消防庁マイナ救急導入と不動産管理者が知るべき入居者対応

消防庁マイナ救急導入と不動産管理者が知るべき入居者対応

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消防庁マイナ救急の導入と不動産業界への影響

マイナ救急で変わる救急搬送の流れ
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マイナ保険証で医療情報を即座に確認

救急隊員が傷病者の病歴や処方薬、かかりつけ医などを正確に把握し、適切な搬送先を選定

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入居者の救急対応がスムーズに

特に高齢者や一人暮らしの入居者の緊急時対応において、管理者の負担軽減につながる仕組み

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全国720消防本部で実施中

令和7年10月1日から常時運用救急隊の98%にあたる5,334隊で運用開始

消防庁マイナ救急制度の基本概要

 

令和7年10月1日から、全国720消防本部5,334隊において「マイナ救急」が全国一斉に開始されました。これは消防庁が推進する新しい救急業務の仕組みで、救急隊員が傷病者のマイナ保険証(健康保険証として利用登録済みのマイナンバーカード)を活用し、過去の受診歴や処方薬、特定健診情報などの医療情報を専用端末で閲覧できるシステムです。
参考)https://www.fdma.go.jp/mission/enrichment/mynakyukyu/mynakyukyu.html
​youtube​
従来は救急隊員が傷病者本人やご家族から口頭で病歴や服薬情報を聞き取っていましたが、痛みや苦しみで会話が困難な場合や、気が動転して正確な情報を伝えられないケースも少なくありませんでした。マイナ救急の導入により、マイナンバーカードをカードリーダーにかざすだけで、氏名、生年月日、住所、受診した医療機関、薬剤情報(注射・点滴含む)、既往歴、特定健診情報などが瞬時に確認できるようになりました。
参考)https://www.city.ichikawa.lg.jp/fir06/0000432018.html

この制度は総務省消防庁が令和4年度から実証事業を開始し、令和6年度には67消防本部660隊で有用性が確認されたことを受けて、令和7年度から全国展開に至っています。youtube​
参考)https://news.yahoo.co.jp/articles/53a285bd023875b24c6a8ffffbf4d30293ce21a9

マイナ救急導入による救急搬送の具体的メリット

マイナ救急制度の導入により、救急現場では以下のような具体的なメリットが期待されています。
参考)https://mykoho.jp/article/152021/9789603/9882906

傷病者と家族の負担軽減については、話すことが難しい状況や、飲んでいる薬の名前を忘れた場合でも、救急隊員が正確な医療情報を把握できるため、傷病者本人や付き添いのご家族が詳細を説明する負担が大幅に軽減されます。特に意識がない傷病者や認知症の高齢者の場合、マイナ保険証があれば正確な情報が即座に伝わります。
参考)https://financial-field.com/insurance/entry-460183

円滑な搬送先医療機関の選定という点では、傷病者の病歴や服薬情報から総合的に判断し、症状に適した医療機関を迅速に選定できるようになりました。これにより、搬送先の選定に要する時間が短縮され、より適切な応急処置が実施可能となります。
参考)https://www.city.fuji.shizuoka.jp/3005100000/p000235.html

さらに搬送先病院での治療の事前準備が可能になることも大きな利点です。救急隊が取得した医療情報を搬送先病院と共有することで、病院側が到着前に治療の準備を進められるため、より早い治療開始につながり、救命率の向上が期待されています。
参考)https://www.chubu-furusato-tottori.jp/shobo/27866

不動産管理者が理解すべき入居者救急対応への影響

不動産従事者にとって、マイナ救急制度の導入は入居者管理における新しい視点をもたらします。特に賃貸物件や分譲マンションの管理業務において、高齢入居者や一人暮らしの入居者の救急搬送時の対応が大きく変化する可能性があります。
参考)http://www.sasebo-zaitaku.net/cms/wp-content/uploads/2015/06/%E6%95%91%E6%80%A5%E6%90%AC%E9%80%81%E6%99%82%E3%81%AE%E6%83%85%E5%A0%B1%E6%8F%90%E4%BE%9B%E3%83%9E%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%82%A2%E3%83%AB.pdf

