

資格がなくても、10年の現場経験があれば屋根工事業の専任技術者になれます。
屋根工事業で建設業許可が必要になるのは、1件の請負代金が税込み500万円以上になるときです。これは建設業法で定められた明確な基準で、金額を超える工事を無許可で請け負った場合は法律違反になります。
「自分のところはそこまで大きな工事はやらないから関係ない」と思っている方もいるかもしれません。ただし、注意が必要な点が一つあります。材料費が発注者負担の場合でも、その材料費を合算した合計金額で500万円を超えると許可が必要になるのです。つまり、実際に自社で受け取る工事代金だけで判断してはいけません。
また、工事を分割して契約しても同様です。1件の工事として同一工事を複数の契約に分けた場合は、各契約の金額を合算して判断されます。意図的な分割でも例外にはなりません。
無許可で500万円以上の屋根工事を請け負った場合のリスクは非常に深刻です。建設業法第47条により、3年以下の懲役または300万円以下の罰金という刑事罰の対象になります。これは執行猶予がつくケースもありますが、前科として記録に残ります。さらに行政処分として営業停止処分が科される可能性もあります。
罰則だけではありません。近年は建設業許可の取得状況がオンラインで管理されており、他社の申請書類から無許可営業が発覚するケースも増えています。現場で事故が起きたタイミングで一気に発覚することも多く、リスクは想像以上に身近なところにあります。
| 工事規模 | 許可の必要性 |
|---|---|
| 税込500万円未満の屋根工事 | ❌ 不要(軽微な工事) |
| 税込500万円以上の屋根工事 | ✅ 必要(建設業許可) |
| 材料費含む合計が500万円以上 | ✅ 必要(分割不可) |
500万円という基準は、4LDK住宅の屋根全面ふき替えでおよそ130〜200万円程度の相場から見ると、数棟分のまとまった工事でも超えてくる水準です。「うちには関係ない」とは言い切れない数字です。
参考:建設業法上の許可・罰則についての詳しい解説はこちら。
500万円未満の工事は建設業許可が必要ない!許可なしで請け負った場合の罰則は? | 行政書士法人グレース
建設業許可を取得するには、営業所ごとに「専任技術者」を常勤で配置することが必須です。専任技術者とは、工事を技術面で管理できる能力を証明した人物のことです。屋根工事業の場合、以下の国家資格を持っている方が専任技術者の要件を満たします。
| 資格区分 | 資格名 | 一般 | 特定 |
|---|---|---|---|
| 建設業法(技術検定) | 1級建築施工管理技士 | ✅ | ✅ |
| 建設業法(技術検定) | 2級建築施工管理技士(仕上げ) | ✅ | ❌ |
| 建築士法 | 1級建築士 | ✅ | ✅ |
| 建築士法 | 2級建築士 | ✅ | ❌ |
| 技能検定 | かわらぶき(1級) | ✅ | ❌ |
| 技能検定 | スレート施工(1級) | ✅ | ❌ |
| 技能検定 | 建築板金「ダクト板金作業」(1級) | ✅ | ❌ |
| 技能検定 | 板金「建築板金作業」(1級) | ✅ | ❌ |
| 基幹技能者 | 登録建築板金基幹技能者 | ✅ | ❌ |
特定建設業の専任技術者になれるのは、1級建築施工管理技士・1級建築士など上位資格に限られる点に注意が必要です。
屋根工事業に最も直結している技能検定は、かわらぶき技能士とスレート施工技能士です。1級の合格率はかわらぶきで約55〜60%程度とされており、難易度は中程度です。学科試験(屋根・施工法・材料・建築概要など)と実技試験(実際に瓦を葺く作業)の両方を合格する必要があります。1級かわらぶき技能士を取得するには原則として7年以上の実務経験、または2級合格後2年以上の実務経験が必要です。
これは使えそうですね。現場経験がある職人の方にとって、最短ルートになり得る資格です。
