JIS規格ナット種類選定と用途別適用指針

JIS規格ナット種類選定と用途別適用指針

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JIS規格ナット種類と特徴

JIS規格ナット3種の基本構造
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1種(片面面取り)

表面側外周と内穴のみ面取り、方向性ありの標準タイプ

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2種(両面面取り)

両側面外周と内穴に面取り、表裏なしの汎用タイプ

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3種(低ナット)

2種より低い薄型設計、空間制限箇所向け

JIS規格ナット1種の構造特徴と適用場面

JIS規格B1181に基づく1種ナットは、片側(表面側)の外周と締め付け接触面の内側穴のみに面取り加工が施された構造となっています。この設計により、底面(座面)全体がねじ込み時の結合面として機能し、他の種別と比較してより大きな座面積を確保できます。
建築業界における実用例として、基礎工事や主要構造部での使用が挙げられます。建築基準法では、基礎や主要構造部等に用いるボルトの材料について、JIS規格適合品の使用が規定されており、1種ナットもその対象となっています。
⚠️ 重要な注意点:1種ナットには締め付け方向が存在するため、設計時にはナットの向きを考慮する必要があります。基本的に外すことが想定されない箇所への使用に適しており、座面が大きいことから他の種別に比べて大きなトルクをかけることが可能です。

JIS規格ナット2種の両面面取り設計メリット

2種ナットの最大の特徴は、両側面の外周と内穴すべてに面取り加工が施されている点です。この設計により、表裏の区別がなく、作業者がナットの向きを気にせずに取り付け作業を行うことができます。
建築現場での実用性において、2種ナットは組立作業の効率化に大きく貢献します。ねじ込み時にスムーズな動作が可能で、ねじ山や部材を傷めにくい特性があります。特に、ナットの向きを揃えにくい箇所や、角で部材を傷つけたくない箇所での使用に適しています。
🔄 作業効率の向上:2種ナットは締め付け後に外す(緩める)ことを想定した箇所に最適です。これは、表裏が同じ座面を持つため、メンテナンス時の作業性が大幅に向上するためです。

JIS規格ナット3種の薄型設計と強度特性

3種ナットは2種ナットと同様の両面面取り加工が施されていますが、最大の特徴は低ナット(薄型)設計にあります。通常、3種は2種に比べて高さが低く設計されており、6割ナットとも呼ばれます。
この薄型設計により、高さ制限がある箇所での使用が可能になります。例えば、M10の場合、1種・2種の高さが8mmであるのに対し、3種は6mmとなっており、呼び径に対する高さ寸法の割合で区分されています。
⚠️ 強度面での注意事項:3種ナットはかかり代が少なくなるため、強度は他の種別に比べて低めとなります。そのため、あまり大きなトルクをかける必要がない箇所への使用が適しており、使用箇所は限定される傾向にあります。

JIS規格ナット本体規格品と附属書品の技術的相違

JIS B 1181:2014における本体規格品と附属書品の違いは、国際標準化への対応と強度性能の向上が主な要因です。本体規格品は「スタイル1」「スタイル2」と呼ばれ、ISO規格に準拠した形状・寸法に変更されています。
本体規格品の技術的特徴

  • ねじ山のせん断破壊に対する抵抗力向上のため、ナット高さが附属書品より高い設計
  • 強度区分の内容が改訂され、同じ強度区分比較では本体規格品の方が附属書品より高強度
  • 製品の寸法、形状、仕上がり状態による部品等級(A、B、C)を設定

附属書品の位置づけ:従来使用されていた「1種」「2種」「3種」は附属書として残存していますが、「将来廃止するので、新規設計の機器、部位などには使用しないのがよい」と明記されています。
🔄 移行推奨の背景:世界調達や海外生産などへの対応のため、ISO規格準拠への移行が推進されており、建築業界でも新規設計時には本体規格品の採用が推奨されています。

JIS規格ナット強度区分と表示規定による品質管理

JIS規格では、ナットの強度区分と製造業者識別記号の表示が規定されており、品質管理の重要な要素となっています。表示方法は、ナットの側面または座面に、くぼみ加工または刻印で施すか、外周部への表示が標準的です。
強度区分の技術的意味

  • 炭素鋼及び合金鋼製締結用部品において、並目ねじ及び細目ねじに対応した強度区分が設定
  • JIS B 1052-2:2014により、機械的性質が詳細に規定
  • 同じ強度区分でも本体規格品と附属書品では実際の強度値が異なる

🔍 品質識別の実務:建築現場では、使用するナットの強度区分を確認することで、構造計算に適合した適切な部材選定が可能になります。特に、高力ボルト接合における品質管理では、この表示確認が重要な検査項目となっています。

 

建築基準法に基づく構造部材では、JIS規格適合品の使用が義務付けられているため、表示による品質確認は法的要求事項でもあります。表示が不明瞭な製品や表示のない製品の使用は、建築確認検査時に問題となる可能性があるため、調達時の品質管理が重要です。