
配管用ステンレス鋼管の規格は、JIS G 3459によって厳格に定められています。この規格は耐食用、低温用、高温用、消火用などの多様な配管用途に対応するステンレス鋼管について規定しており、外径10.5mm(呼び径6A又は1/8B)から660.4mm(呼び径650A又は26B)までの寸法範囲を適用対象としています。
規格における主要な材質記号として、以下が標準化されています。
これらの材質は化学成分と機械的性質が詳細に規定されており、用途に応じた適切な選択が可能です。建築現場では特に耐久性と施工性のバランスを考慮した材質選定が重要となります。
ステンレス鋼管のスケジュール体系は、肉厚による圧力等級を示す重要な規格要素です。標準的なスケジュール分類は以下の通りです:
軽量スケジュール系
標準・重量スケジュール系
寸法許容差については、外径で±0.4%から±0.8%、肉厚で±12.5%から±15%の範囲で規定されています。例えば外径114.3mm(100A)の場合、Sch.40では肉厚6.0mm、重量16.0kg/mとなり、内径は102.3mmとなります。
この精密な寸法管理により、配管システムの信頼性と互換性が確保されています。
配管設計において重量計算は構造計算の基礎となる重要な要素です。ステンレス鋼管の単位質量は、材質密度7.93g/cm³を基準として算出されています。
代表的な単位重量例(kg/m)
重量計算式は以下の通りです。
単位重量 = π × (外径 - 肉厚) × 肉厚 × 密度
この計算により、配管総重量の正確な把握が可能となり、建築物の構造設計における荷重計算に活用されます。特に高層建築や大型プラントでは、配管重量が構造体に与える影響を慎重に検討する必要があります。
また、材質による密度差も考慮が必要で、SUS316はモリブデン含有により僅かに重くなる特性があります。
大径配管については、JIS G 3468「配管用溶接大径ステンレス鋼管」が適用されます。この規格は、通常の継目無し管では製造困難な大径サイズに対応するもので、特殊な溶接製造工程を経た管材を対象としています。
大径管の特徴
大径管では溶接線の品質管理が特に重要となり、溶接部の非破壊検査が義務付けられています。建築設備では空調ダクト接続部や大型ボイラー配管などで頻繁に使用される規格です。
溶接大径管は製造コスト面で有利な反面、溶接部の品質管理と施工時の取り扱いに特別な注意が必要です。特に現場溶接時には、母材と同等の耐食性を確保するための適切な溶接材料選定と後処理が不可欠となります。
実際の建築現場では、規格書に明記されていない実務的な課題が多数存在します。経験豊富な設備技術者が把握している選定時の重要ポイントを解説します。
温度サイクルによる材質選択の盲点
一般的にSUS304で十分とされる用途でも、頻繁な温度変化がある環境では応力腐食割れのリスクが高まります。特に80℃以上と常温を繰り返す配管では、SUS316Lの採用を検討すべきです。
電食対策の見落としがちな規格要求
異種金属接続部では、JIS規格外の絶縁継手や防食テープの併用が実質的に必要となります。特に亜鉛メッキ配管との接続部は、規格上問題なくても長期的な腐食リスクを考慮した設計が重要です。
施工性を考慮した肉厚選定の実際
理論上はSch.10Sで十分な圧力条件でも、現場での取り回しや溶接作業性を考慮してSch.40を採用するケースが多く見られます。これは規格上の性能だけでは判断できない実務的な選択です。
寸法公差の累積による設計マージン
配管システム全体では個々の寸法公差が累積し、予想以上の寸法ズレが発生することがあります。特に長距離配管では、±15%の肉厚公差が配管重量に与える影響を十分に考慮した構造設計が必要です。