太陽熱利用システム太陽光発電違いは仕組みと効率と建築用途

太陽熱利用システム太陽光発電違いは仕組みと効率と建築用途

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太陽熱利用システムと太陽光発電の違い

2つのシステムの主な違い
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エネルギー変換の違い

太陽熱利用システムは太陽の熱を直接利用し、太陽光発電は光を電気に変換します

エネルギー効率の差

太陽熱利用システムは40~60%、太陽光発電は7~18%の変換効率です

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導入費用の違い

太陽熱利用システムは20~90万円、太陽光発電は150~200万円が目安です

太陽熱利用システムと太陽光発電の最も大きな違いは、エネルギーの変換方法にあります。太陽熱利用システムは太陽の熱エネルギーを直接利用して水や空気を温めて給湯や暖房に活用する一方、太陽光発電は太陽の光を電気エネルギーに変換して家電製品などに利用します。
参考)太陽熱利用システムとは|仕組み・種類から太陽光発電との違いま…

エネルギー効率の面では、太陽熱利用システムが圧倒的に優れています。太陽熱利用システムのエネルギー変換効率は40~60%であるのに対し、太陽光発電は7~18%にとどまります。この効率の差は、太陽のエネルギーを直接熱として利用するか、電気に変換するかという根本的な仕組みの違いによるものです。
参考)太陽熱利用システムとは!? 太陽光ではなく太陽熱を使った再生…

導入費用についても両者には大きな差があります。住宅用の太陽熱利用システムの導入費用は20万~90万円程度ですが、太陽光発電システムは150万~200万円程度と、太陽熱利用システムの方が安価です。また、単位面積当たりの供給エネルギーは、太陽熱利用システムが600kWh/㎡であるのに対し、太陽光発電は130kWh/㎡と、太陽熱利用システムの方が少ない設置面積で済みます。
参考)太陽熱利用システム

太陽熱利用システムの仕組みと種類

太陽熱利用システムには、主に液体集熱式と空気集熱式の2種類があります。液体集熱式ソーラーシステムは、集熱器内の不凍液を太陽熱で温め、循環ポンプで蓄熱槽に送り込んで水を加熱する仕組みです。集熱器には平板型と真空管型があり、真空管型は水平設置が可能で200℃近くの高温集熱に有利ですが、製造技術が難しく高額になる傾向があります。
参考)太陽熱利用システムについて徹底解説【初心者向け】

空気集熱式システムは、集熱器で温められた空気を床下や室内に送り込み、暖房や給湯に利用します。温められた空気を蓄熱材に蓄積させることで室内の空気を暖め、熱交換器によって蓄熱槽内の水を温めることで給湯にも活用できます。夏季には住宅内の温まった空気を外部に排出し、夜間には涼しい外気を取り入れることで冷房費の削減も可能です。
参考)太陽光発電とソーラーシステムは違う?導入前に知っておきたい魅…

太陽熱利用システムのメリット

太陽熱利用システムの最大のメリットは、高い省エネルギー性と光熱費削減効果です。都の試算によると、集熱面積4㎡の太陽熱利用システムを戸建住宅に導入した場合、年間で都市ガス191立方メートル、LPガス88立方メートルの削減が可能で、CO2排出量にして435~528kg-CO2を削減できます。これは杉の木約30~40本分の年間CO2吸収量に相当します。
参考)太陽熱利用システム(太陽熱利用システムのメリット)

ランニングコストの削減効果も顕著です。従来の給湯機を利用している家庭が太陽熱利用システムを導入すると、年間2~5万円程度の節約が見込めます。長野県のような寒冷地では給湯量が増加するため、年間約5万円のランニングコスト削減が期待できます。初期投資との差額は約10年で回収できる計算になります。
参考)太陽熱利用システムって?種類や仕組み、メリットは?│株式会社…

設置面積が小さいことも大きなメリットです。太陽光発電システムが3kWで約20~30㎡の屋根面積を必要とするのに対し、太陽熱利用システムの集熱器は約4~6㎡で設置可能です。都内に多い屋根面積の狭い家にも設置でき、太陽光発電パネルとの併用も可能です。
参考)https://www.tokyo-co2down.jp/assets/action/efforts-renewable/what-taiyo/thermal-guide.pdf

