防災拠点基準と設備要件選定立地条件

防災拠点基準と設備要件選定立地条件

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防災拠点基準と設備要件

防災拠点建築物の基本要件
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耐震性能の最高水準

構造体Ⅰ類・非構造部材A類・建築設備甲類の基準で、大地震後も補修なしで機能継続できる耐震安全性を確保します。

自立機能の確保

非常用電源や備蓄設備により、ライフライン途絶時でも72時間以上の自立稼働が可能な設備システムを整備します。

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立地条件の適正性

浸水想定区域や土砂災害警戒区域を避け、広域交通ネットワークへのアクセスが確保された安全な場所を選定します。

防災拠点の耐震基準と構造要件

防災拠点となる建築物には、建築基準法が要求する最低水準を超える耐震性能が求められます。国土交通省が定めた「官庁施設の総合耐震計画基準」では、災害対策の指揮や情報伝達を担う施設について、構造体Ⅰ類・建築非構造部材A類・建築設備甲類という最高水準の耐震安全性の分類を適用しています。
参考)https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/jutakukentiku_house_tk_000088.html

具体的には、構造体Ⅰ類の場合、大地震動後に構造体の補修をすることなく建築物を使用できることを目標とし、人命の安全確保に加えて十分な機能確保が図られる必要があります。これは重要度係数1.5(Is値0.9以上)に相当し、一般官庁施設の基準(Ⅲ類、重要度係数1.0、Is値0.6以上)と比較して、大幅に高い耐震性能を要求するものです。
参考)https://www.cbr.mlit.go.jp/eizen/policy/seismic/01.htm

建築物の構造計画では、免震工法の導入が推奨されており、地震発生時の揺れによる建物本体への損傷や設備へのダメージを大幅に抑制できます。国土技術政策総合研究所が策定した「災害拠点建築物の設計ガイドライン」では、大地震時の変形量を定量的に評価し、構造体・非構造部材・建築設備が一貫した考え方で設計されることを求めています。
参考)https://prdurbanosichapp1.blob.core.windows.net/common-article/60237275ece4651c88c180a8/6kouzousetubi.pdf

防災拠点等となる建築物に係る機能継続ガイドライン(国土交通省)
防災拠点建築物の立地選定から設計、運用管理までの総合的な技術基準が詳細に解説されています。

 

防災拠点の設備機能確保グレードと要件

防災拠点の設備計画では、災害時に必要な設備機能の確保を図るため、設備機能確保グレードという概念が導入されています。静岡県の「設備地震対策ガイドライン」によれば、防災拠点等では設備機能確保を図る目的から地震力により損傷しないことが基本であり、最高グレードのGS(グレードスペシャル)では耐震クラスSを基本とします。
参考)https://www.pref.shizuoka.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/029/166/guideline_1.pdf

国土交通省のガイドラインでは、大地震時における人命の安全確保及び二次災害の防止に加えて、大きな補修をすることなく必要な設備機能を相当期間継続できることを要求しています。具体的な設備要件としては以下が挙げられます。
参考)https://www.mlit.go.jp/common/001292547.pdf

📌 電力供給設備

  • 非常用発電機の容量は通常時の6割程度を確保​
  • 燃料備蓄は最低3日分、推奨は1週間分​
  • 系統電源供給の多重化と外部電源車の接続設備​

⚙️ 給排水・衛生設備

  • 防災用井戸の設置等による水源の多様化​
  • 給水車接続用の配管システム
  • 排水の一時貯留と浄化槽の活用​

🔧 通信・情報設備

建築設備の耐震設計では、配管やダクトの支持方法、機器の固定方法について、「建築設備耐震設計・施工指針」等の既往指針を参考に、十分な余裕を持った設計を行うことが求められます。​
災害拠点建築物の立地の選定、配置及び規模等(国土技術政策総合研究所)
災害拠点としての機能を継続して発揮できる立地選定の考え方が詳述されています。

 