従来、施設や集合住宅からの救急搬送時には、管理者や施設職員が傷病者の情報を救急隊に伝える「救急搬送時の情報提供書」を準備する必要がありました。これには入居者の既往歴、かかりつけ医、服薬情報、緊急連絡先などを記載し、救急隊や搬送先病院に提供していました。​
マイナ救急制度の導入後も、管理者による情報提供書の準備は依然として有効ですが、入居者がマイナ保険証を携行していれば、より正確かつ最新の医療情報が救急隊に提供されることになります。特に高齢者施設や介護関連施設では、入居者本人がマイナ保険証を携行しているかどうかの確認が、新しい管理項目として重要になってきます。
参考)https://www.dlri.co.jp/report/ld/525925.html

不動産管理者としては、入居者に対してマイナ保険証の取得と携行を促す啓発活動を行うことが、入居者の安全確保と管理業務の円滑化につながります。特にオートロック物件では救急隊の建物内への進入に時間を要するケースがあるため、マイナ救急の活用により救急活動そのものを迅速化することが重要です。
参考)https://www.prsoft.co.jp/camera/autolock/ambulance/

消防庁公式「あなたの命を守るマイナ救急」
マイナ救急の詳細な流れや参照可能な情報、よくある質問などが掲載されており、入居者への説明資料として活用できます。

 

マイナ保険証の準備と携行促進のポイント

マイナ救急を利用するためには、マイナンバーカードを所持し、かつ健康保険証の利用登録が完了している必要があります。この2つの条件が揃って初めて「マイナ保険証」として機能し、救急現場での医療情報活用が可能になります。
参考)https://www.city.fukuroi.shizuoka.jp/soshiki/37/1/13518.html

マイナンバーカードの健康保険証利用登録は、マイナポータルやセブン銀行ATM、医療機関・薬局の顔認証付きカードリーダーなどで行うことができます。登録自体は数分で完了し、暗証番号の入力が必要です。すでにマイナンバーカードを持っている方でも、健康保険証利用登録をしていなければマイナ救急では使用できないため、この点の周知が重要です。
参考)https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001336299.pdf

不動産管理者として入居者に促すべき具体的なポイントは以下の通りです。まずマイナンバーカードの取得が第一歩で、未取得の入居者には市区町村での申請を案内します。次に健康保険証利用登録を必ず行うよう促し、最後に日常的な携行習慣を推奨することが重要です。
参考)https://www.jimin.jp/news/information/211386.html

特に高齢者や基礎疾患のある入居者には、外出時だけでなく自宅内でもマイナ保険証を手の届くところに保管しておくよう案内することが推奨されます。救急搬送は自宅内での発症・受傷時にも発生するため、寝室や居間など普段過ごす場所の近くに置いておくことで、緊急時に迅速に活用できます。
参考)https://www.mizuho-re.co.jp/knowledge/knowhow/detail/index_568.html

救急現場での実際の活用フローと管理者の協力体制

実際の救急現場でマイナ救急がどのように活用されるのか、その具体的な流れを理解しておくことは、不動産管理者として入居者対応を円滑に進める上で重要です。​
119番通報を受けると、指令員が通報者に対してマイナ保険証の準備を依頼します。救急隊が現場に到着後、まず傷病者本人または家族から情報閲覧の同意を得ます。この同意は原則として必要ですが、意識障害などで同意が得られない状況でも、救命や適切な医療機関選定のために救急隊が必要と判断した場合は情報を閲覧する場合があります。
参考)https://www.city.akita.lg.jp/shobo/kyukyu/1047401.html

次に救急隊員がマイナ保険証を専用のカードリーダーで読み取り、オンライン資格確認等システムにアクセスします。この際、暗証番号の入力は原則不要で、救急隊員が傷病者の顔と券面上の写真を確認して本人確認を行います。​
タブレット端末で医療情報を閲覧した後、取得した情報と傷病者の現在の状態から総合的に判断し、より適切な処置と搬送先医療機関の選定が行われます。この一連の流れは従来の聞き取りに比べて時間が短縮され、円滑な救急活動につながることが期待されています。​

