塗装工事業許可の資格と取得要件を完全解説

塗装工事業許可の資格と取得要件を完全解説

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塗装工事業許可の資格と取得要件

無資格でも実務経験10年あれば、あなたは専任技術者になれます。


🎨 この記事の3つのポイント
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専任技術者の2つのルート

国家資格ルートと実務経験10年ルートの両方で専任技術者になれます。資格がなくても許可取得は可能です。

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許可取得に必要な財産的基礎

一般建設業許可では500万円以上の自己資本または預金残高が必要です。この金額を下回ると申請が却下されます。

⚠️
無許可施工の法的リスク

500万円以上の塗装工事を無許可で請け負うと、3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科される可能性があります。


塗装工事業許可とは何か・対象となる工事の種類

塗装工事業の建設業許可とは、建設業法に基づいて国土交通大臣または都道府県知事から交付される、塗装工事を請け負うための公的な認可です。建設業法では、500万円(税込)以上の工事を請け負う場合には必ず建設業許可が必要と定められています。つまり、許可なしに請け負える塗装工事は500万円未満に限られるということです。


塗装工事業の許可が対象とする工事の種類は、「塗装工事」「溶射工事」「ライニング工事」「布張り仕上工事」「鋼構造物塗装工事」「路面標示工事」の6種類です。外壁塗装や屋根塗装だけが対象と思われがちですが、実際は鉄骨構造物への防錆塗装や道路の白線引きも含まれます。


たとえば、マンションの大規模修繕における外壁塗装工事は、工事費が数百万円〜数千万円規模になることが多く、この規模になると許可なしでは受注できません。500万円という金額は、ペンキ・塗料代・足場代・人件費すべてを含む請負金額で判断されます。ここは基本です。


また、建設業許可には「一般建設業許可」と「特定建設業許可」の2種類があります。発注者から直接受注した1件の工事で、下請契約の総額が4,500万円(建築一式工事の場合は7,000万円)以上となる場合は特定建設業許可が必要です。通常の塗装工事業者が取得するのは一般建設業許可が大半ですが、大手ゼネコンの元請として大型案件を手がける場合は特定建設業許可が必要になることがあります。
























区分 一般建設業許可 特定建設業許可
対象 下請総額4,500万円未満の工事 下請総額4,500万円以上の工事
財産要件 自己資本500万円以上 or 500万円以上の預金残高証明 純資産合計2,000万円以上など厳しい基準
専任技術者要件 一定の資格または10年以上の実務経験 1級資格者または指導監督的実務経験2年以上


塗装工事業許可に必要な専任技術者の資格要件

塗装工事業の許可取得において、もっとも重要な要件の一つが「専任技術者」の設置です。専任技術者とは、その営業所に常勤し、技術上の管理を行う責任者のことです。資格が条件です。


一般建設業許可における専任技術者になるためには、以下のいずれかを満たす必要があります。



  • 🎓 国家資格ルート:1級塗装技能士または2級塗装技能士(合格後3年以上の実務経験が必要)の資格保有者

  • 📚 指定学科卒業ルート:土木工学・建築学・機械工学などの指定学科を卒業後、大学・高専卒で3年以上、高校卒で5年以上の実務経験を持つ者

  • 🏗️ 実務経験ルート:学歴・資格に関わらず、塗装工事に関する10年以上の実務経験を持つ者


意外に知られていないのが、2級塗装技能士は「合格後3年以上の実務経験」がなければ専任技術者になれないという点です。試験に合格した翌日から使えるわけではありません。この3年という待機期間を見落として、許可申請に失敗するケースが実際に存在します。


特定建設業許可の場合はさらに厳しく、1級塗装技能士などの1級資格保有者、または元請として4,500万円以上の工事で2年以上の指導監督的実務経験が必要です。2級資格の実務経験では特定建設業許可の専任技術者にはなれません。厳しいところですね。


なお、1級塗装技能士の試験は、学科試験と実技試験で構成され、受験資格として7年以上の実務経験(2級合格者は2年以上)が求められます。試験は各都道府県の職業能力開発協会が実施しており、年に1回の実施が基本です。


参考:技能検定制度の概要(厚生労働省)
厚生労働省:技能検定制度について(受験資格・試験内容の詳細確認に有用)


塗装工事業許可の経営業務管理責任者と実務経験の証明方法

許可要件のなかで、専任技術者と並んで重要なのが「経営業務管理責任者(経管)」の設置です。経管とは、建設業の経営について一定の経験を持つ役員等のことで、営業所に常勤している必要があります。これも原則です。


経営業務管理責任者になるための主な要件は次の通りです。



  • 📌 許可を受けようとする建設業(塗装工事業)について、5年以上の経営業務の管理責任者としての経験

  • 📌 許可を受けようとする建設業に関して、経営業務管理責任者に準ずる地位(取締役など)で6年以上の経験

  • 📌 建設業(業種を問わず)について、6年以上の経営業務の管理責任者としての経験


問題になるのが、この「経営業務の管理責任者としての経験」をどうやって証明するかです。在籍していた会社が発行した証明書と、当時の請負契約書・注文書・工事台帳などの書類が必要になります。


