stpg管とは?基礎知識から用途・選定まで完全解説

stpg管とは?基礎知識から用途・選定まで完全解説

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stpg管の基礎知識と実用ガイド

この記事でわかること
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STPG管の基本特徴

圧力配管用炭素鋼鋼管の規格と構造を理解できます

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種類と選定方法

STPG370/410の違いとスケジュール番号の見方を習得

⚙️
実践的な使い分け

現場での適切な管材選択と施工のポイントを解説

stpg管とは何か?基本的な特徴と規格について

STPG管(Steel Tube Pipe General)は、JIS G 3454に規定された「圧力配管用炭素鋼鋼管」の正式名称で、一般的に「スケジュール管」と呼ばれています。この管材は、SGP管(配管用炭素鋼管)よりも高い圧力に対応できる設計となっており、最大10MPa(100kgf/cm²)以下の圧力で使用可能です。

 

STPG管の最大の特徴は、化学成分がJIS規格で明確に規定されていることです。鉄鋼五元素(C・Si・Mn・P・S)の含有量が厳格に管理されており、これによって安定した品質と性能を確保しています。使用温度範囲は-15℃から350℃までと幅広く、様々な工業用途に対応可能です。

 

管の表記方法も独特で、「STPG370 S 20A sch10」のような形式で表されます。この表記には以下の意味があります。

  • STPG:圧力配管用炭素鋼鋼管を示す
  • 370:材料の引っ張り強さ(N/mm²)
  • S:製造方法(シームレス管)
  • 20A:外径の呼称
  • sch10:呼び厚さ(スケジュール番号)

通常のSGP管と比較して肉厚が厚く設計されているため、同じ配管口径でも単位重量が重くなりますが、その分耐圧性能が大幅に向上しています。

 

stpg管の種類とスケジュール番号システム

STPG管は引っ張り強さによって、STPG370(370N/mm²以上)とSTPG410(410N/mm²以上)の2種類に分類されます。一般的な用途ではSTTPG370が多く使用されており、より高い強度が要求される場合にSTPG410が選択されます。

 

製造方法による分類では、以下の2つのタイプがあります。
シームレス管(S)

  • 継ぎ目なしで製造される
  • 高い強度と信頼性を持つ
  • 価格は電縫管より高め
  • 重要な配管や高圧用途に推奨

電縫管(E)

  • 溶接の継ぎ目がある
  • シームレス管より安価
  • 一般的な用途に適している
  • コストパフォーマンスに優れる

スケジュール番号は管の肉厚を表す重要な指標で、Sch10、Sch20、Sch30、Sch40、Sch60、Sch80に区分されています。現場では「スケヨン(Sch40)」や「スケハチ(Sch80)」と呼ばれることが多く、特に蒸気ドレンのような厳しい条件の配管には、シームレスのスケハチが推奨されます。

 

スケジュール番号の計算式は以下の通りです。
スケジュール番号 = P/S × 1000
(P:使用圧力、S:材料の許容応力)
例えば、2MPaの配管でSTPG370を使用する場合、材料の許容応力を引張強さの1/4とすると、スケジュール番号は21.6となり、Sch30の鋼管を選択すれば適切です。

 

stpg管とsgp管の違いと適切な使い分け方法

STPG管とSGP管の最も重要な違いは、対応可能な圧力範囲です。SGP管が比較的低い圧力(1.0MPa[10kgf/cm²]以下)に適用されるのに対し、STPG管は高圧(10MPa[100kgf/cm²]以下)での使用が可能です。

 

具体的な使い分けの基準は以下の通りです。
SGP管の適用範囲

  • 一般給水配管(上水道用を除く)
  • 低圧の空気配給
  • 軽微な蒸気配管
  • ガス配給(低圧)
  • 建築設備の一般配管

STPG管の適用範囲

  • 地域冷暖房(DHC)配管
  • 高温水配管
  • 高圧蒸気管
  • ボイラー配管
  • プラント設備の主要配管

材料特性の面でも大きな違いがあります。STPG管は化学成分が厳格に規定されているため、品質のばらつきが少なく、溶接性や加工性も安定しています。一方、SGP管は化学成分の規定が緩く、用途も限定的です。

