詳しく研究されている浮遊性藻類であり、単細胞で約2マイクロメートルから1000マイクロメートル以上の大きさになります。珪藻は珪酸でできた2つの殻(外殻・内殻)から構成されており、種によっては個々の細胞が粘着性の刺毛で連結して群体を形成します。主な属として、Coscinodiscus属、Thalassiosira属、Chaetoceros属などが知られています。
参考)http://hu-plankton.jp/study/Plankton.htm

珪藻類の特徴的な点は、珪素(Si)を必要とすることであり、レッドフィールド比はC:N:Si:P = 106:16:16~50:1となっています。ナガイトマキケイソウやツルギケイソウなど、多様な形態を持つ種が全国の湖沼に分布しており、貧栄養型から富栄養型まで様々な水域で見られます。建築事業における水質管理では、珪藻類の種類組成が水域の栄養状態を判断する重要な指標となります。
参考)植物プランクトン

植物プランクトン渦鞭毛藻類の分類と生態

渦鞭毛藻類は珪藻類の次に多く出現する単細胞の藻類で、珪藻類とは異なり2本の鞭毛を持つため運動能力があります。渦鞭毛藻類には光合成でエネルギーを得る独立栄養種、他の植物プランクトンや小さな動物プランクトンを捕食する従属栄養種、いずれの方法でもエネルギーを取得できる混合栄養種が存在します。​
渦鞭毛藻類は無性分裂によって2つに分かれ同じサイズの細胞を作って増殖し、一部の種は有性生殖も行います。好条件下で特定の種が大増殖すると、赤褐色の細胞色が目立つようになり赤潮の原因となります。従属栄養性のものとしてはヤコウチュウやディノフィシス属が知られており、これらはしばしば動物プランクトンとみなされます。渦鞭毛藻類の大量増殖は水産養殖業に大きな影響を与えるため、建築事業における水質管理施設の設計では赤潮対策が重要となります。
参考)植物プランクトン - Wikipedia

植物プランクトン緑藻類と藍藻類の種類

緑藻類は植物と同様に光合成色素としてクロロフィルa、bを持ち、陸上植物へと進化を遂げてきた系統です。緑藻類にはオオヒゲマワリ目、ヨコワミドロ目などの分類群が含まれ、Botryococcus brauniiのように炭化水素(重油成分)を持つ種も注目されています。細胞は長さ3~10μmの卵円形で、細い糸状の構造で連絡して密な群体を形成します。
参考)海藻の系譜

藍藻類(シアノバクテリア)は原核生物でありながら光合成を行う植物プランクトンの一種です。ユレモの仲間は幅が約8~10μm、長さは数mmにもなり、表面には竹のような節があります。Aphanizomenon flos-aquaeなど、最近大発生する湖沼が増加している種もあり、淡水域での水質管理において重要な監視対象となっています。建築現場周辺の水域や調整池では、藍藻類の異常増殖による水質悪化に注意が必要です。
参考)https://dic-healthcare.jp/column/%E8%97%BB%E9%A1%9E%E3%81%A8%E3%81%AF%EF%BC%9F%E3%80%80%E6%A4%8D%E7%89%A9%E3%81%AE%E4%BB%B2%E9%96%93%EF%BC%9F/

植物プランクトン円石藻の形態と分類

円石藻は細胞表面に円石と呼ばれる円盤型の構造を持つ植物プランクトンで、分類学上はハプト植物門に属する単細胞真核藻類です。円石はホロコッコリスとヘテロコッコリスの二種類に大別され、ホロコッコリスは0.1マイクロメートル程度の小さな斜方六面体の方解石結晶から成り、ヘテロコッコリスは方解石に加えて霰石型の結晶から構成されます。
参考)円石藻 - Wikipedia

円石藻は生活環の各ステージにおいて異なる種類の円石を形成し、単相(n)の世代はホロコッコリスを、複相(2n)の世代はヘテロコッコリスを形成します。主な科としては、コッコリサス科、プレウロクリシス科、ヒメノモナス科、ラブドスファエラ科、シラコスファエラ科などがあり、それぞれ特徴的な円石の形態を持ちます。円石藻はかつて大気中に大量のジメチルスルフィドを放出した歴史があり、地球環境に大きな影響を与えてきました。​

植物プランクトン種類と建築事業における水質管理の関連性

建築事業において水質管理は重要な課題であり、植物プランクトンの種類組成は水域の環境状態を評価する指標となります。水質浄化施設では植物プランクトンを含む浮遊物質(SS)の除去が行われ、植生浄化ではヨシ等が窒素・リンを吸収することで植物プランクトンの増殖を抑制します。
参考)https://www.aoki.ecei.tohoku.ac.jp/research/for3rd/plankton.pdf

フェスタ工法のような植生浮島技術では、水生植物や植生基盤材の複合的な浄化作用により、水域面積の10%以下の小規模浮島で水質を改善できます。特に植物の根から抽出される物質によるアオコ形成藍藻類の増殖抑制効果や、捕食者となる動物プランクトンの増加により、植物プランクトンの異常増殖による水質汚濁を改善する効果があります。建築現場周辺の調整池やため池では、珪藻類や渦鞭毛藻類の種類組成を定期的に監視することで、富栄養化の進行や赤潮発生のリスクを早期に検知できます。
参考)フェスタ工法|ソリューション・技術|株式会社フジタ

