
在庫回転率とは、一定期間内に在庫が何回入れ替わったかを示す指標です。この指標により、商品や資材がどれだけ効率的に販売・消費されているかを把握できます。在庫回転率が高いほど、在庫の入れ替わりが早く、資金が効率的に回転していることを意味します。
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金額による計算式:
参考)在庫回転率とは?意味や計算方法、メリットをわかりやすく解説
在庫回転率 = 売上原価 ÷ 平均在庫金額
売上原価 = 期首在庫金額 + 仕入れ高 - 期末在庫金額
平均在庫金額 = (期首在庫金額 + 期末在庫金額) ÷ 2
個数による計算式:
参考)在庫回転率とは?計算方法や適正在庫との関係について徹底解説
在庫回転率 = 期間出庫数 ÷ 期間平均在庫数
期間平均在庫数 = (期首在庫数 + 期末在庫数) ÷ 2
計算には金額ベースと個数ベースの2つの方法があり、個数ベースの方が実態に近い数値を把握しやすいという特徴があります。また、計算時には売上高ではなく売上原価を用いることが一般的です。これは分母である平均在庫金額が原価で計算されているため、単位を合わせることでより実態に近い在庫回転率を算出できるからです。
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在庫回転期間とは、在庫が1回入れ替わるまでにかかる期間(日数)を示す指標です。この数値が小さいほど、在庫として抱えている期間が短く、その商品が売れ筋であることを意味します。在庫回転期間は企業の良好なキャッシュフローに貢献する重要な指標となります。
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在庫回転期間の計算式:
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在庫回転期間 = 期間(日数など)÷ 在庫回転率
または
在庫回転期間 = 棚卸資産 ÷ 売上高
具体例として、棚卸資産が1000万円、年間売上高が1億円の場合、「1000万円 ÷ 1億円 = 0.1年」つまり36.5日に1度在庫が入れ替わっていることになります。売上金額ではなく売上原価を用いて計算すると、売上金額を変えた場合などの影響を加味せず、より正確な在庫回転期間を算出できます。
在庫回転期間を月単位で算出したい場合は、「棚卸資産 ÷(売上原価 ÷ 12)」という計算式を用います。例えば棚卸資産が120万円、売上原価が720万円の場合、「120万円 ÷(720万円 ÷ 12)= 2か月」となり、在庫が入れ替わるのに2か月を要していることがわかります。
在庫回転率と在庫回転期間は、どちらも在庫効率を測定する指標ですが、表現方法が異なります。在庫回転率は「一定期間に何回在庫が入れ替わったか」を示すのに対し、在庫回転期間は「在庫が1回入れ替わるまでに何日かかるか」を示します。
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両指標は逆数の関係にあります。具体的には、「在庫回転期間 = 期間(日数など)÷ 在庫回転率」という式で表され、一方の数値がわかればもう一方も算出できます。在庫回転率が高ければ在庫回転期間は短くなり、逆に在庫回転率が低ければ在庫回転期間は長くなります。
参考)在庫回転日数|値が示す経営状態と計算式。在庫回転率との違い
100個の在庫がある店舗で1ヶ月のうちに50個売れ、新たに50個仕入れた場合、在庫数は当初と同じ100個ですが、そのうちの50個は入れ替わっています。このように、在庫回転率は「何回入れ替わったか」という頻度を、在庫回転期間は「何日分の在庫があるか」という期間を重視した指標です。
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両指標を併用することで、在庫効率を多角的に分析できます。特に棚卸資産の変動が大きい業態では、商品の種類ごとに毎月または四半期ごとに確認すると効果的です。
参考)https://it-trend.jp/inventory_control/article/97-0052
在庫回転率の計算において、売上原価と棚卸資産は中心的な役割を果たします。売上原価を用いる理由は、在庫回転率の分母にあたる平均在庫金額(棚卸資産)が仕入価格で計算されるためです。売上高を用いると分子と分母の単位が異なるため実態と乖離してしまいますが、売上原価を使うことで単位を合わせ、より実態に近い在庫回転率が算出できます。
参考)棚卸資産回転率
棚卸資産の種類:
参考)棚卸資産回転率(回転期間)とは?高い程いいの?計算や経営分析…
棚卸資産には、商品・製品・半製品・仕掛品・原材料などが含まれます。建設業の場合、鉄筋やセメントなどの主資材、工具や消耗品などの副資材、安全用品や事務用品などの間接資材が該当します。
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売上原価は「期首在庫金額 + 当期仕入高 - 期末在庫金額」で算出されます。平均在庫金額は期首と期末の在庫金額の平均値を用いることが一般的で、「(期首在庫金額 + 期末在庫金額)÷ 2」という式で計算します。この平均値を使用することで、期間中の在庫変動を適切に反映できます。
在庫回転率を正確に把握するためには、定期的な棚卸作業の実施が不可欠です。日常的に正しい方法で棚卸しを行うことで、過剰在庫や欠品の発生を防ぎ、在庫回転率の精度を向上させることができます。
参考)在庫数はどのように管理する?在庫管理の課題とポイント
建設業の在庫管理には、他業種とは異なる特有の課題と複雑性があります。建設業では在庫の対象が建築資材となり、資材の品質を維持しながら工期スケジュールに合わせて、必要なタイミングで適切な量を供給することが最も重要な業務となります。
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建設業の在庫管理における主な課題:
参考)建設業者の6割以上が感じる物品調達の課題感。管理をシンプルに…
建設業の資材は「主資材」と「副資材」の2種類に分類されます。主資材は建築物の原材料として直接使用される鉄骨、コンクリート、木材、タイル、配管材などで、副資材は製品を作る過程で消費される作業用品、オフィス用品、燃料、工具類などです。これらは発注タイミングや保管方法、数量管理の方法が異なるため、適切に分類して管理する必要があります。
在庫回転率の適正値は業種によって大きく異なります。建設業では工期の長さや資材の特性により、製造業や小売業と比較して在庫回転率が低くなる傾向があります。そのため、業種別の平均値を参考にしながら、自社の適正値を把握することが重要です。
参考)在庫回転率を求める意味とは|【業種別】在庫回転率の平均値も紹…
建設業の在庫管理では、プロジェクトIDや工事番号を設定し、主資材だけでなく副資材もリストに記載することが推奨されます。これにより、現場ごとの資材使用状況を正確に把握し、在庫回転率の改善につなげることができます。
参考)建設業における資材の在庫管理方法|ステップ別に分かりやすく解…
建設業における効率的な資材調達と在庫管理は、発注業務の負担軽減、仕入先選定の効率化、価格交渉の円滑化、情報共有の改善といった複合的な課題解決が必要です。在庫回転率と在庫回転期間を定期的にモニタリングし、適正在庫の維持を目指すことで、建設プロジェクトの収益性向上とキャッシュフロー改善が期待できます。
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