P-Tレーティングとは配管フランジバルブ規格基準

P-Tレーティングとは配管フランジバルブ規格基準

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P-Tレーティングとは

P-Tレーティングの概要
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基本定義

圧力-温度基準表による配管システムの安全基準

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適用対象

フランジ・バルブ・配管部材の許容使用条件

温度圧力関係

高温時の許容圧力低下を数値化した規格表

P-Tレーティングの基本的な意味と定義

P-Tレーティング(P-T Rating)とは、Pressure-Temperature Ratingの略称で、日本語では「圧力-温度基準」と呼ばれる重要な規格基準です。この基準は、配管システムにおけるフランジやバルブなどの部材が、特定の温度条件下でどの程度の圧力まで安全に使用できるかを示した基準表です。
建築従事者にとって、この規格は配管設計において欠かすことのできない基準となっています。具体的には、呼び圧力と材質に応じた温度ごとの最高使用圧力のリストとして活用されます。
一般的に、温度が高くなると材料の強度が低下するため、使用可能な最高圧力も下がる傾向にあります。この物理的特性を数値化して規格表にまとめたものがP-Tレーティングです。
特筆すべき点は、このレーティングシステムが石油工業や化学プラントなど、厳しい使用環境下での安全性確保を目的として開発された背景があることです。使用温度範囲は、LNG装置の**-165℃から直接脱硫装置の400℃**を超える範囲まで対応しています。

P-Tレーティングの規格体系と標準化

P-Tレーティングには複数の規格体系が存在し、それぞれ異なる数値基準を持っています。主要な規格にはJPI(石油学会規格)JIS(日本工業規格)、**ASME(アメリカ機械学会規格)**があります。
JPIとASMEのP-Tレーティングは同じ数値を使用していますが、JPIとJISでは数値が異なる点が重要です。これは規格制定の経緯と適用対象の違いによるものです。
ASME B16.34規格では、P-Tレーティングが以下の3つのクラスに分類されています:

  • 標準クラス:基準応力8750psiを基準とした計算式による設定
  • 特別クラス:基準応力7000psiを基準とした円筒胴の肉厚強度計算
  • 限定クラス:呼び径2-1/2以下の小型弁に適用される特別計算式

呼び圧力の表記方法も規格により異なります。JIS規格では「5K・10K・16K・20K・30K・40K・63K」という記号が使用され、ANSIやJPIでは「クラス150・クラス300」のような分類が採用されています。
この規格統一により、個別設計の工数削減と安全性の確保を両立させています。

P-Tレーティングによる材料選定の実務応用

P-Tレーティングの実務応用において、材料選定は最も重要な要素の一つです。配管システムでは、使用される流体の特性や運転条件に応じて、適切な材料グループを選択する必要があります。
材料選定時には以下の要素を総合的に考慮します。

  • 温度特性:高温での強度低下、低温での脆性破壊リスク
  • 耐食性:酸やアルカリに対する化学的安定性
  • 耐摩耗性:高速流体による摩耗への抵抗性
  • 加工性・溶接性:製造・施工時の作業性

特に建築分野では、空調設備や給排水システムにおいて、季節による温度変化や流体の種類(冷媒、温水、蒸気など)に応じた適切な材料選定が求められます。

 

P-Tレーティング表を使用することで、設計者の経験に依存せず、標準化された安全基準で材料選定が可能になります。これにより、設計ミスによる事故リスクを大幅に軽減できます。
また、バルブ選定では本体材料のP-Tレーティングだけでなく、パッキン、ガスケット、ボールシート、Oリングなどの付属部材のP-Tレーティングも確認が必要です。これらの部材は一般的に金属部材より低い許容値を持つため、システム全体の制約要因となることがあります。

P-Tレーティング補間計算と実用的な活用方法

実際の設計業務では、P-Tレーティング表に記載されていない中間値の温度・圧力条件での使用が必要になる場合があります。このような状況で活用されるのがP-Tレーティング補間計算です。
補間計算では、既知の2つの圧力と温度から直線近似補間計算を実行し、2点間の値を算出します。この計算手法は、既知の2つの圧力と温度の間が直線的に変化するものと仮定した線形補間法です。
補間計算の活用場面。

  • 🔸 季節変動による温度変化への対応
  • 🔸 プロセス条件の微調整時
  • 🔸 既存設備の運転条件変更時
  • 🔸 安全率を考慮した設計マージン検討

ただし、補間計算を使用する際の注意点として、計算結果はあくまで2点間の線形近似であり、実際の材料特性は非線形的に変化する可能性があることを理解しておく必要があります。
現代では、多くのバルブメーカーや配管部材メーカーが、オンライン計算ツールを提供しており、設計者は容易に補間計算を実行できる環境が整備されています。これらのツールを活用することで、設計精度の向上と作業効率化を図ることができます。

 

P-Tレーティング統一化の背景と建築業界への影響

P-Tレーティングの統一化は、配管部材の規格間不整合という深刻な問題を解決するために実現されました。従来は、フランジの個別規格(JPI-7S-15、JPI-7S-43など)とバルブの個別規格ごとに異なるP-Tレーティングが定められており、規格改訂時に整合性が保てない状況が発生していました。
この問題の具体例として、バルブ本体と接合するフランジで一方の規格が未改訂の場合、最高使用圧力に食い違いが生じるという深刻な不都合がありました。これは設計ミスや施工エラーの原因となり、安全性に重大な影響を与える問題でした。
解決策として制定されたのが**JPI-7S-65(フランジおよびバルブのP-Tレーティング)**です。この規格により、すべてのフランジおよびバルブに共通適用される統一基準が確立されました。
建築業界への影響と効果。

  • 設計工数の大幅削減:個別計算が不要になり標準表参照で済む
  • 安全性の向上:統一された基準による設計ミス防止
  • コスト削減:規格品の使用による経済性向上
  • 品質の安定化:標準化された材料・部材の使用

特に大型建築プロジェクトでは、多種多様な配管システムが複合的に設置されます。空調設備、給排水設備、消防設備、ガス設備など、それぞれ異なる運転条件を持つシステムにおいて、統一されたP-Tレーティングの存在は設計・施工・維持管理の全段階で大きなメリットをもたらしています。

 

また、国際化が進む現代の建築業界では、海外製の配管部材を使用する機会も増えており、ASME基準との整合性を持つJPI規格の重要性はますます高まっています。これにより、グローバルスタンダードに対応した安全で効率的な配管システムの構築が可能となっています。