都市計画法とは何か基本から用途地域制限まで

都市計画法とは何か基本から用途地域制限まで

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都市計画法とは何か

📋 都市計画法の概要
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都市の健全な発展を目指す法律

都市計画法は、無秩序な開発を防ぎ、計画的なまちづくりを実現するための基本法です

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都市計画区域の指定

開発を行う場所を明確化し、市街化区域と市街化調整区域に区分します

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用途地域と建築制限

地域ごとに建物の用途や規模を制限し、良好な住環境を維持します

都市計画法は1968年に制定された法律で、都市の健全な発展と秩序ある土地利用を目的としています。この法律は、日本全国の都市における「どこに何を建てられるか」を規制・誘導するための基礎的な法制度として機能しており、不動産業務に携わるすべての専門家にとって必須の知識となっています。都市計画法の理解が不動産サービス業の品質と信頼性を左右すると言っても過言ではありません。
参考)https://marketing.ipros.jp/contents/basics/ind_prse_32/

都市計画法の大きな柱は、都市計画区域の指定と用途地域の設定、建築制限や開発行為の許可制度、公共施設の整備計画の策定という3点です。これにより、無秩序な開発や乱開発を防ぎ、交通網や住環境、商業施設などがバランスよく配置された都市構造が構築されます。不動産業に関わるすべての物件は、この都市計画の枠組みの中で扱われるため、その内容を正確に理解することが求められます。​
都市計画法は、計画的な街づくりを進めるために、場所の指定、計画内容の決定、実施という3つのステップに沿って規定されています。まず都市計画区域を定め、次にその区域内でどのような街づくりを行うかの具体的なプランを決定し、最後に開発許可制度などを通じてそれを実現していく流れとなっています。この体系的なアプローチにより、持続可能な都市づくりが実現されています。
参考)https://takken-success.info/legal-restrictions/urban-planning-law-basics/

都市計画法における都市計画区域の基本構造

 

 

 

都市計画区域とは、今後の整備・開発・保全が必要な区域として、市町村や都道府県が定めた地域のことを指します。計画的な開発を行うためには、まずどこでその計画を実施するのか、つまり対象となる場所を明確にする必要があります。都市計画区域は、これから大規模なリフォームや新築を計画する「家の敷地」をまず決めるようなものと理解すると分かりやすいでしょう。​
都市計画区域は、市街化区域と市街化調整区域の2つの区分に分けられます。市街化区域は、すでに市街地を形成している区域及びおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域とされています。一方、市街化調整区域は、市街化を抑制すべき区域として定められており、積極的な整備・開発を推進する市街化区域とは対照的な性格を持っています。
参考)https://www.hajime-kensetsu.co.jp/livelegarden/column/cost/post-1204/

国土交通省|都市計画区域の詳細情報
市街化調整区域では、緑地や河川、農地などの自然環境や、安全で快適な住環境を守ることが重視されており、原則として新たな開発は認められず、住宅の建築などにも制限があります。この区分は、都市計画において自然環境の保全と市街地の適切な発展をバランスよく実現するために重要な役割を果たしています。
参考)https://iqrafudosan.com/channel/shigaikakuiki-choseikuiki

都市計画法における用途地域と土地利用制限

用途地域は、都市計画法第8条第1項第1号に規定されている地域地区の一つで、建築物の用途を制限することで、住宅地、商業地、工業地などの土地利用を適切に配分し、良好な都市環境を形成することを目的としています。市街化区域では、必ず用途地域を定めることとされており、これにより地域ごとに建物の用途や規模が明確に制限されます。
参考)https://keiyaku-watch.jp/media/hourei/toshikeikakuho/

用途地域は、住居系、商業系、工業系を合わせて13種類に分類されています。住居系には、第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、田園住居地域、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域が含まれます。商業系には近隣商業地域と商業地域があり、工業系には準工業地域、工業地域、工業専用地域が存在します。
参考)https://suumo.jp/article/oyakudachi/oyaku/sumai_nyumon/other/youtochiiki/

各用途地域には、建築可能な建物の種類、建ぺい率、容積率などが細かく定められています。例えば、第一種低層住居専用地域では、建ぺい率の上限が30%、40%、50%、60%のいずれかで、容積率の上限が50%、60%、80%、100%、150%、200%のいずれかに設定されています。商業地域では建ぺい率の上限が80%、容積率の上限が最大1000%まで認められるなど、用途地域によって建築の自由度が大きく異なります。
参考)https://flie.jp/magazine/estate/bcr-far/

用途地域分類 建ぺい率の上限 容積率の上限 主な用途
第一種低層住居専用地域 30、40、50、60% 50~200% 低層住宅専用
近隣商業地域 60、80% 200~400% 近隣の商業施設
商業地域 80% 200~1000% 商業・業務施設
工業専用地域 30、40、50、60% 200~400% 工業専用

都市計画法における建ぺい率と容積率の制限

建ぺい率とは、敷地面積に対する建築面積の割合を示す指標です。例えば、132㎡の敷地面積に66㎡の建築面積の建物を建てた場合、その建ぺい率は50%となります。建ぺい率は、市街地環境や防災といった観点から、敷地に占める建築面積の割合を制限するために設定されています。建ぺい率の限度は、用途地域の指定がある場合、用途地域に応じた建築基準法の規定の範囲で、都市計画が定める数値によることとされています。
参考)https://www.token.co.jp/estate/apartment-management-encyclopedia/legal-affairs/03-05/

容積率は、敷地面積に対する建物の延べ床面積の割合を示す指標で、建物の高さを制限する役割を果たしています。100㎡の土地があり、その土地の容積率が200%であった場合、延べ床面積200㎡までの建物を建築することが可能です。容積率も用途地域種別ごとに上限が設定されており、地域の特性に応じた建物の規模が規制されています。
参考)https://www.dandanhome.co.jp/realestate/3046/

