

低モジュラスシーリング材は、引っ張り変形させたときに元に戻ろうとする力(モジュラス)が小さいシーリング材を指し、柔らかく良く伸びることが大きな特徴です。モジュラスの区分は日本シーリング材工業会などで整理されており、一般に50%伸長時の応力が一定値未満のものを低モジュラス、それ以上を中・高モジュラスとして分類します。
低モジュラス品は、ムーブメントの大きい目地や幅の広い目地に適しており、伸びにより動きに追従しつつ、戻ろうとする力が小さいため被着体への負担も抑えられます。結果として、窯業系サイディングやALCボード外壁など、温度・湿度変化で動きが出やすい部位では、低モジュラスシーリング材が事実上の標準仕様になっている現場も少なくありません。
「モジュラスの高低はどのように区分されているのか」「LMという記号は何を意味しているのか」といった疑問は、規格票を一度しっかり読み込んでおくことで、現場ごとの材料選定が格段にスムーズになります。特に初めて扱う製品では、カタログ上の短い説明だけで判断せず、50%モジュラス値や耐久区分、設計伸縮率などを併せて確認しておくと、後のクレームリスクを減らせます。ykkap+3
低モジュラスシーリング材は、ALC板や窯業系サイディングのように、目地幅が大きく動きも出やすい外装材との相性が良く、柔軟性と伸びによってひび割れを抑えやすい材料です。特にALC板や軽カル板など表面強度の低い被着体では、内部応力が小さい低モジュラスを用いることで、目地の動きが被着体側の欠けや割れに直接つながりにくくなります。
一方で、鉄筋コンクリート造など躯体の動きが小さい部分では、高モジュラス材を用いた方が形状保持に優れ、不要な変形を抑えられるケースもあります。そのため、同一建物内でも「サイディング外壁の目地は低モジュラス」「ほとんど動かないRC躯体の一部は高モジュラス」といった使い分けをすることが、長期耐久性とコストのバランスを取るうえで現実的です。
| 部位・躯体 | 動きの程度 | 推奨モジュラス | ポイント |
|---|---|---|---|
| 窯業系サイディング外壁目地 | 大きい | 低モジュラス | 伸びと追従性を優先し、割れや剥離を抑える。 |
| ALC板・軽カル板まわり | 大きい | 低モジュラス | 内部応力を小さくして、表面強度の低い板材を保護する。 |
| サッシまわり外装目地 | 中程度 | 低〜中モジュラス | サッシ枠や仕上げの仕様に応じて、必要な追従性と形状保持のバランスをとる。 |
| RC造で動きの少ない目地 | 小さい | 中〜高モジュラス | 剛性を高め、形状が崩れないようにする。 |
低モジュラスシーリング材には、変成シリコーン系やシリコーン系、ポリサルファイド系など複数の系統があり、それぞれ耐候性や塗装適合性、作業性が異なります。変成シリコーン系は、窯業系サイディングやALC、コンクリート二次製品などとの接着性に優れ、上から水性・溶剤系塗装を行いやすいことから、外装改修・新築ともに広く採用されています。
シリコーン系は耐熱・耐寒・耐候性に非常に優れ、長寿命が期待できる一方で、仕上げ塗装との相性や汚染・ホコリ付着のしやすさに注意が必要であり、低モジュラスタイプでも表面にホコリがつきやすい傾向が指摘されています。また、JIS区分や「LM」「9030」「8020」といった表記は、モジュラスや耐久性、試験条件を示しており、同じ低モジュラスでも性能レンジは製品ごとに異なるため、実務ではカタログ値だけでなくJIS適合区分も併せて確認することがポイントです。
低モジュラスシーリング材は柔らかく追従性に優れる一方で、その柔らかさゆえに「目地形状やバックアップ材の入れ方が甘いと、過度に変形して美観や耐久性を損なう」という落とし穴があります。特に幅の広い目地では、設計伸縮量を考えた断面設計(深さと幅の比率)とバックアップ材の適切な配置が重要で、柔らかいからといって充填量任せにすると、局所的な応力集中やたるみを招きかねません。
また、低モジュラスシーリング材の中には、表面硬化が比較的早く、ほこりがつきやすいものもあるため、周囲環境を含めた施工タイミングに注意が必要です。塗装仕上げを前提とする場合は、メーカーが示す塗装可能時間や適合塗材の情報を確認し、塗り替え時期の想定を含めて仕様を決めることで、後からの塗膜割れや付着不良を減らすことができます。
低モジュラスシーリング材の性能は、適切な材料選定と施工だけでなく、その後の維持管理や改修タイミングにも大きく左右されます。外装シーリングは紫外線や温度変化、風雨にさらされ続けるため、早いものでは10年前後からひび割れやチョーキング、剥離が見られることもあり、表面変化を見逃さない定期点検が重要です。
改修時には、既存のシーリング材の系統(変成シリコーン系か、シリコーン系かなど)を把握し、塗り替え・打ち替えのどちらが適切かを検討する必要があります。近年では、既存の低モジュラス2成分形シーリングと同等の物性を持つ1成分形シリコーンが登場しており、調達リスクや施工性を考慮して「改修時には別系統の低モジュラス材に切り替える」という選択肢も現実的になってきました。
変成シリコーン系低モジュラスシーリング材の種類やJIS区分、代表的な用途・施工上の注意点については、一般社団法人日本シーリング材工業会の技術資料が体系的に整理されています。
参考)変成シリコーン系|日本シーリング材工業会
変成シリコーン系シーリング材のJIS区分と代表製品一覧(低モジュラスF-20LM-8020、F-25LM-9030など)の参考リンク