

炭酸バリウム(BaCO3)は、炭酸イオンを含む水溶液にバリウムイオン(例:塩化バリウム水溶液)を加えると生成し、「難溶性の白色沈殿」として現れます。
この「白色」は、顔料のように色を発しているのではなく、固体粒子が光を散乱して白く見えることが基本です(粉体の粒が細かいほど白濁が強く見えます)。
建築現場の文脈だと、配管洗浄・水処理・試験的な水質確認などで、透明だった溶液が急に白く濁る現象として遭遇しやすいですが、その“白濁=沈殿発生”は「水に溶けにくい塩ができた」というサインです。
また、バリウム系の沈殿には似たものがあり、硫酸イオンが関与すると硫酸バリウム(BaSO4)も白色沈殿になります。
つまり、白色沈殿を見た瞬間に「炭酸バリウムだ」と決め打ちすると、硫酸塩系の沈殿(配管内スケール等)を見落とす危険があります。
参考)2族元素(アルカリ土類金属・Mg)の特徴・性質・反応など
現場では「白色=候補が複数」を前提に、後述の見分け手順までセットで覚えておくのが安全です。
教科書的にはBaCO3は白色沈殿ですが、実務では「真っ白」に見えないケースが出ます。
理由の一つは、沈殿の“粒の大きさ”や“凝集状態”で、光の散乱の仕方が変わり、白~乳白~灰白っぽく見えたり、濡れていると透明感が増して暗く見えたりする点です。
もう一つは混入物で、鉄さび(赤褐色系)・泥分・有機物・微粒子カーボンなどが少量でも混ざると、沈殿全体がくすんで「灰色」「薄茶」に寄ることがあります(色の原因がBaCO3そのものとは限りません)。
さらに紛らわしいのが、「白色沈殿=炭酸塩」という思い込みです。
参考)無機化学の色まとめ(イオン/化合物(沈殿)/ハロゲンなど)
炭酸塩の沈殿は白色が多い一方で、バリウムはクロム酸イオンと反応すると黄色のクロム酸バリウム(BaCrO4)沈殿を作ることが知られており、系内の陰イオン次第で色は変わります。
参考)金属イオンまとめ(色・沈殿・分離)
建築系の水回りでは、防錆剤・洗浄剤・混和剤など由来の成分が想定外に入り込むこともあるため、「白っぽい/黄っぽい」だけで断定せず、次の“見分け”まで進めるのが確実です。
参考)https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/513-77-9.html
炭酸バリウム(BaCO3)と硫酸バリウム(BaSO4)は、どちらも白色沈殿で外観だけでは区別しにくいことが指摘されています。
見分けの基本は「弱酸を加えたときの反応」で、炭酸塩は酸と反応して二酸化炭素(CO2)を発生しやすい一方、硫酸バリウムは極めて難溶で反応が進みにくい、という性質差を利用します。
実務向けに言い換えると、同じ白い沈殿でも、炭酸塩系なら酸で“シュワッと発泡”などの挙動が出やすいので、色+挙動の二段階で判定精度が上がります。
また、バリウム水溶液(バリタ水/水酸化バリウム水溶液)は空気中の二酸化炭素を吸収すると炭酸バリウムの白色沈殿を生じる、という性質が資料で説明されています。
参考)水酸化バリウム(スイサンカバリウム)とは? 意味や使い方 -…
この性質は「意図せず白濁が出た」ケースの原因追跡に有用で、例えば開放系タンクでアルカリ性のバリウム系溶液を扱うと、空気由来CO2だけで白い沈殿が出る可能性があります。
硫酸イオンが疑われる系(硫酸塩スケールや硫酸系薬剤の混入があり得る系)では、そもそもBaSO4も白く沈殿するため、工程・薬剤・水質の履歴とセットで判断するのが現場的には堅いです。
参考)中3化学【沈殿が生じる中和反応】
参考:炭酸バリウムと硫酸バリウムが「どちらも白色沈殿で見分けにくい」点と、識別の考え方(弱酸での挙動)
2族元素(アルカリ土類金属・Mg)の特徴・性質・反応など
現場で「白い沈殿の色が一定しない」問題は、化学の正誤というより“観察条件のブレ”で起きることが多いです。
再現性を上げる実務手順としては、次のように「見た目を整える」だけで誤判定が減ります。
- ろ過して固液分離し、沈殿を同じ白色のろ紙上で比較する(容器の色・背景の影響を切る)。
- 沈殿を少量の純水で再分散し、白濁の出方(速い沈降か、ふわっと残るか)を観察する(粒径・凝集の違いが出やすい)。
- 可能なら既知の白色沈殿(例:硫酸バリウムの生成条件)と並行で作り、見た目より“反応条件”で同定する。
炭酸バリウム自体の溶解性は非常に小さく、水にほとんど溶けないという物性情報が公開されています。
参考)513-77-9・炭酸バリウム, 99.99%・Barium…
この「溶けない」性質があるため、いったん出た沈殿は攪拌しても透明に戻りにくく、白濁が残って“色が濁って見える”状態が継続しがちです。
色の判断に頼り切らず、「沈殿が出た事実」「酸への反応」「工程履歴」の3点セットで運用すると、報告書や写真記録の説得力も上がります。
建築従事者の実務で本当に重要なのは、沈殿の“色当て”よりも、炭酸バリウムが有毒物質として扱われる点です。
製品情報では炭酸バリウムは「有毒である」旨が明記されており、外観が白い粉末でも、取り扱いは粉じん吸入・誤飲・皮膚付着を前提に厳重に考える必要があります。
厚労省系の「職場のあんぜんサイト」でも、炭酸バリウムは気道刺激性があることや、ヒトでの多数の症例報告(経口摂取事故例等)がある旨が示されています。
現場でありがちな落とし穴は、「白い沈殿=ただの無害なスケール」と誤認し、乾燥して舞った粉じんを吸ってしまうことです。
作業管理としては、少なくとも以下をルール化すると実害リスクを下げられます。
参考)https://www.kishida.co.jp/product/catalog/msds/id/1286/code/000-07112j.pdf
参考:炭酸バリウムの有害性・注意点(職場での取り扱いの基礎情報)
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/513-77-9.html