
SUS管の規格は主に2つのJIS規格によって体系的に分類されています。**JIS G 3448(一般配管用ステンレス鋼鋼管)**は建築設備配管用として規格化されており、従来のステンレス鋼管に比べて薄肉設計が特徴です。一方、**JIS G 3459(配管用ステンレス鋼鋼管)**は耐食用・低温用・高温用・消火用などの用途に対応し、より厚肉で高耐久性を求められる環境での使用を前提としています。
JIS G 3448では以下の4種類が規定されています。
これらの分類により、使用環境に最適な材質選択が可能になっています。特に注目すべきは、使用圧力が2MPa以下での使用が推奨されている点で、継手等システムの耐圧性能との整合性を重視した設計思想が反映されています。
SUS管の寸法規格は、外径と厚さの組み合わせによって詳細に規定されています。JIS G 3448における外径範囲は、最小9.52mm(呼び方8Su)から最大318.5mm(呼び方300Su)まで幅広くカバーされており、厚さも0.7mmから4.5mmまで段階的に設定されています。
主要な寸法規格例。
外径の許容差は管径によって異なり、小径管では±0.34mm、大径管では±1%と相対的な許容差で管理されています。この精密な寸法管理により、配管継手との適合性や施工精度が確保されています。
厚さの許容差も同様に厳格で、薄肉管では±0.12mm、厚肉管では±0.40mmまでの範囲で管理されており、これにより配管システム全体の耐圧性能と安全性が担保されています。
SUS304とSUS316の選択は、使用環境の腐食性と温度条件によって決定されます。SUS304は最も一般的なステンレス鋼で、通常の給水・給湯配管に適用されますが、塩化物イオン濃度の高い環境では孔食や応力腐食割れのリスクが高まります。
SUS304の特徴。
SUS316の特徴。
化学成分の違いにより、SUS316はより過酷な腐食環境に対応できます。特にモリブデン(2.00~3.00%)の添加により、塩化物環境での耐孔食性が大幅に向上しており、海岸地域の建築物や化学プラントでの採用が一般的です。
近年注目されているSUS315J1、SUS315J2は、銅とニッケルの配合を調整することで、SUS316並みの耐食性を持ちながら、応力腐食割れに対してより高い抵抗性を示すため、温水配管での採用が増加しています。
SUS管の製造方法は品質と用途適性に大きく影響します。JIS G 3448では以下の製造方法が規定されています。
自動アーク溶接(-A表示)。
電気抵抗溶接(-E表示)。
レーザー溶接(-L表示)。
製造方法による品質差は、特に耐漏れ性試験と耐圧性能試験で明確に現れます。すべての製造方法で2.5MPaの水圧試験または0.6MPaの空気圧試験をクリアする必要がありますが、レーザー溶接品は特に高い信頼性を示します。
浸出性能試験についても製造方法により差が生じ、水道法適用管では味・臭気・色度・濁度のほか、六価クロム化合物0.05mg/L以下、鉄化合物0.3mg/L以下の厳格な基準をすべてクリアする必要があります。
国際的なプロジェクトや輸入品との互換性を考慮する際、日本のJIS規格と海外規格との寸法対照が重要になります。特にANSI(米国)、DIN(ドイツ)規格との対照では、同じ呼び径でも実際の外径に差異があることが判明しています。
主要な寸法差異例。
これらの寸法差は配管継手の選択や施工方法に直接影響します。特にDN65クラスでは3mm以上の外径差があるため、海外製継手との組み合わせ時には十分な検証が必要です。
互換性確保のポイント。
さらに、材質表記についても注意が必要で、JISのSUS304は海外では304、SUS316は316と表記されますが、化学成分の許容範囲に微細な差異があるため、重要用途では成分分析書による確認が推奨されます。
近年のグローバル化に伴い、これらの規格差を理解した適切な材料選定が、設備の長期安定稼働と保守コスト削減に直結する重要な技術課題となっています。