2級を先に取得してから1級を目指すルートが一般的で、2級は3年程度の実務経験から受験が可能です。資格取得後は、営業所への専任技術者登録によって会社の建設業許可申請の要件を満たすことができます。
なお、2級の技能士資格で専任技術者になる場合は、資格取得後にさらに1年以上または3年以上の実務経験が必要になる場合があります。取得後すぐに使えるわけではない点に注意が必要です。
参考:かわらぶき技能士の試験内容・受験資格についての詳しい情報はこちら。
屋根工事業の建設業許可は、資格がなくても取得できます。これが意外と知られていない重要なポイントです。
専任技術者の要件を満たす方法として、資格のルートのほかに「屋根工事業に関する実務経験が10年以上ある」という条件があります。学歴は問われません。現場で屋根ふき工事・屋根葺き替え工事・板金屋根工事などに10年間携わっていた経験があれば、専任技術者として認められます。
つまり実務経験が条件です。
ただし、この「10年」を証明するための書類が問題になるケースが多くあります。実務経験を証明するためには、過去10年間にわたる工事の発注書・請求書・契約書と、それに対応する入金確認のできる通帳の原本が必要です。昔の書類を全て保管している事業者は多くなく、この証明が難しいために許可取得を断念するケースも少なくありません。
過去に在籍していた会社での経験も証明できますが、その場合は当時の在職証明や工事実績証明書を元の会社に発行してもらう必要があります。退職後に連絡が取りにくくなった会社から証明を得ることは、現実的に難しい場面もあります。
また、10年の実務経験を「1業種で10年」として計算することも見落とされがちです。たとえば屋根工事と塗装工事の両方の実務経験を主張したい場合、それぞれで10年ずつ、合計20年分の証明が必要になります。1つの期間を2つの業種に使い回すことは原則としてできません。
一方で、大学の建築学科や土木工学科を卒業した方であれば、卒業後3年以上の実務経験で専任技術者の要件を満たすことができます。高校の建築系学科を卒業していれば5年以上の実務経験で対応可能です。資格取得の勉強時間が取れない方にとっては、学歴と実務経験の組み合わせも有力な選択肢です。
参考:実務経験での専任技術者認定について詳しく解説されています。
屋根工事業の許可を考えるうえで、多くの建設業者がつまずく落とし穴があります。それが「屋根工事業」と「板金工事業」の業種区分の混同です。
屋根工事業で建設業許可を取得する際に、関連性が高い業種との区別が重要です。まず「板金屋根工事」は、金属板を使って屋根をふく工事ですが、これは板金工事業ではなく屋根工事業に該当します。国土交通省の建設業許可事務ガイドラインでも「板金屋根工事も『板金工事』ではなく『屋根工事』に該当する」と明確に規定されています。
屋根工事業が条件です。金属板を使っているから板金工事業、と判断してしまうのは間違いです。
一方で、建物の外壁に金属板を貼り付ける「建築板金工事」は板金工事業に該当します。同じ金属板を扱う工事でも、屋根をふく目的なら屋根工事業、外壁など内外装の板金張りなら板金工事業という区分になります。
| 工事の内容 | 該当業種 |
|---|---|
| 瓦・スレート・金属薄板による屋根ふき工事 | 屋根工事業 ✅ |
| 板金屋根工事(金属板による屋根ふき) | 屋根工事業 ✅(板金工事業ではない) |
| 屋根一体型の太陽光パネル設置工事 | 屋根工事業 ✅ |
| 屋根断熱工事 | 屋根工事業 ✅ |
| 建物外壁へのカラー鉄板張り付け工事 | 板金工事業 ✅ |
| 太陽光発電設備の設置工事(屋根止水処理含む) | 電気工事業 ✅ |
また、屋根工事に付随して塗装工事が必要になった場合(屋根塗装など)は「附帯工事」として扱うことができ、屋根工事業の許可があれば塗装工事業の許可がなくてもまとめて請け負うことが可能です。これは覚えておいて損はない知識です。
