玉掛けワイヤー安全荷重表|吊り角度と破断荷重の計算方法

玉掛けワイヤー安全荷重表の見方と使い方

玉掛けワイヤー安全荷重表の構成と読み方

玉掛け作業で使用するワイヤロープの安全荷重表は、ワイヤロープの直径、吊り方、吊り角度によって細かく分類されています。安全荷重表に記載されている数値は、破断荷重を安全係数6で割った値であり、作業時の最大使用荷重を示しています。
参考）一般社団法人日本クレーン協会
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建築現場では、6×24A種のワイヤロープが最も一般的に使用されており、JIS G3525規格品の安全率6が標準となっています。例えば、ワイヤロープ直径12mmの場合、切断荷重は7.24トン、1本吊りの基本安全荷重は1.20トンとなります。
参考）https://ootomo-jyuuki-unsou.com/catalog/kajyu.pdf
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安全荷重表を使用する際は、必ずワイヤロープの種類を確認してください。6×24と6×37では同じ直径でも安全荷重が異なるため、誤った荷重表を参照すると重大な事故につながる危険性があります。
参考）http://www.eonet.ne.jp/~y-326/newpage60.htm
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玉掛けワイヤーの吊り角度と張力係数の関係

玉掛け作業における吊り角度は、ワイヤロープに掛かる張力に大きく影響します。吊り角度が0度の場合、ワイヤロープ1本に掛かる張力は荷重の1.00倍ですが、吊り角度が60度になると1.16倍、120度では2.00倍にまで増加します。
参考）http://www.crane-club.com/study/dynamics/angle.html
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実際の作業例で説明すると、2本のワイヤロープで200kgの荷を吊る場合、吊り角度が0度では1本あたり100kgですが、吊り角度が120度になると1本あたり200kgの荷重が掛かることになります。このため、クレーン等安全規則では吊り角度は原則として60度以内で使用することが推奨されています。
参考）https://www.milcon.co.jp/data/pdf/product_2667.pdf
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吊り角度が大きすぎると、フックからワイヤロープが外れやすくなるだけでなく、ワイヤロープの強度限界を超える危険性も高まります。安全荷重表には吊り角度ごとの使用荷重が明記されているため、作業前に必ず確認してください。
参考）ワイヤロープ安全率と玉掛けワイヤロープ安全荷重表 - 土谷ロ…
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玉掛けワイヤーの破断荷重計算方法と安全係数

現場で素早く破断荷重を確認したい場合、簡易計算式を活用できます。6×24A種のワイヤロープの場合、破断荷重（トン）は「（ロープ径mm×ロープ径mm）÷20」で求められます。例えば、12mmのワイヤロープなら（12×12）÷20=7.2トンとなり、JIS規格値の7.24トンとほぼ一致します。
参考）ワイヤ荷重にこの公式！！知ってて当然！？
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基本使用荷重は、破断荷重を安全係数の6で割ることで算出できます。計算式は「（ロープ径mm×ロープ径mm）÷20÷6」となります。12mmのワイヤロープの場合、（12×12）÷20÷6=1.2トンが基本使用荷重です。​
玉掛け用ワイヤロープの安全係数は、クレーン等安全規則において6以上と定められています。これは、想定される荷重の6倍以上の強度を持つワイヤロープを使用しなければならないという意味であり、作業の安全性を確保するための重要な基準です。​

玉掛けワイヤーの種類別特性とA種G種の違い

玉掛け作業で使用されるワイヤロープには、素線構成によって6×24と6×37の2種類が主に使用されています。6×24は24本の素線を撚り合わせたストランド6本で構成され、玉掛けスリングとして最も一般的です。一方、6×37は37本の素線で構成され、6×24より強度が8%向上し、柔軟性にも優れているため、安全性や作業性を重視する現場で選ばれています。
参考）ワイヤロープとは?
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ワイヤロープの種別には、素線の破断荷重によってE種、G種、A種、B種の4種類があります。建築現場で多く使用されるG種は素線の破断荷重が1470N/mm²級で、メッキ付きのものを指します。A種は1620N/mm²級で、裸及びメッキのワイヤに適用され、G種よりも高い強度を持ちます。
参考）ワイヤロープの種別・種類・用途
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種別の選定は、作業環境や求められる強度によって判断します。G種のメッキワイヤは耐錆性に優れているため、屋外や湿気の多い環境での使用に適していますが、A種に比べると強度はやや劣ります。同じ直径でも種別によって切断荷重が異なるため、安全荷重表の確認時には必ず種別も合わせて確認する必要があります。​

