材料規格とは|建築業の品質を支える基準と種類

材料規格とは|建築業の品質を支える基準と種類

記事内に広告を含む場合があります。

材料規格とは品質基準を定めた仕組み

材料規格の3つのポイント
📋
品質の統一化

材料の形状・寸法・材質などを一定の基準で統一し、安全性と品質を保証する仕組み

🏗️
建築基準法との関係

建築物の主要構造部に使用できる材料は指定建築材料として法律で定められている

3種類の認証制度

JIS規格、JAS規格、国土交通大臣認定の3つの認証方法が存在する

材料規格とは何か

材料規格とは、建築工事に使用する材料の品質・形状・寸法・材質などを一定の基準に沿って統一し、それを文章化したものです。規格を定めることで、生産者と消費者の双方が安心して材料を使用でき、建築物の品質と安全性を確保することができます。建築基準法第37条「建築材料の品質」において、建築物の基礎や主要構造部に使用する木材鋼材、コンクリートなどの建築材料は、その品質が日本産業規格(JIS)または日本農林規格(JAS)、あるいは国土交通大臣の認定を受けたものでなければならないと定められています。
参考)全国木材検査・研究協会

材料規格の種類とJIS・JASの違い

建築業で使用される材料規格には、主に3つの種類があります。第一に、**JIS(日本産業規格)**は、鉄筋コンクリート造や鉄骨造で扱う材料のほとんどに適用される規格です。鉄筋や鋼材、セメント、コンクリートなどがこれに該当し、現在10,944規格が制定されています。第二に、**JAS(日本農林規格)**は、木造建築物に使用される木質建材に適用される規格で、製材は構造用製材を含む6つに分類されています。板状に加工した木材を貼り合わせた合板などはJIS規格、木材を細かく粉砕加工して成型固形化したパーティクルボードや繊維板などはJAS規格と、加工の内容によって適用される規格が異なります。第三に、JISとJASどちらにも認定されていない材料でも、国土交通大臣認定品として認められていれば使用が可能です。
参考)施工の神様

材料規格の適用基準と確認方法

材料規格が適合しているかを確認するには、いくつかの方法があります。まず、**材料証明書(ミルシート)**の確認が最も一般的です。ミルシートには材料規格と検査規格が記載されており、使用される素材が規格に適合していることを証明します。施工管理職の方は、見方や保管方法についてきちんと覚えておく必要があります。次に、JISマークやJASマークの表示を確認する方法があります。これらのマークは登録認証機関の厳しい確認・審査により認められた製品にのみ付与されるため、製品の安全性を確かめることなく安心して使用できます。性能評価機関の評価員が、提出された試験データや品質管理マニュアル等を確認して審査を行い、工場等の生産現場においても製品の確認が実施されます。
参考)https://www.mlit.go.jp/common/001267361.pdf

国土交通省:指定建築材料に関する大臣認定制度の概要(性能評価機関による審査プロセスの詳細)

材料規格を守ることのメリットと安全性

材料規格を遵守することには、多くのメリットがあります。安全性の確保という点では、使用される素材が規格に適合していることを証明でき、建築物の構造的な安全性を保証します。品質保証の面では、原材料の品質が最終製品に反映され、消費者に信頼性の高い製品を提供できます。また、対外的な信用度の向上も重要なメリットです。JIS認証取得事業者を対象としたアンケートでは、回答者の約80%が「対外的な信用度が向上する」と答えており、取引先や消費者へ与える安心感・信頼度の向上が何よりのメリットといえます。さらに、規格が定められていることで、生産する側も効率的に材料を製造でき、コストダウンや開発のスピードアップにもつながります。
参考)材料証明書が必須な理由 - 製造業での重要性と活用方法 - …

材料規格の運用における現場での注意点

建築現場で材料規格を運用する際には、いくつかの重要な注意点があります。まず、材料の受入検査を徹底することが不可欠です。検査体制や検査方法を明確にした上で、目視確認により疑わしい箇所を測定し、全延長にわたって実施する必要があります。次に、規格外れ品の取り扱いに注意が必要です。過去には、検査結果の数値が顧客仕様で定められた規格範囲を外れていた場合に、過去の経験等を踏まえ影響がないと判断して改ざんした事例や、JIS規格で定められた公差を超過する製品を出荷し続けた事例があります。これらは顧客との契約違反に該当するだけでなく、JIS認証の取り消しという企業にとって大きな痛手となる事態を招きます。施工管理者は、材料の形状寸法、品質、規格等を十分に確認し、設計図書や特記仕様書に明示されている基準を満足する材料を使用しなければなりません。
参考)https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/sinsei/jisshi_youryou3_31_01.pdf

日本建設技術センター:海外建設資材品質審査・証明(品質審査の実施方法について)
材料規格は建築業における品質管理の根幹をなす仕組みであり、JIS規格JAS規格、国土交通大臣認定の3つの認証制度を正しく理解し、適切に運用することが建築物の安全性と信頼性を確保する上で極めて重要です。現場では材料証明書の確認と保管、受入検査の徹底、規格外れ品の適切な処理を行い、常に法令遵守を心がける必要があります。