ただし、附帯工事の部分が500万円を超える規模になる場合は、その工事に対応した専門技術者を配置するか、その工事の許可を持った下請業者に施工させる必要があります。附帯工事だから何でも自由にできるわけではありません。
参考:屋根工事業・板金工事業などの業種区分の考え方について詳しく解説されています。
建設業許可の屋根工事業(屋根工事)の解説 | 行政書士事務所敷地
建設業許可の取得には、専任技術者の要件だけでなく「経営業務の管理責任者(経管)」の要件を満たすことも必須です。これは財務・労務・業務管理など、会社を経営面から管理できる人物が必要という条件です。
経管になれる条件は大きく次のとおりです。
- 屋根工事業を営む会社で役員として5年以上の経験がある
- 屋根工事業以外の建設工事業を営む会社で役員として6年以上の経験がある
- 屋根工事業を営む個人事業主として5年以上の経験がある
- 屋根工事業を含む建設業者のもとで6年以上の経営補佐経験がある
経管と専任技術者は同一人物が兼務することも可能です。ただし、その人物が営業所に常勤していることが条件で、他社の経管や技術者との兼務は原則として認められません。
一般建設業許可を取得するには、財産要件として自己資本500万円以上、または500万円以上の預金残高証明を用意する必要があります。これはおよそ4LDK住宅のリフォーム工事数件分の資金規模です。この財産要件は申請の直前に確認されるため、申請タイミングに合わせて残高を整えておくことが現実的な対策になります。
特定建設業許可の財産要件はさらに厳しく、資本金2,000万円以上・自己資本4,000万円以上など複数の条件を全て満たすことが求められます。厳しいところですね。
特定建設業許可が必要になるのは、元請として受注した1件の工事で、下請に出す金額の合計が4,500万円以上(建築一式工事は7,000万円以上)になる場合です。下請だけを行う業者は一般建設業許可で通常は問題ありません。
建設業許可を取得したら終わり、と思っている方は要注意です。建設業許可の有効期間は5年間で、継続するには期限内に更新申請を行わなければなりません。
更新申請は、有効期限の満了日の30日前までに提出を完了させる必要があります。ギリギリに提出しても、書類の不備があれば間に合わない可能性があります。許可取得の日から5年という周期を忘れないよう、取得日はどこかに記録しておくのが賢明です。
もし更新を忘れて許可が失効してしまうと、どうなるでしょうか?
結論は厳しいです。一度失効した建設業許可は「復活」させる手段がありません。失効後に改めて新規申請を行うことになりますが、許可番号も変わってしまいます。長年積み上げてきた許可番号が引き継げなくなるのは、元請業者や発注者への信頼性の面でもダメージになります。
また、許可が失効している間に500万円以上の工事を請け負えば無許可営業となり、冒頭で触れた刑事罰のリスクが発生します。更新忘れが取り返しのつかない事態を招くことがあります。
5年ごとの更新のほかにも、以下の手続きが随時必要になる場合があります。
- 役員変更・住所変更:変更後2週間以内に届出が必要
- 決算変更届:毎事業年度終了後4か月以内に提出(毎年必須)
- 専任技術者の変更:退職などで空白が生じた場合は速やかに手続き
特に決算変更届は毎年提出が必要な書類で、これを怠り続けると更新時に許可が更新できなくなるリスクもあります。許可取得後の維持管理も許可取得と同様に重要です。
更新や変更届の管理が煩雑に感じる場合は、建設業許可を専門とする行政書士に顧問として依頼する方法があります。費用は月額数千円〜数万円程度が相場で、期限管理や書類作成をまとめて任せることができます。許可を安定して維持したい事業者にとっては、コスト以上のメリットがある選択肢です。
参考:建設業許可の更新を忘れた場合の対処法と失効リスクについての詳細はこちら。
建設業許可の更新を忘れていた!どうなる? | 土井行政書士事務所