10年以上前の書類を揃えるのは容易ではありません。特に、以前勤めていた会社がすでに廃業している場合、証明書類の取得は非常に困難です。こうした場合は、市区町村に保存されている法人の閉鎖登記簿謄本や、厚生年金加入記録(ねんきん定期便)などを代替証拠として活用する方法があります。


実務経験の証明においては、工事1件ごとの契約書・注文書・請求書・通帳記録のセットが最も信頼性が高い証拠とされています。これが揃わない場合、都道府県によっては確認調査が厳格になることもあります。都道府県ごとに必要書類が若干異なるため、事前に申請先の窓口に確認することが欠かせません。


都道府県の建設業担当窓口への事前相談は無料で対応している場合がほとんどです。申請前にぜひ活用しましょう。


塗装工事業許可の申請手続きと費用・更新期限

建設業許可の申請先は、2つの都道府県以上に営業所を持つ場合は国土交通大臣への申請、1つの都道府県のみの場合は知事への申請となります。塗装工事業者の大多数は、1都道府県内のみで営業していることが多いため、知事許可が一般的です。つまり申請先は都道府県庁ということです。


申請にかかる費用(法定手数料)は次の通りです。



















区分 新規申請 更新申請
知事許可(一般) 9万円 5万円
大臣許可(一般) 15万円 5万円


建設業許可の有効期間は5年間です。期限が切れる30日前までに更新申請を行わなければ、許可は失効します。更新を忘れると、5年かけて実績を積んだ許可が無効になってしまいます。期限には注意が必要ですね。


申請書類は都道府県ごとに様式が異なる場合がありますが、主な書類は以下の通りです。



  • 📄 建設業許可申請書

  • 📄 工事経歴書(直近5年分)

  • 📄 財務諸表(直前3年分)

  • 📄 専任技術者の資格証明書または実務経験証明書

  • 📄 経営業務管理責任者の経歴書

  • 📄 登記事項証明書(法人の場合)

  • 📄 納税証明書(消費税・法人税等)

  • 📄 社会保険加入確認書類


2020年10月の建設業法改正以降、社会保険(健康保険・厚生年金・雇用保険)への加入が建設業許可の要件として明確化されました。未加入の場合は許可が下りません。これは意外と見落とされがちな要件です。


参考:国土交通省による建設業許可申請の手引き
国土交通省:建設業許可申請・変更の手引き(申請様式・添付書類の公式情報)


塗装工事業許可を持つ一人親方・個人事業主が見落としやすい独自の落とし穴

一人親方や個人事業主が塗装工事業の許可を取得するケースは増えていますが、法人と比べて特有のリスクが存在します。これは独自の視点です。


最も多いトラブルが「専任技術者と経管を同一人物が兼務する場合の常勤証明」です。個人事業主が一人で経管と専任技術者を兼ねること自体は認められています。問題は、複数の現場を飛び回る一人親方が「常勤」の証明を求められたときです。常勤とは、原則として週5日・1日8時間程度の勤務を意味し、申請先によっては健康保険証・出勤簿・賃金台帳の提示を求められることがあります。



  • ⚠️ 別の会社にも在籍している場合(ダブルワーク):原則として専任技術者・経管にはなれない

  • ⚠️ 他業種での兼業(飲食店経営等):常勤性が認められない可能性がある

  • ⚠️ 個人事業主が法人成りする際:個人許可は引き継げず、法人として新規申請が必要


特に見落とされがちなのが「個人事業主が法人成りするとき」の問題です。個人として取得した建設業許可は法人に引き継ぐことができません。法人設立後に改めて新規申請が必要となり、その間は許可なしの状態になります。個人許可と法人許可は別物と考えてください。これだけ覚えておけばOKです。


法人成りを検討している一人親方の場合、法人設立のタイミングと許可申請のタイミングをうまく調整することが重要です。具体的には、法人設立後すぐに建設業許可申請を行い、許可が下りるまでの期間(標準処理期間は30〜45日程度)は500万円以上の工事を受注しないようにスケジュール管理する必要があります。


また、個人事業主が許可を取得した後に廃業届を出してしまうと、その時点で許可も失効します。税務上の理由で廃業届を出したいケースがあっても、建設業許可との兼ね合いを行政書士に相談してから動くことをおすすめします。


行政書士への相談費用は、初回無料相談を設けている事務所も多く、申請代行を依頼した場合の報酬相場は10〜20万円程度です。書類準備の手間と許可取得の確実性を考えると、専門家への依頼は費用対効果が高い選択肢です。


参考:全国建設業協会によるガイドライン
全国建設業協会:建設業に関する各種法令・手続きの実務情報(会員向け情報含む)