ユニバーサルデザイン一覧で見る建築事例と7原則

ユニバーサルデザイン一覧で見る建築事例と7原則

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ユニバーサルデザイン一覧

この記事でわかること
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建築におけるUD原則

7つの基本原則と建築分野での具体的な適用方法を解説

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実践事例一覧

公共施設、住宅、商業建築の導入事例を網羅的に紹介

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設計のポイント

バリアフリーとの違いや費用対効果の考え方を提示

ユニバーサルデザインの7原則と建築での意味

ユニバーサルデザインには、1997年にノースカロライナ州立大学のユニバーサルデザインセンターで定義された7つの原則が存在します。建築分野では、これらの原則が空間設計の基本指針として機能します。
参考)ユニバーサルデザインの7原則

第一原則は「公平性」で、誰にでも公平に利用できることを求めます。建築では階段と並行してスロープやエレベーターを設置し、利用者が移動手段を選択できる環境が該当します。第二原則の「自由度」は、使用方法に柔軟性があることを意味し、右利き・左利きどちらでも操作できるドアハンドルなどが実例です。
参考)ユニバーサルデザインの7原則の原文・意味とその具体例|TOP…

第三原則「単純性」では、使い方が簡単で直感的に理解できることが重視されます。第四原則「明確さ」は必要な情報がすぐ理解できることで、ピクトグラムによる視覚的案内が代表例です。第五原則「安全性」はミスや危険につながらない設計、第六原則「省体力」は無理な姿勢や力を必要としないこと、第七原則「空間性」はアクセスしやすいスペースの確保を指します。
参考)【公式】〜完全ガイド〜 ユニバーサルデザインとは?意味・7原…

ユニバーサルデザイン建築の公共施設事例一覧

公共施設におけるユニバーサルデザインの導入事例は、建築事業者にとって重要な参考資料となります。鹿島建設では公共施設や病院の大規模建築で、動線・照明・サインを含めた空間設計にユニバーサルデザインを導入し、わかりやすく安心して利用できる建物を実現しています。
参考)ユニバーサルデザイン【身の回りにある具体例一覧】7原則やバリ…

茨城県の「かみす防災アリーナ」は、段差のない空中スロープを施設内に配置し、車いす使用者がフラットにアクセスできるアリーナ席を整備しています。プールでは大人、子ども、身障者それぞれに専用の出入口・更衣室を設け、可動床に対応した車いす用スロープを設置しました。音楽ホールには車いすスペース付きの親子席を配置し、小さい子どもでも気兼ねなく音楽を楽しめる環境を構築しています。
参考)ユニバーサルデザインを積極的に導入

八尾市の公共建築では、市役所本館玄関に自動ドアと誘導案内を設け、目の不自由な方にも入口がわかるようにしています。案内板は日本語・韓国語・中国語・ベトナム語・ポルトガル語・英語の6カ国語表記で、外国人居住者にも対応可能です。しおんじやま古墳館の多目的トイレは、車いす利用者や乳幼児連れだけでなく多様な利用者が快適に使えるよう、ベビーチェア・ベビーシート・手すり・荷物掛けフックを設置しています。
参考)建築物のユニバーサルデザイン|大阪府八尾市公式ホームページ

ユニバーサルデザイン住宅と建築設備の具体例

住宅分野でのユニバーサルデザイン導入は、LIXILが先進的な取り組みを展開しています。同社は座ったままでも使える洗面台、握力が弱くても操作できるレバー式水栓、便器の高さ調整が可能なトイレなど、日常の使いやすさを重視した製品を開発しています。​
京王プラザホテルの北側エントランスには、車いす利用者向けにピクトグラムの案内板を設置した緩やかな傾斜のスロープが配置され、負担をかけずにエントランスへ入れる設計になっています。西葛西・井上眼科病院では、視覚障害者の利用しやすさを考慮し、15人乗りでストレッチャーが入る大きさのエレベーターを採用し、視力が弱い人でも押しやすい直径6cmの操作ボタンを設置しています。
参考)ユニバーサルデザインで誰もが使いやすい建物に ビル設備での導…

築地本願寺では1998年に本館に傾斜路、エレベーター、車いす対応トイレを設けるバリアフリー化を実施しました。用和小学校多目的室棟の外部手すりは、子どもと大人の両方が使いやすいよう2段型の高さ設定を採用しています。市立病院のアプローチは段差を設けず、玄関ホールにはエレベーターとエスカレーターを分かりやすい位置に配置し、利用者が選択できる設計としています。​