救急搬送の段階 従来の方法 マイナ救急導入後
情報収集 口頭での聞き取り(5〜10分) マイナ保険証で即座に確認(数分)
医療情報の正確性 傷病者・家族の記憶に依存 システムから正確な情報を取得
搬送先選定 限られた情報で判断 詳細な医療情報に基づき総合判断
病院での事前準備 到着後に情報共有 搬送中に情報共有し事前準備可能

不動産従事者が知っておくべき独自の活用シーン

マイナ救急制度は、不動産業界において特定の状況下で大きな価値を発揮します。特に検討すべき独自の活用シーンとして、以下のようなケースが挙げられます。

 

高齢者向け賃貸物件や見守りサービス付き住宅での活用です。高齢者は基礎疾患を持つ方が多く、複数の医療機関に通院し複数の薬を服用しているケースが一般的です。緊急時に本人や家族がこれらの情報を正確に伝えることは困難ですが、マイナ救急があればこの問題が解決されます。管理者は入居時の説明でマイナ保険証の重要性を強調し、定期的な啓発活動を行うことが推奨されます。​
外国人入居者が多い物件においても、マイナ救急は有効です。日本語でのコミュニケーションが十分でない外国人入居者の場合、救急時の情報伝達に大きな障壁がありましたが、マイナ保険証があれば言語の壁を越えて正確な医療情報が伝わります。
参考)https://www.digital.go.jp/policies/mynumber/utilization/emergency

またオートロック物件や高層マンションでは、救急隊の建物内進入や傷病者のいる階までの到達に時間を要することがあります。マイナ救急により、到着後の情報収集時間が短縮されることで、全体の救急活動時間の削減に貢献します。管理者としては、救急隊がスムーズに建物内に進入できるよう、エントランスキーの管理方法や緊急時の解錠手順を整備しておくことも重要です。
参考)https://www.hachidaifudousan.com/blog/entry-444819/

単身者向けワンルームマンションにおいても、一人暮らしの入居者が突然倒れた場合、周囲に情報を伝えられる人がいないケースが多々あります。このような状況でもマイナ保険証があれば、救急隊が必要な医療情報を取得できるため、管理会社として入居者にマイナ保険証の携行を促すことは、入居者の安全管理責任を果たす上で重要な取り組みとなります。​
総務省「あなたの命を守るマイナ救急」リーフレット
入居者への配布資料として活用できる公式リーフレットで、マイナ救急の仕組みとメリットがわかりやすく説明されています。

 

プライバシー保護と不動産管理者が注意すべき点

マイナ救急の活用において、入居者から懸念されやすいのがプライバシーや個人情報保護の問題です。不動産管理者として入居者に正確な情報を提供し、不安を解消することが重要です。​
まずマイナンバー自体は使用されないという点を明確に伝える必要があります。マイナ救急では12桁のマイナンバーは使用せず、健康保険証機能を利用して医療情報にアクセスします。救急隊員にマイナンバーを見られても、それだけで個人情報が漏れたり悪用されたりすることはありません。​
救急隊員が閲覧できる情報は限定されていることも重要なポイントです。マイナ救急のシステムで閲覧できるのは、氏名、住所などの券面情報と、受診歴、薬剤情報などの医療情報のみで、税や年金など救急活動に関係のない情報は閲覧できません。​
カードの紛失・盗難時の対応についても、入居者に案内しておくことが推奨されます。マイナンバーカードを紛失した場合は、24時間365日体制の「マイナンバー総合フリーダイヤル(0120-95-0178)」に連絡することで、即座に一時利用停止ができます。その後、市区町村に届け出て再交付手続きを行います。​
ICチップには税や年金の情報、病歴などのプライバシー性の高い情報は記録されておらず、情報を確認するには暗証番号が必要で、一定回数間違えると使えなくなる仕組みになっています。このような安全対策について入居者に説明することで、マイナンバーカードを持ち歩くことへの不安を解消できます。​
不動産管理者自身も、入居者のマイナンバーカードを預かったり、暗証番号を聞き出したりすることは厳に慎むべきです。マイナ救急はあくまで救急隊員が傷病者本人のカードを活用する制度であり、管理者が介入する必要はありません。ただし、緊急時に入居者が自分でカードを用意できない状況も想定し、カードの保管場所を本人に確認しておくよう促すことは有効です。​