

ALCパネルは吸水性が大きく表面強度も小さいため、外壁の防水・耐久性は「仕上げ」と「目地の止水」に大きく左右されます。ALC協会の資料でも、雨がかりとなるALCパネル目地はシーリング材で水密・気密を確保する前提が示されています。さらにALCに使用するシーリング材は、耐久性があり経年劣化が少なく、かつ「50%引張応力0.3N/mm2以下」のモジュラスが低いタイプを推奨しています。
ここで言う低モジュラスは、単に“柔らかい”というより、目地が動いたときに接着面へ過大な応力を戻しにくい性格のことです。ALCは目地のムーブメントが出やすく、硬い(高モジュラス)材を入れると、シーリングが元に戻ろうとする力が強くなり、結果として切れ・剥離を誘発しやすい、という考え方になります。現場感としては「ALCはシーリングが切れる前に、端部が欠けたり、接着界面が負けたりも起こり得る」ので、応力を小さくする設計が効きます。
材料の系統としては、ALC協会資料ではロッキング構法や横壁アンカー構法の目地(ワーキングジョイント)では、よりグレードの高いポリウレタン系・変成シリコーン系が望ましい、と整理されています。変成シリコーン系は一般に耐候性が高く、製品によっては塗装対応や汚染抑制をうたうものもあり、外装改修の「塗って仕上げる」前提と相性が良いことが多いです。
参考:ALC協会「ALCパネルの 仕上げおよび防水(第9版)」のシーリング材に関する“設計上の留意点(低モジュラス推奨、2面接着、材種の考え方)”
https://www.alc-a.or.jp/pdf/alc_pa9.pdf
ALC目地のシーリングで、材料選定と同じくらい効くのが「2面接着」を確実に作ることです。ALC協会資料でも、目地底にボンドブレーカーやバックアップ材を用いて2面接着にするよう明記されています。2面接着にする理由はシンプルで、目地が動いたときにシーリング材が“素直に伸び縮み”できるようにするためです。
3面接着(側面+底面が全部くっつく)になると、動いたときに材料内部へ複雑な応力が入り、中央が裂けたり、端部が剥がれたりしやすくなります。特にワーキングジョイントは日射・温度・風圧・躯体変形などで繰り返し動くため、2面接着が崩れた瞬間に寿命が短くなります。
バックアップ材は単なる“詰め物”ではなく、(1)所定の深さを作る、(2)底面接着を避ける、(3)施工時の押さえ(ヘラ仕上げ)で形状を安定させる、という意味があります。ボンドブレーカーはテープ状で底面の接着を止める役割に強く、バックアップ材は深さと形状の安定に寄与しやすい、という使い分けになります。施工の癖として、ALCの目地は「深い溝形状」になりがちなので、バックアップ材で深さを作らずに材料を奥まで“無駄に充填”すると、硬化収縮や内部未硬化リスク、材料ロスも増えやすい点は注意です。
ALCは吸水性が大きく、表層の状態も現場ごとにブレます(粉っぽい、含水している、旧塗膜が残る、など)。そのため、プライマーの役割は「一応塗る」ではなく、接着性を安定させるための工程そのものです。ALC協会資料でも、充填前にプライマー塗布が必要で、メーカー指定品を被着体に適したものとして使うこと、気象条件(低温・高温・降雨、被着面湿潤)によって所定性能の確保が難しいことが示されています。
意外と見落とされるのが「ALCは濡れていなくても、内部に湿りが残る」ケースです。降雨後や結露後、表面を拭いて乾いたように見えても、目地内側のALCが湿っていると接着不良の誘因になります。特に冬季の改修や、日陰面・北面は乾燥が遅いので、含水チェック(簡易水分計でも可)を入れるだけで不具合率が下がります。
また、火災区画など“漏えい防止”の文脈でも、ALCパネル等の目地にシーリング材を充填し、施工に先立ち接着性試験を行う考え方が示されています。現場で全数試験は難しくても、材料ロット変更時・下地状況が変わる面・既存シール撤去後の面など、ポイントを絞って付着確認をすると、やり直しコストが読めるようになります。
ALC外壁は「シーリング→塗装(仕上げ)」がセットになりやすい一方、ここで起きる代表的なクレームが“黒ずみ筋”です。ブリード汚染は、シーリング材に含まれる可塑剤などが時間経過で塗膜側へ移行し、塗膜がベタつき、そこへ埃や排気ガス等が付着して黒ずみが強調される現象として説明されています。つまり、シーリング単体の問題というより「シーリング材×塗料×工程」の相性問題です。
対策の方向性は3つあります。
さらに現場目線で“意外に効く”のは、ヘラ押さえで薄層部(極端に薄い部分)を残さないことです。ある変成シリコーン系製品の注意事項でも、厚み1mm以下の薄い部分は塗装できない、薄層部は紫外線劣化を受けやすいので薄層部が残らないよう施工する、といった注意が明示されています。塗装工程の不具合は材料のせいにされがちですが、実際には「薄層部の残り」「養生テープ際の仕上げ」「目地形状の不揃い」が原因で局所的に劣化が進み、汚れ筋が出ることも多いです。
参考:塗膜を汚染するブリード現象(原因と対策の概要)
塗装後に起きるブリード現象(塗膜汚染)の原因と対策について
検索上位では「材料の種類」や「打ち替え手順」が中心になりやすい一方で、寒冷地では“目地の微小な欠陥”が凍害に直結しやすい点が、施工管理として見落とされがちです。ALC協会資料では、外壁仕上げの不具合は漏水とALCパネルの耐久性低下の原因になり、寒冷地では凍害の原因にもなる、と明確に書かれています。さらに凍害の説明として、降雨・融雪水など外部から浸入する水が原因になるパターンがあり、シーリング部分に欠陥があるとその部分に大きな劣化が生じる、という趣旨が示されています。
ここが意外な落とし穴で、夏場は「多少のピンホールや端部の未充填」でも表面化しないのに、冬に融雪水が吸い込まれる→夜間凍結→膨張→微細ひび割れ拡大、という順で一気に悪化することがあります。つまり寒冷地では、シーリングの“止水”だけでなく「ALCが水を吸う前に止める」品質が重要です。長野のように寒暖差が大きい環境では、目地の動きも出やすいので、低モジュラス+2面接着+乾燥確認の3点セットが効きます。
現場での具体策としては、次のような管理が現実的です。
この視点を入れておくと、単なる材料紹介記事ではなく「なぜその施工管理が必要か」まで説明でき、上司チェックでも“現場で使える”記事として評価されやすくなります。