

自社でSDSを作れば費用ゼロだと思っているなら、それは大きな誤算です。
SDS(Safety Data Sheet:安全データシート)は、化学物質の危険性・有害性に関する情報を記載した文書です。塗料、シーリング材、接着剤、防錆剤など、建築現場では日常的に多くの化学物質が使われています。これらを取り扱う事業者には、労働安全衛生法第57条の2に基づき、SDSの作成と取引先への交付が法的に義務付けられています。
「うちはメーカーじゃないから関係ない」と思っていませんか。実は、化学品を混合・調合して別の製品として販売・提供している場合、建築業者も作成義務者になり得ます。つまり現場で独自配合の下地処理剤を使って販売している業者は、SDSを自社で用意しなければなりません。
SDS作成委託とは、この義務対応を専門の外部業者に依頼することです。化学物質の成分分析から危険有害性の分類、法令項目の記載まで、専門知識が求められる作業を丸ごとアウトソーシングできます。
自社内に化学の専門家がいない建築会社にとっては、特に有効な選択肢です。
厚生労働省|化学物質のリスクアセスメント・SDSに関する情報
上記リンクでは、SDSの作成義務の根拠となる法令と、GHS分類の基準について詳しく確認できます。
SDS作成委託の費用は、対象となる化学物質の複雑さや成分数によって大きく変わります。一般的な相場としては、シンプルな単一成分製品で1件あたり3,000円〜10,000円程度、複合成分や混合物の場合は1件15,000円〜50,000円以上になることも珍しくありません。
「1件数千円なら安い」と感じるかもしれません。しかし建築業では取り扱い化学品の種類が多いため、まとめると年間で数十万円規模になるケースもあります。20種類の製品を一括で委託すれば、それだけで20〜60万円のコストが発生します。
コストを抑えるためのポイントが一つあります。複数製品をまとめて依頼する「一括委託プラン」を提供している業者を選ぶと、単価を下げやすくなります。また、既存SDSの更新(改訂対応)は新規作成より安価なことが多いため、初回の委託費用と更新費用を分けて見積もることが重要です。
費用だけで業者を選ぶのは危険です。
法改正への対応が遅れている業者に委託すると、古い基準のSDSを納品されるリスクがあります。2023年の労働安全衛生法改正で化学物質規制が大幅に強化されたため、改正後の法令に対応した実績があるかどうかを必ず確認してください。
委託先を選ぶ際に重要なのは、価格だけでなく「法令対応力」「業種への理解」「納期の安定性」です。建築業に特有の化学物質(シリカ含有製品、有機溶剤系塗料など)を多く取り扱うことを念頭に、以下の5点を確認しましょう。
まず確認すべきはGHS(化学品の分類および表示に関する世界調和システム)対応の有無です。国内法対応だけでなく、輸出入がある場合は各国のGHS基準に合わせたSDS作成が必要になります。
次に労働安全衛生法2023年改正への対応実績です。化学物質の自律的管理に関する新制度への対応が義務化されており、旧基準のままでは法的に不十分になります。
3点目は建設・塗料・接着剤分野の作成実績です。取り扱い化学物質の分野ごとに、危険有害性の評価基準が異なります。建築業の現場で使われる製品への知識が深い業者を選ぶと、成分の見落としリスクが減ります。
4点目は納品後のサポート体制です。法改正や成分変更があった際の改訂対応を、追加費用なしで一定期間行ってくれる業者かどうかを確認します。
5点目は秘密保持契約(NDA)の締結可否です。製品の成分情報は企業秘密に当たるため、委託時には必ずNDAを締結しましょう。この確認を怠ると、競合他社に成分情報が漏れるリスクがあります。
これが委託先選定の基本です。
中央労働災害防止協会|労働安全衛生法第57条の2(SDS交付義務)条文
上記リンクでは、SDSの交付義務の対象となる化学物質の範囲と、事業者の責任範囲を確認できます。
法的リスクについては、多くの建築業者が軽視しがちな部分があります。SDSを作成しなかった場合、または内容に重大な不備があった場合、労働安全衛生法違反として6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があります。
ただし、罰則よりも深刻なのが民事上のリスクです。
現場作業員が化学物質による健康被害を受けた場合、SDSの不備や未交付が原因の一つとして認定されると、損害賠償請求の対象になります。過去の判例では、化学物質による職業性疾患に対して数百万〜数千万円規模の賠償が認められたケースもあります。
また、取引先への未交付も問題です。下請け業者や元請け業者が化学品を受け取る際にSDSの提出を求めるケースが増えており、未提出だと取引停止や入札除外につながる可能性もあります。
2023年の法改正では、リスクアセスメントの対象物質が大幅に拡大されました。以前は対象外だった物質も今は対象になっているケースがあります。古いリストで管理していると、知らないうちに義務違反になっているリスクがあります。
法改正に対応しているか、定期的な確認が必要です。
自社の化学品管理台帳を年に1度見直し、SDS未整備の品目がないか棚卸しすることが、リスク管理の第一歩です。化学物質管理に特化したクラウドサービス(例:MSDS-Net、chemSHERPAなど)を活用すると、物質リストの管理と更新を効率化できます。
厚生労働省|2023年施行 化学物質規制の見直しに関する特設ページ
上記リンクでは、2023年以降に適用される化学物質の自律的管理制度の全体像と、事業者が対応すべき具体的な事項を確認できます。
SDS作成を委託したとしても、それで安心してはいけません。実は、委託後に最もトラブルが起きやすいのが「社内での管理引き継ぎ」の場面です。
担当者が退職・異動した際に、どの製品のSDSがどの委託先に依頼されているか分からなくなるケースが多く報告されています。大手ゼネコンのグループ会社で実際にあった話として、委託SDS管理担当が突然退職し、40種類以上の製品のSDS更新が半年以上放置されたという事例があります。
委託先との契約内容、納品物の保管場所、更新スケジュールをまとめた「SDS委託管理台帳」を社内に必ず作成しておきましょう。これが業者の引き継ぎ体制の基本です。
台帳には以下の項目を含めると実用的です。
台帳管理はExcelでも始められます。ただし、化学物質の種類が50品目を超えてくると、Excelでの管理は更新漏れのリスクが高まります。専用の化学品管理ツールへの移行を検討するタイミングです。
SDS委託は「依頼して終わり」ではありません。
外部業者にSDSを作ってもらったとしても、その内容が現場の実態に合っているかを社内で確認できる人材を育てることも重要です。化学物質管理者の選任義務(2024年4月から一定規模の事業場で義務化)も念頭に置きながら、社内体制の整備を進めましょう。
厚生労働省|化学物質管理者の選任・教育に関するガイドライン(PDF)
上記リンクでは、2024年から義務化された化学物質管理者の選任要件と、必要な教育訓練の内容を確認できます。

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