ユニバーサルデザインにおけるピクトグラムと案内表示

ピクトグラムは言葉を使わずに絵や記号で意味を伝える図記号で、言語や文化、年齢に関係なく理解されやすいユニバーサルデザインの重要な要素です。1964年の東京オリンピックでは、日本語が通じない外国人観光客に配慮し、競技種目を表す統一されたピクトグラムが初めて導入されました。
参考)ユニバーサルデザインとは|誰もが使いやすい仕組みを取り入れた…

国際的にはISO(国際標準化機構)によって安全標識や公共案内のピクトグラムが統一され、ISO 7001として「公共案内用図記号」が国際規格として制定されています。日本ではJIS(日本産業規格)における「JIS絵記号」を世界に先駆けて標準化し、2005年には高齢化やユニバーサルデザインの潮流を背景に、コミュニケーション支援用として300を超えるピクトグラムが制定されました。
参考)ピクトグラムはなぜ作られた?ユニバーサルデザインの歴史と活用…

建築空間では、トイレの男女マーク、非常口の避難誘導マーク、禁煙・火気厳禁のマーク、駐車場やエレベーターの表示などが代表的な活用例です。ピクトグラムは色彩に依存せずに情報を理解できるよう、コントラストや形状に焦点を当てたデザインが採用されており、異なる文化や言語の背景を持つ人々が一目で意味を理解できる普遍的で直感的なシンボルの使用が促進されています。
参考)ユニバーサルデザインとしてのピクトグラム

ユニバーサルデザインとバリアフリーの違いと建築への影響

ユニバーサルデザインとバリアフリーは混同されやすい概念ですが、建築事業者にとって両者の違いを理解することは重要です。バリアフリーは障害者や高齢者など、日常生活で継続的に不具合を抱える人を対象とし、支障となるものを取り除く形でデザインを考えます。もともとは段差など「障害となるもの(バリア)からの解放」を意味する建築用語です。
参考)ユニバーサルデザインとバリアフリーの違いは? 具体例を交えて…

一方、ユニバーサルデザインはすべての人が生涯のどこかで何らかの不具合に遭遇することを前提として設計し、障害の有無や年齢、性別、人種にかかわらず、あらゆる人を対象とします。誰もが快適に使え、魅力を感じるデザインであることを重視する点が特徴です。​
建築における実践例では、出入口に階段しかなく高齢者や障害者が昇り降りしにくい場合にスロープを後付けするのがバリアフリー、最初から階段を作らずにスロープを設計するのがユニバーサルデザインとなります。バリアフリーの普及促進は平成18年施行の「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(バリアフリー新法)」のもと行政が指導しているのに対し、ユニバーサルデザインは民間事業がメインで推進しています。
参考)バリアフリーとユニバーサルデザインは何が違うの?住宅における…

ユニバーサルデザイン建築のコストとメリット分析

ユニバーサルデザインを建築に取り入れる際、初期費用が通常の建築よりも高くなることがあります。しかし、将来的なリフォーム費用や介護が必要になった場合の改修費用を抑えることができるため、長期的視点では経済的メリットが大きいと評価されています。
参考)ユニバーサルデザインとは?暮らしやすい家を紹介!身の回りの住…

コストを抑えつつユニバーサルデザインを実現するためには、最初から必要な部分を計画的に取り入れることが重要です。段差のない設計や引き戸の採用、バリアフリー配置を初期段階から計画することで、追加費用を抑制できます。将来的に変更できる設計を取り入れておけば、必要な部分だけ後から改修でき、初期費用を抑えながら段階的な実現が可能となります。​
長期的には、ユニバーサルデザインを取り入れることでリフォームや改修の頻度を減らし、メンテナンスが簡単になります。これにより将来的にかかるコストを削減でき、家族全員が長期的に快適に暮らせる建物が実現します。すべての要素にこだわる必要はなく、予算に応じて優先順位を決め、段差のない設計や手すりの設置、広い廊下など優先度が高いものから取り入れていく戦略的なアプローチが推奨されています。​
国土交通省「建築設計事例集」PDF版 - ユニバーサルデザイン建築の詳細な設計図面と仕様を収録
東京都「多様な利用者のニーズに配慮したトイレハンドブック」PDF版 - トイレのユニバーサルデザイン設計基準を詳述