
STPG管(Steel Tube Pipe General)は、JIS G 3454に規定された「圧力配管用炭素鋼鋼管」の正式名称で、一般的に「スケジュール管」と呼ばれています。この管材は、SGP管(配管用炭素鋼管)よりも高い圧力に対応できる設計となっており、最大10MPa(100kgf/cm²)以下の圧力で使用可能です。
STPG管の最大の特徴は、化学成分がJIS規格で明確に規定されていることです。鉄鋼五元素(C・Si・Mn・P・S)の含有量が厳格に管理されており、これによって安定した品質と性能を確保しています。使用温度範囲は-15℃から350℃までと幅広く、様々な工業用途に対応可能です。
管の表記方法も独特で、「STPG370 S 20A sch10」のような形式で表されます。この表記には以下の意味があります。
通常のSGP管と比較して肉厚が厚く設計されているため、同じ配管口径でも単位重量が重くなりますが、その分耐圧性能が大幅に向上しています。
STPG管は引っ張り強さによって、STPG370(370N/mm²以上)とSTPG410(410N/mm²以上)の2種類に分類されます。一般的な用途ではSTTPG370が多く使用されており、より高い強度が要求される場合にSTPG410が選択されます。
製造方法による分類では、以下の2つのタイプがあります。
シームレス管(S)
電縫管(E)
スケジュール番号は管の肉厚を表す重要な指標で、Sch10、Sch20、Sch30、Sch40、Sch60、Sch80に区分されています。現場では「スケヨン(Sch40)」や「スケハチ(Sch80)」と呼ばれることが多く、特に蒸気ドレンのような厳しい条件の配管には、シームレスのスケハチが推奨されます。
スケジュール番号の計算式は以下の通りです。
スケジュール番号 = P/S × 1000
(P:使用圧力、S:材料の許容応力)
例えば、2MPaの配管でSTPG370を使用する場合、材料の許容応力を引張強さの1/4とすると、スケジュール番号は21.6となり、Sch30の鋼管を選択すれば適切です。
STPG管とSGP管の最も重要な違いは、対応可能な圧力範囲です。SGP管が比較的低い圧力(1.0MPa[10kgf/cm²]以下)に適用されるのに対し、STPG管は高圧(10MPa[100kgf/cm²]以下)での使用が可能です。
具体的な使い分けの基準は以下の通りです。
SGP管の適用範囲
STPG管の適用範囲
材料特性の面でも大きな違いがあります。STPG管は化学成分が厳格に規定されているため、品質のばらつきが少なく、溶接性や加工性も安定しています。一方、SGP管は化学成分の規定が緩く、用途も限定的です。
コスト面では、STPG管の方が高価になりますが、長期的な信頼性と安全性を考慮すると、高圧・高温環境では必須の選択となります。特に産業プラントや重要インフラでは、初期コストよりも運用時の安全性を優先してSTPG管が選択されています。
STPG管は幅広い産業分野で使用されており、その主要な用途は以下の通りです。
エネルギー関連設備
製造業プラント
建築設備
特殊用途
実際の施工事例では、STPG370-Sを使用した配管で2.9MPaまでの高圧漏れ試験をクリアした実績があります。このような厳しい条件でも安定した性能を発揮するのがSTPG管の特徴です。
特に注目すべきは、環境変化に対する適応性です。近年の省エネルギー要求や高効率化の流れの中で、より高温・高圧での運転が求められる設備が増えており、STPG管の重要性はますます高まっています。
STPG管の適切な選定には、使用条件に基づいた計算が不可欠です。基本となるのはBarlowの式を用いた強度計算です。
Barlowの式
P = 2tS/D
実際の選定手順は以下の通りです。
1. 使用条件の確認
2. 材料グレードの選択
3. 製造方法の決定
4. スケジュール番号の計算
設計安全倍率を4倍とした場合の例。
STPG370 Sch30使用時の最高使用圧力
P = (30/1000) × (370/4) = 2.77MPa
現場での重要な注意点:
また、近年では非破壊検査技術の向上により、溶接部の品質確認がより精密に行えるようになっています。X線検査や超音波検査を適切に実施することで、長期間にわたって安全な運用が可能となります。
配管系統全体の設計においては、STPG管だけでなく、継手類やバルブ類も同等の耐圧性能を持つものを選択する必要があります。システム全体のバランスを考慮した設計が、最終的な安全性と経済性を決定する重要な要素となります。
参考リンク:JIS規格に関する詳細情報
日本産業標準調査会(JISC)
参考リンク:配管技術に関する専門情報
一般社団法人日本配管工業会