

財団法人駐車場整備推進機構(Japan Parking Facilities Promotion Organization、略称JPO)は、国土交通省所管の財団法人として設立されました。設立の背景には、平成元年頃のモータリゼーションの進展による都市部での深刻な駐車場不足があります。
参考)駐車場整備推進機構 - Wikipedia
当時、路上駐車の蔓延が交通渋滞や交通事故の増加の要因となる一方で、地価高騰により民間駐車場の拡大にも限界がきていました。このような状況を改善するため、平成3年に公共による駐車場整備の要請があり、道路法等の改正により道路管理者が道路上に有料駐車場を設置することが可能となりました。
参考)https://www.mlit.go.jp/road/sisaku/parking/ope_mente/pdf2/11.pdf
そして平成5年(1993年)から、道路の地下空間を活用して国及び財団法人駐車場整備推進機構が一体的に駐車場を整備する事業が開始されました。この機構設立の最大の目的は、路上駐車による交通渋滞の緩和及び交通事故の削減でした。
参考)効率的経営が望まれる「駐車場整備推進機構」 href="https://y-ide.com/archives/35082" target="_blank">https://y-ide.com/archives/35082amp;#8211; …
駐車場整備推進機構は、約950億円の道路財源等を投入して全国14カ所に建設した官営駐車場の管理・運営を行っていました。具体的な設置場所は、札幌、盛岡、仙台、水戸、新宿、京橋、名古屋、四日市、大阪、広島、松山、高知など主要都市の国道地下に配置されていました。
参考)駐車場整備推進機構とは - わかりやすく解説 Weblio辞…
管理運営業務以外にも、駐車場の整備に関連した調査・研究活動を実施していました。さらに、駐車場の質的向上を目的として、「日本ベストパーキング賞」制度の設置・運営も担当していました。この表彰制度は2004年(平成16年)に新設され、利便性、安全性、環境配慮などに優れた駐車場を表彰するもので、「駐車場」「活動」「システム・関連」の3部門で選考が行われました。
また、「駐車場サービス水準チェックリスト」の策定と、それに基づく認証を行う「グッドパーキング制度(優良駐車場認証制度)」の設置・公表、駐車場に関する図書の発行なども実施していました。これらの活動を通じて、駐車場業界全体の質的向上を図っていたのです。
参考)グッドパーキング制度を創設…優良駐車場はここだ
駐車場整備推進機構と建築業界との関わりは、駐車場法に基づく建築物への駐車施設附置義務という点で深い関連性がありました。駐車場法では、駐車場整備地区及びその周辺に建築される一定の規模及び用途の建築物について、駐車施設の附置義務を課することが定められています。
参考)https://www.mlit.go.jp/toshi/content/001634445.pdf
建築業従事者にとって、駐車場整備推進機構が発行していた「駐車場法解説」や「駐車場ガイドブック 法令編・本編」などの図書は、建築計画における駐車場設計の重要な参考資料となっていました。特に商業施設や大規模建築物を手がける建築業者は、これらの資料を活用して法令に適合した駐車場計画を策定する必要がありました。
さらに、機構が実施していた「グッドパーキング制度」では、駐車場の構造、設備、管理について適切な水準を確保するための基準が提示されており、建築業者はこれらの基準を参考に高品質な駐車場施設の設計・施工を行うことができました。機構の活動は、建築業界における駐車場の質的向上に大きく貢献していたといえます。
参考)http://cus4.japan-pa.or.jp/wp/wp-content/uploads/2017/09/185goodpk.pdf
駐車場整備推進機構は、巨額の税金をつぎ込みながらも利用が低迷しているという問題を抱えていました。それにもかかわらず国土交通省OBら常勤役員4人の年収は計約6,500万円に上り、公益法人改革の観点からも問題視されていました。
2010年3月、当時の前原誠司国土交通大臣が記者会見で「駐車場管理は民間で十分できる」として、機構を1年以内に解散する方針を表明しました。国土交通省の改革本部によって、2009年度までに解散することが決定されていた経緯もあり、具体的な解散計画が加速しました。
参考)駐車場整備推進機構は解散へ 14駐車場、民間に営業権譲渡 /…
新たな事業スキームとして、PPP(公民連携)の一形態である「コンセッション方式」が採用されました。これは国が営業権を譲渡して民間事業者に一定期間、自由に営業してもらう仕組みです。民間事業者は機構の借入金未償還残高以上の価格で駐車場財産を取得し、そのコンセッションフィーで機構の債務を返済することになりました。
参考)https://www.mlit.go.jp/road/ir/ir-council/ppp/pdf/doc5-1.pdf
駐車場整備推進機構の最も重要な使命は、路上駐車による交通渋滞と交通事故の削減でした。路上駐車は道路の交通容量を低下させる主要因であり、1988年の調査では東京23区内の渋滞原因交差点193カ所のうち80%にあたる152カ所で路上駐車が主因とされていました。
参考)https://onumaseminar.com/assets/GraduationPapers/07th/saito.pdf
🚗 路上駐車が引き起こす問題点
機構が管理していた全国14カ所の直轄駐車場は、合計2,495台の駐車容量を持ち、これらは主要幹線道路の地下空間を活用した地下駐車場として整備されました。札幌の地下駐車場(国道5号)、仙台の地下駐車場(国道4号)、京橋駐車場(東京・国道15号)、大曽根国道駐車場(名古屋・国道19号)、桜橋駐車場(大阪・国道2号)など、都市部の交通需要が高い地域に戦略的に配置されていました。
参考)ニュースリリース
2012年には、これらの駐車場の管理運営がタイムズ24株式会社の100%子会社であるTFI(タイムズファイナンスイニシアティブ)株式会社に引き継がれました。民間事業者の経営能力と技術的能力を活用することで、効率的かつ効果的な維持管理・運営が実現され、駐車場利用者の利便性向上も図られることとなりました。
建築業従事者にとって、これらの駐車場整備の経緯や教訓は、今後の都市開発プロジェクトにおいて駐車場計画を立案する際の重要な参考事例となっています。公共と民間の適切な役割分担、交通動線の最適化、地下空間の有効活用など、多くの知見が蓄積されました。
国土交通省|直轄駐車場を取り巻く動向(事業の経緯と民間譲渡の詳細資料)
国土交通省|直轄駐車場の整備に係る経緯(駐車場整備の背景と機構の役割)
Wikipedia|駐車場整備推進機構(機構の概要と解散経緯の詳細)