水酸化銅の化学式と色や沈殿の反応と作り方や性質と用途

水酸化銅の化学式と色や沈殿の反応と作り方や性質と用途

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水酸化銅の化学式

水酸化銅の基礎知識
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化学式と外観

化学式はCu(OH)₂。美しい青白色から淡青色の粉末または固体で、水にはほとんど溶けません。

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熱に対する反応

加熱すると脱水反応を起こし、黒色の酸化銅(CuO)へと変化します。この変化は比較的低温で起こります。

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建築・産業での用途

木材防腐剤、殺菌剤、顔料などに利用され、建築現場の耐久性向上に寄与しています。

水酸化銅の化学式と色や沈殿の性質

 

建築や化学の現場で扱われる銅化合物の中でも、**水酸化銅(Copper(II) hydroxide)**はその鮮やかな色彩と特殊な性質で知られています。まずは基本的な化学的性質と、現場で識別する際に役立つ外観の特徴について深掘りします。


  • 化学式と構造
    水酸化銅の化学式は Cu(OH)₂ と表されます 。銅イオン(Cu²⁺)1つに対して、水酸化物イオン(OH⁻)が2つ結合した構造を持っています。この物質はイオン結晶であり、層状構造を形成していることが知られています。モル質量は約97.56 g/molです 。
    参考)水酸化銅(II) - Wikipedia


  • 独特な「青色」の識別
    水酸化銅の最大の特徴は、その色です。一般的に**「青白色」「淡青色」**と表現される独特のフロック(綿状)のような沈殿物を形成します 。
    参考)https://hokkaido.csj.jp/prize/30syoureisyou/30asahikawahigashi.pdf

    建築現場において、古い銅配管や銅製の装飾部材の近くで、青っぽい粉末や汚れが見つかることがありますが、これは銅が環境中の水分やアルカリ分と反応して生成された水酸化銅や、それに類する塩基性塩である可能性があります。

  • 溶解性の特性(沈殿)
    水酸化銅は、水にはほとんど溶けません 。この「水に不溶」という性質は、建築用材としての利用において極めて重要です。もし水に簡単に溶けてしまうと、雨水などで流出し、効果が持続しないからです。
    参考)https://mab.co.th/jp/product-detail.php?id=3539amp;cat=102

    一方で、酸には容易に反応して溶け、銅イオンに戻ります。また、過剰なアルカリやアンモニア水には錯イオンを形成して溶解するという、両性元素に近い複雑な挙動を示します 。
    参考)水酸化銅(スイサンカドウ)とは? 意味や使い方 - コトバン…

以下に、水酸化銅の基本的な物理的性質をまとめます。

項目 データ 備考
化学式 Cu(OH)₂ 銅(II)の水酸化物
色・外観 青白色~淡青色 ゲル状または結晶性粉末 ​
水溶性 不溶

水には溶けないが酸に溶ける
参考)豌エ驟ク蛹夜喝(竇。)

密度 3.368 g/cm³ 固体状態 ​
CAS番号 20427-59-2 化学物質特定のための番号 ​


参考リンク:Wikipedia - 水酸化銅(II)(基本的な物理化学的性質の確認に有用)

水酸化銅の化学式と作り方や加熱の反応

水酸化銅は自然界に鉱物として存在することは稀で、通常は化学反応によって人工的に生成されます。また、この物質は熱に対して非常に敏感であり、この性質を知っておくことは、建築現場での銅製品の変色トラブル(黒変)を理解する上で役立ちます。


  • 作り方:沈殿生成反応
    水酸化銅を作る最も一般的な方法は、硫酸銅(CuSO₄)などの銅(II)塩の水溶液に、水酸化ナトリウム(NaOH)などの強塩基の水溶液を加えることです 。​
    化学反応式は以下のようになります。
    Cu2++2OHCu(OH)2\text{Cu}^{2+} + 2\text{OH}^- \rightarrow \text{Cu(OH)}_2 \downarrowCu2++2OH−→Cu(OH)2↓
    この際、液温が高いと後述する脱水反応が起きてしまうため、純粋な青色の水酸化銅を得るには、溶液を冷却しながら反応させる必要があります 。建築廃液の処理などで中和剤を使用する際、青いドロドロとした沈殿が発生する場合、この反応が起きている可能性が高いです。​


