

技術だけ磨いても、造園業の自営で年収は上がりません。
造園業において、自営や一人親方の年収がどのくらいかを正確に把握している人は意外と少ないです。一人親方団体労災センター共済会のデータによると、造園業で独立した一人親方の平均年収は約700万円〜800万円とされています。これは厚生労働省が発表した造園業の会社員平均年収360.7万円(令和4年度)と比較すると、独立することで収入が2倍近くに跳ね上がる計算になります。
つまり独立が条件です。
ただし、ここで注意が必要なのは「年収700〜800万円」という数字が手取りではないという点です。自営業者・個人事業主の場合、この売上から軽トラックのガソリン代、剪定道具や草刈り機の消耗費、保険料、確定申告に伴う税金、国民健康保険料・国民年金などの社会保険料がすべて自己負担となります。一般的に個人事業主の手取りは年収の6〜7割程度とされているため、年収700万円なら手取りは約420万円〜490万円前後になることを念頭に置いておく必要があります。
年収の水準を年代別に見てみると、造園業の会社員の場合、20代で月収17万円〜20万円(年収換算で204万円〜240万円程度)、ベテランの40代〜50代でも年収400万円〜500万円台が一般的な水準です。独立後の700万円台という数字がいかに大きな差を生むか、具体的にイメージできるでしょう。
一方で、年収400万円程度にとどまるケースもあれば、1000万円以上を稼ぐ例もあるのが自営の現実です。この差を生む最大の要因については、次のセクションで詳しく解説します。
造園業の会社員と自営業者の収入差については、以下の公的データも参考になります。
造園業の職種別賃金データ(厚生労働省 job tag)。
厚生労働省 jobtag「造園工(公園・緑地・庭等の設計・整備に関わる仕事)」の賃金・年収データ
自営で年収を上げるための方程式は非常にシンプルです。それは「単価 × 受注した仕事の数」です。これが原則です。
造園業の一般的な日当の相場は、1人1日あたり18,000円〜25,000円が目安とされています。仮に日当2万円で年間200日稼働したとすると、売上は400万円。そこから経費を差し引けば、手取りはさらに下がります。逆に、高付加価値な案件(富裕層向けの個人邸造園、伝統的な日本庭園の施工など)を多く受注できれば、同じ200日の稼働でも売上が大きく変わります。
厳しいところですね。
年収1000万円を達成するためには、売上として年間1300万円以上を確保する必要があるとも言われています。これを日当ベースで換算すると、2万5,000円の単価で年間520日分相当の仕事量が必要です。1人では稼働日数に限界があるため、いかに1件あたりの単価を上げるか、設計から施工まで一貫して請け負うかが重要になってきます。
また、造園業には繁忙期と閑散期があります。個人客をメインに行う造園屋の場合、閑散期は1月〜3月になりやすく、公共工事メインの造園屋では4〜5月が閑散期になりやすいとされています。この閑散期の2〜3ヶ月間、収入がゼロに近い状態になると年収全体に大きく響きます。外構工事や土木工事の下請けも視野に入れ、閑散期の収入源を事前に設計しておくことが安定した年収につながります。重機免許(玉掛け・移動式クレーンなど)を取得しておくと、土木屋やゼネコンの下請け案件にも対応できるため、年間を通じた収入の底上げに効果的です。
自営・一人親方として高い年収を実現するには、技術の証明となる国家資格の取得が非常に重要です。資格があるかないかで顧客の信頼度が変わり、受注できる案件の幅と単価が大きく変わります。これは使えそうです。
主要な資格は以下の通りです。
| 資格名 | 概要 | 年収への影響 |
|---|---|---|
| 造園施工管理技士(1級・2級) | 公園や緑化工事の計画・工程・安全管理を行える国家資格。1級は監理技術者として活躍可能 | 公共工事入札に有利。高単価案件の受注に直結 |
| 造園技能士(1級・2級・3級) | 庭園造成・庭木手入れ・公園管理などの技術・知識を証明する国家資格 | 1級取得で顧客への信頼訴求が強くなる |
| 土木施工管理技士(1級・2級) | 土木工事の施工計画・工程・安全管理を行える国家資格 | 造園に加え土木工事にも対応でき仕事の幅が広がる |
| 樹木医 | 樹木の診察・治療・保護ができる専門家 | 希少性が高く高単価案件を受けやすい |
独立の準備として資金面も重要です。造園業で一人親方として独立する際の開業資金は、軽トラックや剪定道具一式・草刈り機などの機材購入費で100万円前後、加えて3ヶ月分の運転資金として100万円〜200万円を確保しておくことが推奨されています。最低でも200万円程度は必要と考えておくのが現実的です。なお、より大型の造園建設業として会社を立ち上げる場合は、重機・人件費なども含め500万円〜1,500万円規模の初期投資が必要になるケースもあります。
独立の手続きそのものはシンプルで、税務署に「開業届」を提出し個人事業主として登録するだけで開業は完了します。あわせて国民健康保険・国民年金への切り替えも行いましょう。開業届の提出は無料です。
開業届の提出方法と個人事業主の手続きについては、以下のページが詳しいです。
「技術さえあれば独立できる」という考え方は危険です。現実として、独立したものの仕事が取れずに廃業したり、会社員時代よりも年収が大幅に下がってしまうケースは後を絶ちません。失敗の原因を事前に把握しておくことが、リスク回避の第一歩です。
