ステンレス鋼管規格の種類と寸法許容差を解説

ステンレス鋼管規格の詳細解説

ステンレス鋼管の主要JIS規格分類

ステンレス鋼管規格は建築業界において配管設備の基盤となる重要な規格体系です。主要な規格として、配管用ステンレス鋼管（JIS G 3459）、配管用溶接大径ステンレス鋼管（JIS G 3468）、一般配管用ステンレス鋼管（JIS G 3448）の3つに大別されます。
配管用ステンレス鋼管（JIS G 3459）の特徴

• 外径範囲：10.5mm（呼び径6A）～660.4mm（呼び径650A）
• 主な材質：SUS304、SUS304L、SUS316、SUS316L
• 適用用途：耐食用、低温用、高温用、消火用配管

配管用溶接大径ステンレス鋼管（JIS G 3468）の詳細

• 大径配管専用規格として350A以上をカバー
• 熱処理炉の制約により、指定がない限り熱処理なしで供給
• 石油、化学、電力プラントなどの大規模設備に使用

一般配管用ステンレス鋼管（JIS G 3448）の用途

• 屋内水道配管専用として制定（昭和55年5月）
• TP-Aに比べ薄肉設計で経済性重視
• 給水、給湯、排水、冷温水配管に特化

ステンレス鋼管規格の寸法許容差基準

寸法許容差はステンレス鋼管規格において施工精度と製造コストのバランスを決定する重要な要素です。特に建築現場では、配管接続部の気密性確保において寸法精度が直接的に影響します。
外径許容差の詳細基準

• 管の直径実測値による許容差管理
• 周長実測値を円周率3.1416で除した値での許容差管理
• スケジュール番号別の許容差設定

肉厚許容差の管理基準
スケジュール5S、10S、20S、40の各段階で異なる肉厚許容差を規定。例えば25A（1インチ）配管の場合：

• スケジュール5S：肉厚1.7mm、内径30.7mm
• スケジュール10S：肉厚2.8mm、内径28.4mm
• スケジュール20S：肉厚3.0mm、内径28.0mm
• スケジュール40：肉厚3.4mm、内径27.2mm

この段階的な設定により、圧力条件と経済性を両立した配管設計が可能になります。

 

ステンレス鋼管規格のサイズ体系と重量計算

ステンレス鋼管規格のサイズ体系は、呼び径（A呼び）と呼び径（B呼び）の併記方式を採用し、国際的な互換性を確保しています。重量計算では材質による密度差を考慮した補正係数を使用します。
標準サイズ範囲

• 小径：6A（1/8インチ、外径10.5mm）から始まる体系
• 中径：50A（2インチ、外径60.5mm）前後が最も流通量多
• 大径：1000A（40インチ、外径1016.0mm）まで対応

重量計算の実用例
SUS304基準の単位質量（kg/m）に対し、SUS316系では1.0064の補正係数を乗算。これは材質の密度差に基づく実用的な計算方法として建築現場で広く活用されています。
定尺長さは基本的に4mですが、6m長も入手可能であり、現場での継手数削減による施工効率向上が期待できます。

ステンレス鋼管規格の製造方法別分類

ステンレス鋼管規格における製造方法の違いは、用途適性と価格に大きく影響する重要な分類基準です。建築業界では用途に応じた適切な製造方法の選択が施工品質を左右します。
溶接管（TP-A）の特性

• 鋼帯を管状に溶接成形した最も一般的な製品
• 溶接線による内面の微細な凹凸が特徴
• 一般建築配管での使用頻度が最も高い

シームレス管（TP-S）の特性

• 鋼塊から継目なく製造された高品質管
• BA管（光輝焼鈍管）とEP管（電解研磨処理管）を選択可能
• 半導体製造用高純度ガス管や食品関連装置に使用

特殊製造方法の応用例
近年注目される高圧水素用ステンレス鋼「AUS316L-H2」は、従来のSUS316/316Lに準拠しながら高圧ガス保安法の厳格な要求をクリア。優れた延性（絞り75%以上）により、燃料電池自動車や水素ステーション機器への採用が進んでいます。

ステンレス鋼管規格選定における独自視点での検討要素

建築業界におけるステンレス鋼管規格選定では、従来の強度・耐食性評価を超えた多角的検討が求められています。特に環境負荷とライフサイクルコストの観点から、規格選定基準の見直しが進んでいます。

 

サスティナビリティ要素の考慮
ステンレス鋼管は理論上100%リサイクル可能な材料特性を持ちますが、規格別にリサイクル効率が異なります。薄肉のTP-D（SU管）は材料使用量削減効果が高く、建築物のLCA（ライフサイクルアセスメント）評価向上に寄与します。
デジタル化対応への配慮
IoT機器組み込みを想定した配管設計では、従来の圧力・温度条件に加え、センサー取り付け部の寸法精度がより重要になります。配管用ステンレス鋼管（JIS G 3459）の寸法許容差±0.5mm以内の精度は、スマートビルディング対応において優位性を発揮します。

 

地域特性を考慮した規格適用
沿岸部の建築物では塩害対策として316系ステンレスが標準的ですが、内陸部では304系でも十分な耐久性を確保できるケースが多く、規格選定による建設コスト最適化の余地が大きいのが実情です。

 

製造者・販売者の詳細な技術情報については以下の参考リンクが有用です。

 

日鋼ステンレス株式会社の配管規格情報
http://www.nikko-sus.co.jp/tool/kind.html
流体工業株式会社の技術資料（配管寸法詳細）
https://www.ryutai.co.jp/shiryou/pipe/sus-pipe.htm