建ぺい率と容積率は、都市計画法や建築基準法で地域ごとに上限が定められており、建物の高さや大きさを制限するものです。これらの制限により、日照や通風の確保、火災時の延焼防止、良好な景観の維持など、快適な都市環境が実現されています。不動産従事者は、物件提案や開発判断を行う際に、これらの制限を正確に理解し、顧客に適切に説明することが求められます。​
用途地域の指定のない区域内の建築物については、都道府県都市計画審議会の議を経て定める数値により建ぺい率が決定されます。自分が取り扱う物件の用途地域は、市区町村の都市計画課で確認することが可能で、各自治体のウェブサイトでも簡単に確認できます。​

都市計画法における開発許可制度の仕組み

開発許可制度は、都市計画区域内で一定規模以上の開発行為を行う際に、都道府県知事の許可を必要とする制度です。開発行為とは、主として建築物の建築、または特定工作物の建設を目的として行う土地の区画形質の変更のことを指します。区画形質の「区画」の変更とは道路や水路を新設・廃止・移動することで土地の区画を変更すること、「形」とは土地を盛ったり削ったりして形状を変更すること、「質」とは農地や山林などの土地の用途を宅地に変更することを意味します。
参考)https://magazine.zennichi.or.jp/re-notary/20782

開発許可が必要となる面積の基準は、都市計画区域の区分によって異なります。市街化区域では1,000㎡以上(首都圏・近畿圏・中部圏の一定の区域では500㎡以上)の開発行為に許可が必要です。非線引き都市計画区域および準都市計画区域では3,000㎡未満、都市計画区域外では10,000㎡未満の開発行為には許可が不要となっています。ただし、市街化調整区域は面積に関する除外規定がなく、どんな小さな開発行為でも開発許可が必要なことに注意が必要です。
参考)https://iqrafudosan.com/channel/kaihatsukyoka-unnecessary

開発許可の手続きは、事前準備、周辺住民への周知、開発計画事前協議、各都道府県知事への申請という流れで進みます。事前準備では、エリアや事業が開発に適しているかを調査し、適切な事業計画などを設計します。周辺住民への周知では、開発行為についてその目的や内容などを近隣住民へ説明するため、説明会の開催や開発予定標識の設置を行い、開発予定標識は申請の14日前までに設置が必要です。
参考)https://www.senryakusouko.com/column/knowledge/urbanization-control-area-development-permit

国土交通省|開発許可制度の詳細ガイド
申請時には、開発行為に関する設計図、工事施工者に関する書類、資金計画に関する書類、公共施設管理者・関係権利者の同意書、立地基準に関する書類などの添付書類が必要です。添付書類や記載方法は各都道府県によって異なる場合があるため、事前に相談しながら準備することが推奨されます。
参考)https://takken-success.info/legal-restrictions/takken-kaihatsu-kyoka-tetsuduki/

都市計画法の最新改正と災害リスク対策(実務への影響)

近年の頻発・激甚化する自然災害に対応するため、令和2年6月に都市計画法の一部が改正され、令和4年4月1日から施行されました。この改正により、市街化調整区域における災害リスクが高いエリアにおいて行う開発行為等が原則として認められなくなりました。災害危険区域等(災害レッドゾーン)における開発の原則禁止が強化され、自己の居住用住宅を除く開発行為については、災害レッドゾーンを区域に含むことができなくなっています。
参考)https://www.etod.co.jp/article/blog/97

改正前は、都市計画法第33条第1項第8号の規定による規制対象は、自己用外の施設(貸事務所等)の建築等の用に供する目的で行う開発行為とされていました。しかし、改正により、新たに自己の業務用施設(店舗等)の建築等の用に供する目的で行う開発行為がこの規制の対象に追加されることとなりました。これにより、自己の居住の用に供する住宅の建築等の用に供する目的で行う開発行為以外の開発行為は、原則として災害危険区域等を区域に含むことができなくなっています。
参考)https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/kenchiku_kaihatsu/jyutaku/kaihatsu/r4_kaisei0401

この法改正は、気候変動により増大する水災害リスクに対して、堤防整備等の水災害対策の推進に加えて、土地利用や建築物の構造の工夫、避難体制の構築など、防災の視点を取り込んだまちづくりの推進を目的としています。不動産従事者は、取引物件が災害リスクの高いエリアに該当するかどうかを事前に確認し、開発許可の取得可能性や建築制限について顧客に正確に説明する必要があります。
参考)https://www.town.ogawa.saitama.jp/gyosei/sosiki/13/5/1/1301.html

💡 実務での注意点
市街化調整区域での開発を検討する際は、災害ハザードマップを必ず確認し、災害レッドゾーンに該当しないかをチェックすることが重要です。また、既存建築物が災害レッドゾーン外の安全な場所に移転する場合には開発許可等が可能となる特例措置も設けられているため、このような救済措置についても理解しておくことが実務上有益です。
参考)https://www.pref.nagano.lg.jp/toshikei/infra/kensetsu/kaihatsu/tokeihoukaisei.html

開発許可制度の改正により、不動産業務における調査項目が増加し、より慎重な対応が求められるようになっています。立地適正化計画が導入されることで、災害リスクが高い地域における不動産取引には特別な注意が必要となり、安全性向上の施策が地域の不動産業務に大きな影響を与えています。不動産従事者は、これらの法改正の内容を常に把握し、顧客に対して適切なアドバイスを提供することが求められます。
参考)https://chiou.jp/toshisaisei/

 

 

 

 


よくわかる都市計画法 第二次改訂版