  • 加熱による黒色変化(脱水反応)
    水酸化銅は熱的に不安定な物質です。**60℃~80℃**程度に加熱するだけで、分子内から水分子(H₂O)が失われ、**酸化銅(CuO)へと変化します 。
    参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/kakyoshi/36/3/36_KJ00003507609/_pdf/-char/ja

    Cu(OH)2ΔCuO+H2O\text{Cu(OH)}_2 \xrightarrow{\Delta} \text{CuO} + \text{H}_2\text{O}Cu(OH)2ΔCuO+H2O
    酸化銅は
    「黒色」**の物質です 。
    参考)銅の酸化の説明とよく出る問題【中学理科:化学変化】

    これは、例えば銅を含んだ防腐処理木材や薬剤を保管している場所で火災や異常な高温が発生した場合、青色の薬剤が黒色に変色することを意味します。また、給湯配管などで銅イオンが溶出し、仮に水酸化銅が形成されたとしても、熱湯が通る環境では直ちに黒色の酸化銅になって配管内部に付着する現象(黒粉の発生)とも関連しています。

  • 反応の可視化
    この「青から黒へ」の変化は非常に顕著であるため、温度履歴の痕跡を確認する指標にもなり得ます。
状態 温度 化学種
常温沈殿 ~20℃ 青白色 水酸化銅 Cu(OH)₂
加熱分解 60~80℃以上 黒色 酸化銅 CuO ​


参考リンク:J-STAGE - 水酸化銅(II)の熱分解反応(温度による色の変化のメカニズム詳細)

水酸化銅の化学式とアンモニア錯イオン

水酸化銅には、特定の条件下で液体に溶解するユニークな性質があります。特にアンモニアとの反応は、繊維産業だけでなく、銅の化学的挙動を理解する上で重要です。


  • 錯イオン形成による溶解
    前述の通り水酸化銅は水に溶けませんが、アンモニア水を加えると反応して溶け出し、非常に美しい**深青色(濃青色)**の溶液になります 。
    参考)Periodic Table Cu

    この時、銅イオンはアンモニア分子と配位結合し、テトラアンミン銅(II)イオンという錯イオンを形成しています。
    Cu(OH)2+4NH3[Cu(NH3)4]2++2OH\text{Cu(OH)}_2 + 4\text{NH}_3 \rightarrow [\text{Cu(NH}_3)_4]^{2+} + 2\text{OH}^-Cu(OH)2+4NH3→[Cu(NH3)4]2++2OH−
    この深青色の溶液は「シュバイツァー試薬」と呼ばれます 。​


  • セルロースの溶解とレーヨン
    このシュバイツァー試薬は、植物の繊維であるセルロースを溶かすことができるという特殊な能力を持っています。溶かしたセルロースを酸の中に押し出して繊維状に再生したものが「銅アンモニアレーヨン(キュプラ)」です 。​
    建築分野では直接レーヨンを作ることはありませんが、**「銅化合物とアンモニアが共存すると、木材(セルロース)や特定の有機物に浸透・作用しやすくなる」**という原理は、木材保存剤の浸透メカニズムと密接に関係しています。


  • 現場での注意点
    清掃業者やメンテナンス業者が、銅製品の近くで高濃度のアンモニアを含む洗剤を使用すると、予期せぬ腐食や変色(激しい青色の溶出)を引き起こすリスクがあります。これは単なる酸洗いの腐食とは異なり、錯体形成による強力な溶解作用が働くためです。


水酸化銅の化学式と農薬や殺菌剤の用途


建築従事者にとって水酸化銅が最も身近な形は、木材保存剤殺菌剤としての利用です。なぜ銅化合物が木材を守るのか、そのメカニズムと製品への応用について解説します。


  • 木材保存剤(防腐・防蟻剤)への応用
    現代の建築現場で広く使われている木材保存剤には、銅化合物を主成分とするものが多くあります。代表的なものにACQ(Alkaline Copper Quaternary:銅・アルキルアンモニウム化合物系)があります 。
    参考)薬剤の安全性(防腐防蟻木材)

