
JIS B2401で定められたP規格は、日本国内でG規格と並ぶ代表的なOリングシリーズです。P規格の記号「P」はPackingの頭文字に由来し、運動用・円筒面固定用・平面固定用として広く使用されています。
P規格の線径は以下の5種類に分類されます。
P規格の公差設定は運動用途を考慮した精密設計となっており、線径公差は±0.08mm〜±0.15mm、内径公差は±0.14mm〜±2.82mmと寸法に応じて段階的に設定されています。
実際の建設現場では、P-400以降のサイズでは5刻み(P-400〜P-600)、10刻み(P-600〜P-1000)、20刻み(P-1000以上)でサイズ展開されており、大型設備への対応が可能です。
G規格は固定用シールとして設計された規格で、線径3.1mmと5.7mmの2系統に大別されます。G規格の寸法特性は固定用途に最適化されており、P規格と比較して溝設計の自由度が高い点が特徴です。
線径3.1mm系(G-25〜G-145)
内径25mmから145mmまでの範囲をカバーし、小〜中型の固定シール用途に適用されます。実際の内径寸法は呼び番号から0.6mm減算した値となり、例えばG-25の場合は内径24.4mm±0.25mmとなります。
線径5.7mm系(G-150以降)
内径150mm以上の大型サイズで、線径5.7mm±0.13mmの太径タイプです。G-300までがJIS規格正式寸法で、それ以降はメーカー延長規格として G-1500程度まで製造されています。
G規格の公差設定は固定用途を反映し、内径公差は±0.25mm〜±2.42mmと段階的に設定されています。溝設計では円筒面のD寸法とd寸法の芯ずれ基準が<0.10mmと厳格に規定されており、建設設備の信頼性確保に重要な役割を果たしています。
不動産業界では空調設備や給排水システムでG規格が多用されており、特にG-150〜G-300サイズは配管フランジ部のシールに頻繁に使用されています。
V規格は真空フランジ専用に開発された特殊なOリング規格で、高度な気密性が要求される用途向けです。建設業界では、半導体製造設備や研究施設の真空システムで重要な役割を担っています。
V規格の線径は3段階構成。
V規格の寸法精度は真空用途の要求に応じて高精度設定されており、内径公差は±0.20mm〜±6.67mmと幅広く設定されています。実際の内径寸法は呼び番号から特定の減算値を差し引いた値となり、例えばV-480の場合は内径475.0mm±3.30mmとなります。
真空フランジ用途では、Oリングの材質選定も重要で、一般的にはフッ素ゴム(FKM)やパーフロエラストマー(FFKM)が使用されます。V規格の溝設計は真空リークを防止するため、表面粗さや角部Rの仕様が厳格に規定されています。
JIS規格Oリングの寸法公差は、用途と材質特性を考慮した精密な設定がなされています。建設現場での実装時には、これらの公差を正確に理解し、適切な溝設計を行うことが重要です。
線径公差の実務対応
P規格とG規格では線径公差が異なり、P規格は±0.08mm〜±0.15mm、G規格は±0.13mmと設定されています。この差異は用途の違いを反映しており、運動用のP規格ではより厳しい公差管理が求められます。
内径公差の段階設定
内径が大きくなるほど公差も拡大する段階設定となっており、これは製造技術と実用性のバランスを考慮した設計です。例えば。
溝寸法設計の実践的注意点
溝幅Gの設計では、バックアップリングの有無によって寸法が変わります。バックアップリング無しの場合とあり(片側・両側)の場合で溝幅が段階的に設定されており、設計時にはこの点を必ず確認する必要があります。
面取り寸法Rは最大値が規定されており、加工時の品質管理ポイントとなります。特に高圧用途では面取り寸法の管理が重要で、規定値を超えると圧力による損傷リスクが高まります。
実際のプロジェクトでOリング規格を選定する際は、JIS規格だけでなく、メーカー独自規格や国際規格との互換性も考慮する必要があります。建設業界では、設備の調達先や保守性を考慮した規格選定が重要です。
規格互換性の実態
JASO F404規格とP規格には一部互換性があり、同一寸法でありながら呼び方が異なるケースがあります。ただし内径公差が異なるため、完全な互換性はなく、設計時には注意が必要です。
AS568規格(米国規格)との対応関係も把握しておくべきで、特に海外メーカーの設備導入時には重要な知識となります。旧JIS呼び番号とAS呼び番号の対応表は、既設設備の保守や部品調達で頻繁に参照されます。
メーカー独自規格への対応
実際の市場では、JIS規格外の中間サイズや延長サイズが多数流通しています。例えば。
これらの独自規格は、製造メーカーによる差別化や部品管理の効率化を目的としていますが、調達時の混乱を避けるため、仕様書では必ずJIS規格番号を併記することを推奨します。
保守性を考慮した規格選定
建設プロジェクトでは、完成後の保守性も重要な選定要因です。汎用性の高いP規格・G規格を優先的に選定し、特殊規格は最小限に留めることで、将来の部品調達リスクを軽減できます。
特に大型施設では、同一規格で統一することで在庫管理の効率化が図れ、緊急時の対応速度向上にもつながります。設計段階での規格統一は、施設運営の総合コストに大きく影響するため、十分な検討が必要です。
JIS規格の技術資料は桜シールなどの専門メーカーから詳細情報が提供されており、実務での参考資料として活用できます。