

炭酸鉛(PbCO₃)は鉛イオン(Pb²⁺)と炭酸イオン(CO₃²⁻)が反応することで生成される白色沈殿です。この反応式はPb²⁺+CO₃²⁻→PbCO₃で表され、化学の定性分析では鉛イオンの検出方法として広く知られています。炭酸イオンを加えると多くの金属イオンが沈殿しますが、その沈殿物はすべて白色を示すという特徴があります。
参考)金属イオンまとめ(色・沈殿・分離)
金属イオンの沈殿反応の詳細(理系ラボ)
金属イオンと各種試薬の反応による沈殿の色を網羅的に解説
建築分野では、鉛塩の冷水溶液に炭酸アンモニウムまたは炭酸ナトリウムを加えることで無色の結晶として得られる炭酸鉛が、顔料として利用されてきました。塩基性炭酸鉛(2PbCO₃・Pb(OH)₂)として知られる鉛白は、融点400℃で分解する白色固体として特徴づけられます。
参考)用途 – 日本鉱業協会 鉛亜鉛開発需要センター
沈殿の生成を速くするには、ガラス棒で試験管の内壁をこするという技術が用いられます。この白色の結晶性沈殿は、建築現場での塗料分析や古い建造物の修復作業において、材料の同定に重要な役割を果たしています。
参考)https://jpdb.nihs.go.jp/jp14/pdf/0057-1.pdf
鉛白(塩基性炭酸鉛)は古代から白色顔料として使用されてきた建築材料で、日本では「唐胡粉」として知られ、8世紀半ばの東大寺大仏殿天井彩色にも使用されていました。正倉院所蔵文書には彩色材料として記録が残されており、鉛白の方が他の白色顔料より良質だったことが示されています。
参考)鉛(Pb)−鉛中毒の歴史
古代ローマ時代のヴィトルヴィウスや中世のテオフィルスは、鉛板を酢酸蒸気に晒して鉛白を生成する方法を書き残しており、壺の底に酢を入れ上部に鉛板を置くことで白い顔料を生成していました。この製法は日本でも採用され、法隆寺金堂の壁画や高松塚古墳の壁画にも鉛白が使用されています。
参考)鉛白の作り方
鉛白の製品情報(中川胡粉)
現代における鉛白の製造方法と品質基準について
塗膜の上塗り及び下層に対する接着性が良く、亀裂の発生も少ないという特性は、鉛白の結晶が板状であり塗膜に層状に配列することによるものです。現代では99.998%という純度の高い電気鉛を使用し、電解液中に炭酸ガスを吹き込む電気分解法で製造されており、均質で白色度も高い顔料が得られています。
参考)鉛白 - Wikipedia
建築物に使用された炭酸鉛を含む塗料の剥離やかき落とし作業では、作業者の健康障害防止が重要な課題となります。鉛等有害物を含有する塗料の剥離作業を行う場合、塗料における鉛等有害物の使用状況を適切に把握した上で、鉛中毒予防規則等の関係法令を順守する必要があります。
参考)https://www.jaish.gr.jp/anzen/hor/hombun/hor1-55/hor1-55-24-1-0.htm
作業時の具体的な対策として、湿式による作業の実施が必須となります。隔離区域内で作業を行う場合は必ず湿潤化して行い、湿潤化が著しく困難な場合は同等程度の粉じん濃度まで低減させる方策を講じる必要があります。さらに隔離区域等内作業場には粉じんを集じんするため適切な除じん機能を有する集じん排気装置を設置しなければなりません。
鉛含有塗料の剥離作業における安全対策(厚生労働省)
鉛中毒予防規則に基づく具体的な作業手順と保護具の要件
作業者は電動ファン付き呼吸用保護具又はこれと同等以上の性能を有する空気呼吸器、酸素呼吸器若しくは送気マスクを着用する必要があります。建築物の発注者は、鉛等有害物を含有する塗料の使用状況に係る情報を施工業者に提示し、必要なばく露防止対策を講じさせることが望ましいとされています。
鉛白は有毒なため現代ではあまり利用されず、また変色することがあり、古典作品の顔の色が黒く変わっているのは鉛白の変色によるものです。湿度の高い日本では時間が経つと硫黄分と反応して黒変することがあり、このため鎌倉時代までに貝殻を使った白色顔料(胡粉)が工夫されました。
参考)http://www.kaguraoka.info/report/koshoku/koshoku3.html
現代の建築塗料では、鉛・クロムフリーのさび止め塗料が主流となっています。鉄骨建築物等の省工程・工期短縮用として、環境と人体にやさしい無鉛さび止めペイントが開発されており、従来の2回塗りが必要だった下塗塗料に対して1回で従来形の2回塗り分の膜厚を塗装できる製品も登場しています。
参考)https://www.shintopaint.co.jp/product/introduction/pdf/files/structure/color_sokkan_60.pdf
高純度亜鉛華(ZnO)の国産化成功により、毒性が問題となっていた鉛白(酸化鉛、PbO)に代わる白色顔料の量産化が実現しました。水性低VOC・低臭で鉛・クロムフリーの建築用塗料は、優れた付着力と透湿性を持ち、コンクリート、モルタル、各種ボード、各種旧塗膜、ビニールクロス面など幅広い適用範囲を持っています。
参考)https://asset.kansai.co.jp/uploads/products/decorative/fm/catalog_pdf/657.pdf
廃棄物の処理にあたっては、処理業者等に危険性・有害性を充分告知の上、処理を委託し、必要に応じて廃棄の前に可能な限り無害化、安定化及び中和等の処理を行う必要があります。
参考)http://www.showa-chem.com/MSDS/12073350.pdf
建築現場において炭酸鉛の存在を確認する際、鉛塩の溶液に希硫酸を加えると白色の沈殿が生じるという定性反応が活用されます。この簡易検出法は、歴史的建造物の修復や解体時の事前調査で重要な役割を果たしています。
金属イオンの定性分析では、それぞれ単独の金属イオン水溶液を作成し沈殿生成の状況を調べる方法が確立されており、銀イオン(Ag⁺)と鉛イオン(Pb²⁺)の区分が重要とされています。建築材料の詳細な分析には、X線回折分析やXAFS測定により生成鉱物の組成比を同定する高度な技術も用いられます。
参考)https://www.aichisr.jp/content/files/seikahoukoku/2025/5S1_202503030.pdf
炭酸鉛の形成メカニズムに関する研究論文(資源地質学会誌)
硫酸鉛鉱から白鉛鉱への変化プロセスの科学的分析
炭酸化に伴う鉛の不溶化因子の解明研究では、PbO、PbCl₂、PbSO₄からPbCO₃への炭酸化反応について、反応ギブスエネルギーに着目した検討が行われています。pH依存性試験により、難溶解性とされる有機物態や酸化物態の鉛も溶解し、比較的溶解性が高い炭酸塩態の鉛がアルカリ条件では溶出試験前より増加する傾向が見られることが明らかになっています。
参考)http://library.jsce.or.jp/jsce/open/00074/2008/52-07-0044.pdf
建築材料としての鉛化合物は、土壌汚染事例でも問題となっており、鉛及びその化合物が土壌溶出量基準(0.01 mg/L)及び土壌含有量基準(150 mg/kg)を超過する事例が重金属類中で最も多いとされています。この原因の大部分は工場・事業場での使用履歴によるものですが、建築解体時の適切な管理が求められる背景となっています。
参考)https://www.oyo.co.jp/pdf/technology_annual/2013_01.pdf

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