高頻度にプランクトンの状態を調べることで水質変化の予測が可能となり、建築事業における環境影響評価や水質保全対策の立案に役立ちます。植物プランクトンの分類階級を利用することで高精度な分類が可能であり、綱・目・科・属・種という階層的なラベルによって水域の生態系状態を詳細に把握できます。​
フェスタ工法による植生浮島を使用した水質改善技術の詳細
建築事業における水質浄化技術として、植生浮島を用いた維持管理不要な水質改善方法が有効です。

 

光合成事典における植物プランクトンの分類と特徴
原核生物から真核生物まで幅広い生物群を含む植物プランクトンの詳細な分類情報が参考になります。

 

植物プランクトン生態系における食物連鎖の役割

植物プランクトンは海洋における生態系の食物連鎖を支える基盤的存在であり、魚類や鯨などの餌となって食物連鎖の土台を形成しています。植物プランクトンは光合成を行うため、大気中のCO2を海へ取り込むことができ、温暖化の進行を食い止める重要な役割も果たしています。
参考)Umidas 海の基本講座|一般社団法人日本埋立浚渫協会

海洋によるCO2の吸収は大気と海洋のCO2濃度差によって発生し、植物プランクトンの光合成によって海中の濃度が下がることで、さらなる炭素吸収を促進します。1990年から2020年までで、海洋は大気から1年あたり平均21億トンの炭素を吸収しており、河川における吸収量も加味すると平均28億トン炭素吸収し、地球上のCO2の約3割を毎年吸収しています。
参考)プランクトンが世界を救う? プランクトンと環境問題の深い繋が…

植物プランクトンは光合成により地球全体の酸素生産量のおよそ半分を担っており、大気中の二酸化炭素濃度の増加に南半球の植物プランクトンの季節変化が影響を及ぼしている可能性も示されています。植物プランクトンの光合成だけがCO2吸収要因ではありませんが、海中にある植物プランクトンによる光合成がCO2吸収に大きく貢献していることは明らかです。建築事業においても、ブルーカーボン生産者として植物プランクトンが地球環境を支えていることを理解し、水域の生態系保全に配慮した開発が求められます。​

植物プランクトン顕微鏡観察の方法と大きさ

植物プランクトンの観察には顕微鏡が必須であり、大きさが0.5mm程度あれば肉眼で、0.05mm以下では顕微鏡が必要となります。プランクトンの大きさは2~3mmにも満たないものばかりで、通常はプランクトンネットを使って採集し顕微鏡で観察します。プランクトンネットの網目のサイズ(目合い)は様々で、例えば目合い0.3mmのネットを使用すれば、そのサイズより大きなプランクトンを採集できます。
参考)水の中の小さな生き物観察 -観察編- :: 国立科学博物館

光学顕微鏡で観察すると、細長いものや数珠状に連なったもの、らせん状のものなど様々な形の植物プランクトンが観察できますが、微細な構造までは観察できません。表面の様子を詳しく見るには走査型電子顕微鏡(SEM)、内部構造を見るには透過型電子顕微鏡(TEM)を使用します。
参考)池の中の植物プランクトンを見てみよう~ラン藻編~

最近では自動化システムの開発も進んでおり、PlanktoVisionのような画像解析システムでは、顕微鏡画像から植物プランクトンを自動的に分類できるようになっています。建築事業における水質監視では、こうした自動観察システムを活用することで、高頻度かつ効率的な植物プランクトンのモニタリングが可能となり、水質変化の予測や早期対応に役立ちます。プランクトンの分類階級に基づいた形態的特徴を利用することで、高精度な自動分類が実現されています。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3636010/

植物プランクトン赤潮発生メカニズムと環境影響

赤潮とは水中の植物プランクトンなどが高密度に発生することで水が着色する現象であり、プランクトン自身の増殖に加え、風や潮の流れによってプランクトンが集積することで発生します。原因生物の大半は植物プランクトンで、赤潮の色は原因生物の種類により様々であり、赤茶色のものが多いですが、朱色、紫、緑色の赤潮もあります。
参考)https://www.pref.tokushima.lg.jp/file/attachment/178136.pdf

シャットネラ(Chattonella antiqua、C. marina、C. ovata)を中心とする有害赤潮は、養殖魚や自然界の魚介類を斃死させ、漁業に大きな被害をもたらします。有害有毒プランクトンのブルーム(HAB)は4タイプに分けられ、大量増殖後の分解過程で酸素消費による貧酸素化を起こすタイプ、有毒藻類種の細胞を二枚貝が捕食して毒が蓄積されるタイプ、魚介類の斃死を招くタイプ、海苔養殖の色落ち被害を起こす珪藻赤潮タイプがあります。
参考)有害有毒プランクトンの発生機構と発生防除に関する研究

赤潮が発生すると酸素不足が生じ、大量のプランクトンが死滅した後、それらを分解する微生物が酸素を大量に消費し、水中の酸素量が大幅に減少します。これにより魚や貝などの生物が酸欠状態に陥り大量死することがあり、特に漁業にとっては大きな打撃となります。建築事業における水域管理では、富栄養化による赤潮発生を防ぐため、適切な水質浄化対策が必要です。赤潮の中には有害な物質を生産するプランクトンも含まれており、魚介類に取り込まれると人間にも影響が出る可能性があるため、該当地域での水産物の取引が制限されることもあります。
参考)赤潮の全貌:原因・影響・対策を知ろう