 

コスト面では、STPG管の方が高価になりますが、長期的な信頼性と安全性を考慮すると、高圧・高温環境では必須の選択となります。特に産業プラントや重要インフラでは、初期コストよりも運用時の安全性を優先してSTPG管が選択されています。

 

stpg管の用途と産業分野での活用事例

STPG管は幅広い産業分野で使用されており、その主要な用途は以下の通りです。
エネルギー関連設備

  • 蒸気配管システム
  • ボイラー給水・循環配管
  • 発電所の高温高圧配管
  • 地熱発電設備
  • 太陽熱利用システム

製造業プラント

  • 化学プラントの反応器配管
  • 石油精製装置
  • 食品工場の殺菌・加熱システム
  • 製紙工場の蒸気配管
  • 金属加工の冷却水循環システム

建築設備

  • 大型ビルの冷暖房配管
  • 病院・ホテルの給湯システム
  • 商業施設の空調配管
  • データセンターの冷却システム
  • 温浴施設の循環配管

特殊用途

  • 消火設備の高圧配管
  • 油圧システム
  • 冷媒配管
  • 工業用ガス配管
  • 高温油配管

実際の施工事例では、STPG370-Sを使用した配管で2.9MPaまでの高圧漏れ試験をクリアした実績があります。このような厳しい条件でも安定した性能を発揮するのがSTPG管の特徴です。

 

特に注目すべきは、環境変化に対する適応性です。近年の省エネルギー要求や高効率化の流れの中で、より高温・高圧での運転が求められる設備が増えており、STPG管の重要性はますます高まっています。

 

stpg管選定時の計算方法と現場での注意点

STPG管の適切な選定には、使用条件に基づいた計算が不可欠です。基本となるのはBarlowの式を用いた強度計算です。
Barlowの式
P = 2tS/D

  • P:許容圧力(N/mm²)
  • t:肉厚(mm)
  • S:材料の許容応力(N/mm²)
  • D:外径(mm)

実際の選定手順は以下の通りです。
1. 使用条件の確認

  • 最高使用圧力
  • 使用温度範囲
  • 流体の種類
  • 設置環境(屋内外、振動の有無)
  • 要求される耐用年数

2. 材料グレードの選択

  • 一般用途:STPG370
  • 高強度要求:STPG410
  • 腐食環境:表面処理または材質変更検討

3. 製造方法の決定

  • 重要配管:シームレス(S)
  • 一般配管:電縫(E)
  • コスト重視:電縫(E)
  • 信頼性重視:シームレス(S)

4. スケジュール番号の計算
設計安全倍率を4倍とした場合の例。
STPG370 Sch30使用時の最高使用圧力
P = (30/1000) × (370/4) = 2.77MPa
現場での重要な注意点:

  • 溶接部の品質管理が最も重要で、有資格者による施工が必須
  • 管の保管時は、端面保護と防錆対策を徹底する
  • 切断時のバリ除去を確実に行い、流体への異物混入を防ぐ
  • 試験圧力は使用圧力の1.5倍以上で実施する
  • 温度変化による伸縮を考慮した支持方法を採用する

また、近年では非破壊検査技術の向上により、溶接部の品質確認がより精密に行えるようになっています。X線検査や超音波検査を適切に実施することで、長期間にわたって安全な運用が可能となります。

 

配管系統全体の設計においては、STPG管だけでなく、継手類やバルブ類も同等の耐圧性能を持つものを選択する必要があります。システム全体のバランスを考慮した設計が、最終的な安全性と経済性を決定する重要な要素となります。

 

参考リンク:JIS規格に関する詳細情報
日本産業標準調査会(JISC)
参考リンク:配管技術に関する専門情報
一般社団法人日本配管工業会