独立失敗で最も多い原因が「営業力の不足」です。会社員時代は会社が仕事を取ってきてくれましたが、独立後は自分で一から顧客を開拓する必要があります。良い仕事をしていれば口コミで広がる、というのは理想論で、実際にはホームページの作成、チラシの配布、地域の工務店への飛び込み営業といった泥臭い活動が必要です。現場作業で体力を消耗した後に、慣れない見積書作成や営業活動をこなすのは想像以上に過酷です。
次に「資金繰りの問題」があります。造園業では、工事完了後の翌月・翌々月に入金されるケースが多く、売上があっても手元に現金がない「黒字倒産」のリスクがあります。開業当初に運転資金が尽きてしまい、廃業せざるを得ないというパターンは建設業全般で共通する典型的な失敗例です。痛いですね。
また「収入の不安定さ」も大きなリスクです。雨の日や台風の日は作業が中止となり、その日の収入はゼロになります。会社員であれば欠勤扱いになるだけですが、自営では売上そのものがなくなります。1ヶ月の稼働日数が予定より10日減るだけで、月収が20万円以上下がることもあります。
さらに、自営業者・一人親方は原則として会社の労災保険が適用されません。作業中に高所から転落したり、機材で怪我をしたりしても、補償がない状態で医療費を全額自己負担することになります。このリスクに対しては、一人親方向けの「労災保険特別加入制度」への加入が強く推奨されます。月額保険料は給付基礎日額によって異なりますが、3,500円〜10,000円程度で加入できます。会社員と同様の補償が得られるため、加入は必須と言えます。
一人親方の労災保険特別加入については以下を参照してください。
年収1000万円を達成している自営の造園職人には、技術力だけでなく「仕組み化」という共通の特徴があります。意外ですね。
高収入を実現している一人親方の具体的な戦略を整理すると、まず「リピート率を上げる仕組み」があります。庭木の剪定は年に1〜2回のサイクルで繰り返し発生するメンテナンス業務です。一度作業した顧客から継続的に依頼を受け続けることができれば、営業コストをかけずに安定した売上が積み上がります。施工後のアフターフォロー連絡、季節の手入れ時期を知らせるハガキや LINE通知など、顧客との関係を継続的に維持する小さな行動が大きな差を生みます。
次に「SNSとウェブサイトによる集客」です。庭のビフォーアフター写真はSNS映えするコンテンツとして拡散されやすく、InstagramやX(旧Twitter)での発信が実際の問い合わせに直結するケースが増えています。ウェブサイトをGoogleのローカル検索(「地名+剪定」「地名+庭師」など)で上位表示させることができれば、広告費ゼロで安定した新規顧客を獲得できる仕組みが完成します。
また「富裕層向けの単価の高い案件への特化」という戦略も有効です。個人邸の日本庭園施工や、マンション・商業施設の植栽デザインなど、専門性と提案力が求められる案件は単価が高く、他の一人親方との競合が少ない傾向があります。年収1000万円への近道は「件数を増やす」より「単価を上げる」ことです。
さらに、造園業界専門のマッチングサービスや、庭師のフランチャイズ・業務委託制度を活用する方法もあります。加盟することで安定的な集客基盤が得られ、独立当初の「仕事がない」というリスクを大幅に軽減できます。フランチャイズ加盟の造園業者の場合、年収450万円〜500万円程度は比較的達成しやすいとも言われており、土台として活用しながら独自顧客を増やしていく戦略は現実的です。
自営として年収を上げても、税金と社会保険料の負担を最適化しなければ手取りは増えません。ここが会社員との大きな違いであり、多くの独立初年度の人が見落としがちなポイントです。これが条件です。
個人事業主が確定申告を行う際、「白色申告」と「青色申告」の2種類があります。青色申告を選択することで、最大65万円の「青色申告特別控除」が受けられます。年収700万円の自営業者が青色申告を活用した場合、課税所得が65万円分圧縮されるため、所得税と住民税を合わせて約10万円〜15万円程度の節税効果が得られる計算になります。
具体的な税負担のイメージとして、事業所得500万円の一人親方が青色申告を活用した場合のシミュレーションを例にとると、青色申告特別控除65万円、基礎控除68万円、社会保険料控除約87万円を差し引いた課税所得は約280万円となり、所得税は約14万円程度に抑えられます。同じ所得でも白色申告では約24万円前後になるため、青色申告の活用は必須です。
また「家事按分」の活用も重要です。自宅を事務所として使っている場合、家賃の一部や電気代を事業経費として計上できます。車両費(軽トラックのガソリン・保険・車検費用)、携帯電話代、道具の購入費、資格取得の受験費用なども適切に経費計上することで、課税所得を合法的に圧縮できます。
さらに「小規模企業共済」への加入は、老後の備えと節税を同時に実現できる制度です。月額最大7万円(年84万円)を掛金として積み立てられ、その全額が所得控除の対象となります。年収700万円レベルの自営業者が満額活用すれば、所得税・住民税の節税効果は年間20万円以上になります。
節税と手取り最大化に関する詳細は以下の記事が参考になります。
マネーフォワード クラウド「一人親方が払う税金とは?所得別シミュレーションや経費と控除を解説」