太陽熱利用システムの建築用途

太陽熱利用システムは、給湯需要の多い建築物での導入が特に効果的です。業務用建築物としては、ホテル、病院、福祉施設、スポーツ施設、学校などが代表的な適用施設となります。これらの施設では、集熱面積60平方mの業務用太陽熱利用システムを導入すると、1台あたり年間約5千Lの原油節約に相当する効果が得られます。
参考)https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/attaka_eco/df/index.html

ホテルや病院では、強制循環式給湯システムが用いられることが一般的です。老人ホームや健康福祉センターでの給湯、プールの加温、ボイラー補給水の予熱などの用途に効果的で、環境保全の有効な手法として注目されています。業務用太陽熱利用システムの導入施設を分類すると、福祉施設や宿泊施設、スポーツ施設などで広く採用されています。
参考)https://www.obayashi.co.jp/chronicle/database/t36-2.html

建築設計においては、太陽熱集熱器を建築素材として活用し、建物外観に調和したエコロジカルで熱効率の高いシステムを構築することが重要です。集熱器に太陽電池を組み合わせたハイブリッドタイプも開発されており、ニーズや条件に応じた最適なシステム構築が可能になっています。
参考)https://www.juutakuseisaku.metro.tokyo.lg.jp/juutaku_seisaku/pdf/platform_10_bun01_b2.pdf

太陽光発電との併用による相乗効果

太陽光発電と太陽熱利用システムを併用することで、屋根を最大限に有効活用できます。PVT(太陽光と太陽熱の併用)システムは、一般の太陽光発電の設置面積で電力と温水を同時に作り出すことが可能で、ゼロエネルギー住宅を目指すシステムとして評価されています。2018年よりZEH住宅補助金に先進的再エネ熱利用設備の導入による加算補助が創設され、PVTが対象となりました。
参考)https://ssda.or.jp/wp-content/uploads/2024/07/JSES_koenkaisiryo_20220228.pdf

併用システムでは、太陽熱集熱器4~6㎡と太陽光発電パネルを同一屋根に設置する構成が一般的です。液体式太陽熱利用システムは集熱器と蓄熱槽が分離しているため、屋根への荷重負担が少なく、既存住宅への後付け設置や太陽光発電との併用が容易です。面積を大きくとらないため、太陽光発電パネルと組み合わせて設置できる柔軟性があります。
参考)太陽光熱利用システムとは?仕組みや種類、蓄熱できるメリットも…

ZEH補助金制度では、ZEH基準を満たす住宅に55万円、ZEH+基準を満たす住宅に90万円の補助金が支給されます。さらに、指定の太陽熱利用システムを追加導入することで補助金の加算が可能です。ただし、太陽熱利用システム単体での政府補助金は現在のところ設定されていないため、地方自治体の補助金制度を確認することが重要です。
参考)【令和7年度・2025年最新】まだ間に合う!ZEH住宅の補助…

太陽熱利用システム導入時の注意点

太陽熱利用システムの導入にあたっては、いくつかの制約事項を理解しておく必要があります。最大の課題は用途の限定性で、太陽光発電が電気として広範な用途に使用できるのに対し、太陽熱利用システムは給湯や冷暖房など熱を使用するものに限られます。そのため、給湯需要の高い建物でなければ最大限の効果を発揮できません。​
天候や立地条件による影響も考慮が必要です。太陽熱利用システムは太陽からの熱エネルギーに依存するため、日照時間が短い地域や天候不良時には充分な効果が得られない可能性があります。雨天などで集熱量が不足する場合は、補助熱源による加温が必要となります。​
液体集熱式システムでは水漏れや凍結のリスクがあるため、定期的なメンテナンスが重要です。初期導入費用は太陽光発電より安価ですが、部品交換や定期メンテナンスの累積費用を考慮すると、総コストが徐々に増加する点にも注意が必要です。年間メンテナンス費は1~3万円程度が目安となります。
参考)太陽熱温水器5つのデメリット|コスト・性能を徹底比較|ミライ…

建築事業者にとって太陽熱利用システムは、給湯需要の多い施設での省エネルギー化に有効な選択肢です。太陽光発電との違いを理解し、建物の用途や規模に応じて適切なシステムを提案することで、クライアントの光熱費削減とCO2排出削減の両立に貢献できます。

 

経済産業省資源エネルギー庁の太陽熱利用システム解説ページでは、システムの種類や仕組みについて詳しい情報が掲載されています
ソーラーシステム振興協会の業務用太陽熱利用システム設計・施工ガイドラインでは、建築用途別の具体的な設計指針が提供されています