
ウレタン塗装は「下地八割、塗り二割」と言われるほど前準備が肝心。
・研磨は#240→#320→#400と番手を上げることで毛羽を抑え、吸い込み斑を防ぐ。
・脱脂にはシリコンオフを使用し、最後に無垢材の場合は含水率12%以下を確認。
・プライマーは素材別に「金属用エポキシ」「木部用ウレタン」と使い分け、膜厚10µm程度を均一に。
作業環境を整えるだけで付着強度が1.5倍に向上したという国内試験データも存在し、職人ほど「掃除と養生」に時間を割く。
素材 | 推奨プライマー | 要乾燥時間 |
---|---|---|
アルミ | 2液エポキシ | 20℃/60分 |
木材 | 1液速乾型ウレタン | 20℃/30分 |
FRP | アクリルウレタン混合 | 20℃/45分 |
細部にこだわる職人は、指先で表面をなでて「キュッ」と音が出るまで磨き上げる。静電気ブローで粉じんを飛ばす最終工程も忘れずに行いたい。
ウレタン塗料は温度25℃・湿度50%を基準に化学反応で硬化する仕組み。
・20℃を下回ると反応速度が半減し、ベタつき残存の原因に。
・湿度80%超では炭酸ガスと反応し「ブリスター(気泡)」が発生。
・赤外線ヒーターは膜内温度を均一にし、皮張り乾燥を防ぐ。
工場塗装ではコンベア炉を30分/60℃で通過させ、24h自然放置よりも曲げ衝撃値が25%向上することが確認されている。
⏳乾燥ステージの目安
・指触乾燥:30〜40分
・硬化乾燥:2〜3時間
・完全硬化:7日(膜厚50µm基準)
メタルハライドランプ併用で硬化を促進する裏ワザも存在。熱ダメージを避けるため距離30cm以上を確保すると色ムラリスクも抑えられる。
乾燥理論の詳細を解説した環境省ガイドライン
環境条件と溶剤排出量の関係を図解
2液ウレタンは「主剤+硬化剤」を所定比率で混ぜることで高耐久膜を形成する。
・重量比を守る:比重差があるため、体積計量よりデジタル秤が正確。
・可使時間(Pot life):20℃で30〜40分。超過するとゲル化しスプレーガン詰まりを招く。
・攪拌は低速400rpm以下で3分、気泡を巻き込みにくい。
硬化剤を2%過剰添加した場合、60℃×4hの耐久試験で黄変度が2倍になる報告も。
🚩失敗しがちなポイント
・混合缶の底に未反応ゾーンが残る
・硬化剤が冷えて粘度アップ → 噴霧不良
・濾紙不足で異物混入
発熱を感じたら可使時間終盤のサイン。小分け配合でロスを最小化するのが職人流。
DIYユーザーが木材に塗装する際の典型的トラブルを解析。
・色ムラ:木目の早材・晩材で吸込み差 → シーラーを先塗りで平滑化
・刷毛跡:速乾で伸び不足 → リターダー溶剤を5%添加
・白濁:湿度高・結露 → 作業前に木材表面温度確認
🤔意外な盲点は「裏面気泡」。木口側から空気が抜け、上面にピンホールを生むケースが多い。鈍角45°で塗り始め、端部に余分塗料を溜め込まないテクニックが有効。
木工専門誌に掲載された吸込み斑対策の実験レポート
浸透型シーラーの厚膜効果
検索上位に出てこないが、実務で差がつくのが「マイクロクラック(微細ひび)」チェック。
・紫外線で劣化した旧膜をブラックライト照射すると、クラック部分のみ蛍光。
・20倍ルーペ観察で幅0.01mmを識別し、クリアトップで封じ込め可能か判断。
・打痕起因のクラックは深さが一定超なら全面剥離が安全。
現場では蛍光浸透探傷剤を簡易代用し、5分でクラック分布を可視化する手法も用いられる。これにより塗り直し範囲を30%削減した事例が報告され、コスト低減効果は絶大。
診断ツール | 長所 | 短所 |
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UVライト | 即時判定 | 屋外昼間は見えにくい |
蛍光浸透探傷剤 | 微細クラック可視化 | 除去洗浄が必要 |
電子顕微鏡撮影 | 高精度 | コスト高・搬送不可 |
微細クラックの補修後は、エラストマー系ウレタンクリアを薄膜2回で追随性を確保すると良い。
JISが規定する耐屈曲試験方法を参照
塗膜柔軟性の試験規格JIS K 5600-5-1
💡まとめポイント
・下地処理で付着強度アップ → 長期剥離ゼロへ
・乾燥環境を制す者が光沢を制す
・2液比率厳守&攪拌管理で黄変防止
・DIYは吸込み差と湿度を徹底ケア
・マイクロクラック診断で補修コスト削減
現場で蓄積したノウハウを活かし、ウレタン塗装を“失敗しない作業”から“付加価値を生む工程”へ昇華させよう。