    ACQなどの薬剤では、酸化銅(CuO)や水酸化銅、あるいは塩基性炭酸銅などを原料として、アミンやアンモニアで可溶化させ、木材内部に浸透させます。木材注入後、溶媒が揮発したり反応したりすることで、銅成分が木材組織内で再び不溶化(水に溶けない形に定着)し、長期間の効果を発揮します 。​


  • ボルドー液と殺菌作用
    農業用ですが、歴史的に有名な「ボルドー液」も水酸化銅の化学を利用しています。硫酸銅水溶液と消石灰(水酸化カルシウム)を混合して作られ、この時生成される塩基性硫酸銅や水酸化銅の微粒子が葉に付着し、殺菌効果を発揮します 。​
    建築における木材腐朽菌への対抗メカニズムも同様で、銅イオンが菌類の酵素系を阻害することで、木材が腐るのを防いでいます。

  • シロアリに対する効果
    銅化合物は防腐(対菌類)だけでなく、防蟻(対シロアリ)効果も併せ持っています。水酸化銅を含む銅系保存剤は、シロアリの消化管内の共生微生物に作用したり、忌避効果をもたらしたりして、家の土台や柱を守ります 。
    参考)https://www.mokuzaihozon.org/info/yakuzai/athrzd_22-no2.xls

参考リンク:コシイプレザービング - 薬剤の安全性(ACQなど銅系保存剤のメカニズム解説)

水酸化銅の化学式と建築配管の青い水の正体

最後に、検索上位の一般的な化学解説サイトではあまり触れられない、建築設備トラブルとしての「水酸化銅」および関連銅塩の視点を提供します。新築の建物やリフォーム直後によくある問い合わせの一つに「お風呂の水が青い」という現象があります。


  • 青い水(ブルーウォーター)現象
    給湯配管などに銅管を使用している場合、微量の銅イオンが水中に溶け出します。これが浴槽に溜まり、石鹸カスや湯垢に含まれる脂肪酸やアルカリ分と反応すると、青色の不溶性銅石鹸や、場合によっては水酸化銅などの銅塩が生成され、浴槽の喫水線付近を青く染めることがあります。


    • 原因: 銅管の内面がまだ酸化皮膜で保護されていない新しい時期に起こりやすい現象です。

    • 化学的実態: 純粋な水酸化銅(Cu(OH)₂)だけでなく、塩基性炭酸銅や銅石鹸(脂肪酸銅)の複合的な汚れであることが多いです。しかし、根本にあるのは「銅イオン(Cu²⁺)がアルカリ(OH⁻等)と出会って青色固体を形成する」という水酸化銅生成と同様の化学プロセスです。


  • 安全性と対策
    顧客から「この青い水は毒ではないか?」と聞かれた際、建築従事者としては正確な知識が必要です。
    水酸化銅や酸化銅自体は劇物指定されている場合もありますが、配管から溶出するレベルの微量な銅イオンについては、健康への深刻な影響は低いとされています(銅は必須ミネラルでもあります)。ただし、水質基準を超える溶出は問題です。


    • 対策: 通水を繰り返して銅管内部に安定した酸化皮膜(酸化銅など)が形成されれば、銅の溶出は減り、青い着色は収まります。


  • アルカリ性コンクリートとの接触腐食
    建築工事中、銅配管が打設直後のコンクリート(強アルカリ性)に直接触れると、表面で急激な反応が起こり、腐食する可能性があります。コンクリートの水分に含まれる高濃度の水酸化カルシウムが銅表面を侵し、緑青や水酸化銅のような腐食生成物を作ることがあるため、適切な防食テープやスリーブ処理が施工管理上必須となります。

このように、水酸化銅の「化学式」と「性質」を理解することは、単なる化学知識にとどまらず、木材の耐久性確保から設備トラブルのクレーム対応まで、建築現場の品質管理に直結する重要な要素なのです。

 

 


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