
配管継手寸法表は、建築・設備工事において正確な部材選定と施工品質確保のための重要な技術資料です。日本の配管寸法体系は、アメリカの影響を受けた独特の呼び径システムを採用しており、同一の配管径に対してA呼称(ミリ表示)とB呼称(インチ表示)の二重表記が使われています。
寸法表の基本構成は以下の通りです。
注意すべき点として、呼び径は配管の内径や外径を直接表しているわけではありません。これは歴史的経緯により、流体の流量能力を基準とした名目上の寸法であり、実際の設計・施工では必ず寸法表で実寸を確認する必要があります。
JIS規格では、継手の種類ごとに詳細な寸法規定が設けられており、特にJIS B 2301(ねじ込み式可鍛鋳鉄製管継手)、JIS K 6743(水道用硬質ポリ塩化ビニル管継手)などが代表的です。
配管継手の寸法選定において最も重要なのが、A呼称とB呼称の正確な対応関係の理解です。以下に主要サイズの対応表を示します。
A呼び径 | B呼び径 | 継手外径 | フランジ外径 | パイプ外径 |
---|---|---|---|---|
8A | 1/4B | 13.8mm | 13.4mm | 13.8mm |
10A | 3/8B | 17.3mm | 17.8mm | 17.3mm |
15A | 1/2B | 21.7mm | 22.2mm | 21.7mm |
20A | 3/4B | 27.2mm | 27.7mm | 27.2mm |
25A | 1B | 34.0mm | 34.5mm | 34.0mm |
32A | 1¼B | 42.7mm | 43.2mm | 42.7mm |
40A | 1½B | 48.6mm | 49.1mm | 48.6mm |
50A | 2B | 60.5mm | 61.1mm | 60.5mm |
B呼称の読み方には日本独自の慣習があり、1インチ以下は分数表記で「分(ブ)」と呼ばれます。例えば1/8Bは「1分(イチブ)」、3/4Bは「6分(ロクブ)」となります。これは1インチを8等分した単位に基づく表現で、現場では「ヨンブ」(1/2B)、「ロクブ」(3/4B)といった呼び方が一般的です。
突き合わせタイプの継手では、パイプ外径と継手外径が同一になりますが、差込みタイプのフランジでは、フランジ外径がパイプ外径より若干小さく設定されている点も重要な設計上の配慮です。
継手選定時は、接続するパイプの規格(SGP、SUS、塩ビ管等)によって実際の外径が異なる場合があるため、必ず該当する規格の寸法表で確認することが不可欠です。
ねじ込み式管継手は、JIS B 2301に規定される可鍛鋳鉄製継手が標準的で、施工性と信頼性のバランスに優れた接続方法です。主要な継手種類と特徴的な寸法を以下に示します。
エルボ(90°・45°)の寸法規格
チーズ・クロスの寸法規格
ソケット・ニップルの寸法規格
ねじ込み式継手の重要な寸法項目として、ねじ込み深さがあります。JIS規格では最小ねじ込み深さが規定されており、適切な接続強度確保のため必ず遵守する必要があります。
現場施工では、以下の寸法管理が重要です。
ねじ込み式継手の寸法許容差は、径の呼びによって段階的に設定されており、6A~8Aで±1.5mm、10A~20Aで±2.0mm、25A~50Aで±3.0mmとなっています。
溶接式管継手は高圧・高温条件での使用に適した接続方法で、突合せ溶接式と差込み溶接式の2種類に大別されます。それぞれ異なる寸法体系と選定基準を持ちます。
突合せ溶接継手の寸法特性
突合せ溶接継手は、配管と継手の肉厚を同一として溶接する方式で、以下の寸法管理が重要です。
寸法表では、中心間距離(Center to Center)、継手外径、肉厚が主要項目となります。15A~300Aまでの広範囲なサイズ展開があり、特に大口径配管では突合せ溶接が標準的です。
差込み溶接継手の寸法特性
差込み溶接継手は、継手内部にパイプを差し込んで溶接する方式で、小口径配管に多用されます。重要な寸法項目は以下の通りです。
差込み深さは継手強度に直結する重要寸法で、8A~80Aの範囲で段階的に設定されています。例えば、15Aでは差込み深さ13mm、25Aでは19.1mmとなります。
Sch-80規格における寸法管理
高圧配管用のSch-80継手では、より厳格な寸法管理が要求されます。
溶接継手選定時の重要な考慮点として、配管系統の設計圧力、使用温度、流体の性質に応じた材質選定があります。特に化学プラント等では、耐食性と強度を両立する材質選定が不可欠です。
配管継手の寸法許容差は、製品品質と施工精度を保証する重要な技術基準です。JIS規格では継手の種類、材質、径の呼びに応じて詳細な許容差が規定されており、現場での品質管理指標となります。
継手種別による許容差基準
溶接式管継手の寸法許容差は、FSGP・PY400製品とその他の製品で異なる基準が適用されます。
この段階的な許容差設定は、大口径になるほど製造時の寸法管理が困難になることを考慮した合理的な基準です。
加熱炉用管継手の特殊許容差
高温用途の加熱炉用管継手では、中心間距離(P)に対して特別な許容差が設定されています。
これは熱膨張による寸法変化を考慮した設計配慮であり、高温環境での信頼性確保に不可欠な規定です。
寸法許容差が施工品質に与える影響
寸法許容差の管理不良は、以下の施工トラブルを引き起こす可能性があります。
現場における許容差確認では、ノギス・マイクロメータ等の精密測定器具を使用し、特に重要部位では複数点での寸法確認を実施することが推奨されます。
また、温度変化が大きい配管系統では、設計時の許容差に加えて熱膨張係数を考慮した余裕度設定が重要です。ステンレス鋼では約17×10⁻⁶/℃、炭素鋼では約12×10⁻⁶/℃の線膨張係数を持つため、温度差100℃の条件では相当な寸法変化が発生します。
品質管理の観点から、受入検査では全数の寸法確認、施工時では主要継手の抜取検査、完成検査では系統全体のアライメント確認という段階的な検査体制が効果的です。