玉掛けワイヤーの使用前点検と廃棄基準

クレーン等安全規則第220条では、玉掛け作業を行う際、その日の作業開始前にワイヤロープ等の異常の有無について点検を行わなければならないと定められています。点検で異常を認めた場合は、直ちに補修するか廃棄しなければなりません。
参考）玉掛ワイヤロープの廃棄基準
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ワイヤロープの廃棄基準は、クレーン等安全規則第215条で明確に定められています。具体的には、①ワイヤロープ一よりの間において素線の数の10%以上が切断しているもの、②直径の減少が公称径の7%を超えるもの、③キンク（ねじれ）したもの、④著しい形くずれ又は腐食があるもの、のいずれかに該当する場合は使用禁止です。
参考）玉掛け作業に使用する吊り具（スリング）の種類と点検基準
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一般社団法人日本クレーン協会｜玉掛け用ワイヤロープの点検項目と廃棄基準の詳細
廃棄基準に達していないかを確認するため、定期的な点検が不可欠です。摩耗状況は全長・全周にわたって目視で点検し、直径の測定には専用のノギスを使用します。腐食については、表面だけでなく内部の状態も確認する必要があり、スパイキ等でストランドを持ち上げて調査します。アイ加工部については、繊維心のはみ出し、編み込み部分の緩みや抜け、圧縮止め部のロープ抜け出し、スリーブの変形・摩耗・き裂がないかを重点的にチェックします。
参考）ワイヤロープの点検方法 【4.摩耗】
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玉掛けワイヤーの保管方法とメンテナンスの実践

玉掛けワイヤーロープを長く安全に使用するためには、適切な保管方法が重要です。使用後のワイヤロープは、土や油が付着したまま放置すると、次回の使用前点検で傷や変形が見つけにくくなり、廃棄基準に達した欠損を見逃す原因となります。
参考）玉掛け用具の管理のコツ~年末年始無災害運動~
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保管時は、湿気がなく風通しの良い屋内で、ワイヤロープのアイ部分を引っかけて吊り下げて保管することが推奨されます。保管場所では、ワイヤロープ径と長さごとに分類し、どのサイズのワイヤロープかすぐに分かるように表示札を付けておくと、作業効率が向上します。
参考）チェーンスリングをキレイに保つ！保管のコツ
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海水など腐食を促進する環境で使用した場合は、錆を防ぐために一度水洗いをして乾燥させてから、油などを薄く塗る防錆処置を施すことが重要です。長期間使用しない場合も同様に、防錆処置を行ってから保管してください。​
点検漏れを防ぐ工夫として、「み・ぎ・あ・し」（緑・黄・赤・白）の色付きビニールテープを活用する方法があります。月次点検を行った玉掛け用具に月ごとの色のテープを巻き付けることで、点検の実施状況を視覚的に確認できます。​

玉掛け作業における労働災害事例と防止対策

建設業におけるクレーン等による災害での死傷者数は年間447人にのぼり、死亡者数は26人と最も多く、その中でも玉掛け関連事故は大きな割合を占めています。実際の災害事例を知ることで、同様の事故を未然に防ぐことができます。
参考）玉掛けの業務特別教育の重要性と災害事例から学ぶ 作業環境と安…
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代表的な災害事例として、建設現場で長さ12m、重量約3トンのH鋼を4点吊りで吊り上げ中、高さ約5mでワイヤロープが切断し、下で合図作業中の作業者が下敷きになった事例があります。原因は、使用した玉掛けワイヤロープの公称径が10mmで、切断荷重が4.6トンしかなく、吊り荷に対して安全係数6を大きく下回っていたことと、廃棄基準に達したワイヤロープを使用し続けていたことでした。
参考）https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen_pg/sai_det.aspx?joho_no=439
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別の事例では、雨で濡れた鋼管を2点吊りで吊り上げた際、鋼管表面とワイヤーロープとの摩擦力が低下し、玉掛け位置が重心から離れていたため鋼管が傾斜してロープから滑り落ちた事故も発生しています。この事故では、被災者が右足首複雑骨折により約3ヶ月入院する重傷を負いました。​
一般社団法人建設業労働災害防止協会｜玉掛け作業の災害事例と防止対策
これらの災害を防ぐためには、以下の対策が重要です。①荷物の重量に対して適切な太さと本数のワイヤロープを選定する、②使用前点検を確実に実施し、廃棄基準に達したワイヤロープは絶対に使用しない、③荷物表面の状態（濡れ、油付着など）を確認し、必要に応じて滑り止め措置を講じる、④重心位置を考慮した玉掛け位置を設定する、⑤天候条件を考慮した作業計画を立てる、などが挙げられます。​

2本吊り・4本吊りの安全荷重表の活用法

玉掛け作業では、荷物の形状や重量に応じて2本吊り、3本吊り、4本吊りなどの吊り方を選択します。同じワイヤロープを使用しても、吊り方によって使用可能な安全荷重が大きく異なります。​
2本2点吊りの場合、ワイヤロープ径12mmで吊り角度60度のときの安全荷重は2.2トンです。一方、4本吊りでは同じ条件でも4.5トンまで吊ることが可能です。ただし、2本4点あだ巻き吊りおよび4本4点吊りは、安全のため3本吊りとして安全荷重を算出する必要があります。​

2本4点半掛け吊りは、吊り角度60度以内で使用し、ワイヤロープと角あてとの接触による強度低下を考慮して、安全のために1ランク太いワイヤロープを使うことが推奨されます。このような特殊な吊り方では、通常の安全荷重表に加えて、現場ごとの安全マニュアルも参照してください。​
吊り方の選定は、荷物の重量だけでなく、重心の位置や形状、作業場所のスペースなども考慮する必要があります。使用するワイヤロープの長さが異なる場合は、各ワイヤロープの張力が異なるため、特に注意が必要です。​

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