
TS継手の寸法体系は、JIS K 6743規格により厳密に定められており、呼び径に対応した外径(D)、肉厚(t)、高さ(H)の関係が規格化されています。
呼び径13mmから150mmまでの標準寸法を表にまとめると以下のようになります。
呼び径 | 外径D(mm) | 肉厚t(mm) | 高さH(mm) |
---|---|---|---|
13 | 24.0 | 3.0 | 36 |
16 | 29.0 | 3.5 | 43 |
20 | 33.0 | 3.5 | 50 |
25 | 40.0 | 4.0 | 58 |
30 | 46.0 | 4.0 | 65 |
40 | 57.0 | 4.5 | 82 |
50 | 70.0 | 5.0 | 96 |
特に注目すべきは、呼び径が大きくなるにつれて肉厚も段階的に増加している点です。これは圧力負荷や構造強度を考慮した設計となっており、呼び径30mm以下では肉厚3.0-4.0mm、40mm以上では4.5mm以上を確保しています。
また、受口部の共通寸法として、内径d1とテーパー比1/Tが規定されており、呼び径13mmでは内径18.40mm(許容差±0.20mm)、テーパー比1/30となっています。このテーパー設計により、管の挿入時に段階的に締まっていく構造を実現し、確実な接合を可能にしています。
製造メーカーによる若干の仕様差はありますが、JIS規格品であれば基本寸法は統一されており、異なるメーカー間での互換性も確保されています。
TS継手の寸法許容差は、施工品質と接合信頼性に直結する重要な要素です。JIS K 6743規格では、各寸法に対して厳格な許容差が設定されています。
外径Dの許容差は呼び径により異なり、以下のように規定されています。
高さH寸法の許容差は全サイズ共通で+5/-1mmとなっており、これは施工時の位置決めや配管レイアウトに影響する重要な数値です。
内径d1の許容差は±0.20~±0.25mmと非常に厳しく設定されており、これは管の挿入具合と接着剤の浸透性に大きく影響します。許容差が大きすぎると接着不良を引き起こし、小さすぎると挿入困難や破損の原因となるため、この数値設定は長年の実績と技術検証に基づいています。
差し込み深さℓについては、呼び径100Aの場合で84mmが規格値とされており、施工要領では接着剤なしの状態での差し込み位置(ゼロポイント)から30mm以上の挿入が求められています。
これらの許容差は、材料の熱膨張係数、製造工程での収縮、経年変化を考慮して設定されており、実際の現場での温度変化や施工環境の違いにも対応できる設計となっています。
TS継手(硬質ポリ塩化ビニル管継手)とHI継手(耐衝撃性硬質ポリ塩化ビニル管継手)は、基本的な寸法体系は共通していますが、材質特性と用途に応じた選定が重要です。
両継手の寸法比較を行うと、外径D、肉厚t、高さHの基本寸法はほぼ同一ですが、HI継手では耐衝撃性向上のための材質改良により、以下の特徴があります。
材質による違い:
使用圧力と温度範囲:
選定基準のポイント:
製造メーカー各社の規格を比較すると、積水化学のエスロンシリーズでは呼び径13mmのTSチーズで外径24mm、高さ36mmとなっており、これはJIS規格値と完全に一致しています。
施工面での選定では、HI継手の方が若干柔軟性があるため、配管の熱伸縮や地盤沈下に対する追従性が高く、長期耐久性の観点からも優位性があります。ただし、材料コストは約1.2~1.5倍となるため、設計段階での適切な使い分けが重要です。
TS継手の施工において最も重要なのは、正確な差し込み深さの管理と適切な接着剤の使用です。実際の現場では、規格上の差し込み寸法と実際の施工寸法に微妙な違いが生じることが多く、この理解が施工品質を左右します。
差し込み深さの実測値:
呼び径100Aの場合、規格上の奥までの差し込み寸法は84mmですが、実際の施工では以下の要因により調整が必要です。
施工要領における推奨手順。
温度による影響:
気温5℃以下では接着剤の硬化時間が延長されるため、保持時間を2倍程度に延長する必要があります。逆に35℃以上では硬化が早まるため、塗布から挿入までの時間を短縮(10秒以内)することが重要です。
接着不良の防止策:
これらの施工要領を遵守することで、JIS規格に適合した確実な接合品質を確保できます。
TS継手には多様な形状があり、それぞれ特有の寸法特性と最適な用途があります。形状別の寸法設計には、流体力学的配慮と施工性の両面が考慮されています。
ソケット(直管継手):
最も基本的な形状で、長さL寸法が重要なパラメータとなります。
長さ寸法の許容差は±4.0mmと比較的緩やかで、これは配管の熱伸縮代を考慮した設計です。
エルボ(曲がり継手):
90度曲がりが標準で、曲率半径は呼び径の1.5倍を基準として設計されています。これにより圧力損失を最小限に抑制し、乱流の発生を防いでいます。
チーズ(分岐継手):
3方向の接続が可能で、主管と分岐管の呼び径が異なる異径チーズも豊富に用意されています。
分岐部の寸法設計では、主管の流れへの影響を最小化するため、分岐角度と内部形状が最適化されています。
レデューサー(径違い継手):
異なる呼び径の管を接続する継手で、内部テーパー角度は通常7~15度に設定されています。急激な径変化による圧力損失と乱流を防ぐための配慮です。
実用的な選定指針:
これらの形状別特性を理解することで、配管システム全体の効率性と信頼性を向上させることができます。特に金属加工現場では、切削油や冷却水の循環システムにおいて、適切な継手選定が生産効率に直結するため、寸法特性の把握は極めて重要です。
水道用硬質ポリ塩化ビニル管継手の詳細規格について
https://kikakurui.com/k6/K6743-2016-01.html