防災拠点の選定基準と立地条件

防災拠点の立地選定では、大規模災害時においても災害対策の拠点としての機能を継続して発揮できることが最重要条件となります。内閣府の資料によれば、広域防災拠点として求められる立地条件は以下の通りです。
参考)https://www.nilim.go.jp/lab/bcg/siryou/tnn/tnn1004pdf/ks100407.pdf

安全性の確保
立地場所は、液状化発生箇所、崖地・急傾斜地等の危険区域を避けることが基本です。岐阜県の「要安全確認計画記載建築物」の指定では、昭和56年5月31日以前の旧耐震基準で建築された庁舎等について、大規模な地震が発生した場合にその利用を確保することが公益上必要な建築物として、耐震診断と改修を義務付けています。
参考)http://www.pref.gifu.lg.jp/page/16833.html

交通アクセス性
陸路・海路・空路の多様な交通ネットワークの活用が可能であり、広域交通ネットワークとの連携により各方面からのアクセスが確保されていることが求められます。防災道の駅の選定では、最寄りのインターチェンジから5km圏内かつ重要物流道路に接していることが条件の一つとなっています。
参考)https://www.homes.co.jp/cont/press/buy/buy_01811/

🏛️ 地域防災計画への位置づけ
都道府県が策定する「地域防災計画」や「受援計画」、国土交通省と都道府県で策定する「新広域道路交通計画」で、広域的な防災拠点として位置付けられていることが前提となります。​
🚁 オープンスペースの確保
中継輸送、荷さばき、分配、備蓄、広域支援部隊のベースキャンプ等に必要なオープンスペースを確保できる場所であることが必要で、防災道の駅では2,500㎡以上の駐車場を備えることが条件となっています。​
🏥 重要施設との位置関係
自衛隊の駐屯地、災害拠点病院、その他広域的な災害対策活動の展開上重要な施設との連携性を確保した位置関係であることが望ましいとされています。​

防災拠点の機能継続に向けた建築計画

防災拠点建築物の建築計画では、大地震時に施設に求められる機能を維持・継続させるために必要な規模の室、設備等を確保することが基本となります。国土交通省のガイドラインでは、外部からの応援者や避難者が想定される場合は、それらについても考慮した諸室の広さや設備容量を決定する必要があるとしています。​
活動拠点室の配置計画
大地震時の緊急対応を行う活動拠点室等については、エレベーターが停止した際のアクセスを考慮して、津波等による浸水可能性も踏まえた上で、機能継続上の影響ができるだけ小さい階に配置することが望ましいとされています。具体的には、庁舎の場合、市長室などの幹部室と危機管理関係部署をできるだけ同一階又は近接した階に配置することが推奨されています。​
業務継続のための空間確保
大地震後の復旧段階において必要とされる一時的な業務を想定し、消防・自衛隊・国及び他の地方公共団体からの派遣職員等の活動拠点や、罹災証明書の発行等に係る業務スペースを確保する計画が重要です。災害拠点建築物の規模は、拠点機能を維持・継続させるために必要十分な規模の備蓄室、設備等を確保するとともに、災害対策に必要な活動拠点室等を確保できるものとする必要があります。​
バリアフリー対応
防災拠点建築物については、平時から高齢者、障害者等の利用が想定されている庁舎、病院等はもちろん、大地震時に避難所となることが想定される施設等についても、スロープや車いす使用者用便房を設けるなど、高齢者、障害者等の利用に配慮した計画とすることが求められます。​

防災拠点における独自視点:BCP連携と段階的機能展開

防災拠点の基準を満たすだけでなく、実効性のある災害対応を実現するためには、組織の業務継続計画(BCP)と建築計画を一体的に検討することが重要です。国土交通省のガイドラインでは、建築主は地域防災計画や組織のBCPに基づき、大地震時に果たすべき役割に応じて機能継続の目標を明確にすることを求めています。​
時間軸を考慮した機能設計
総務省消防庁は、庁舎について災害時の地方公共団体の機能を低下させないよう、72時間は外部からの供給なしで非常用電源が稼働できること、停電の長期化に備えて予め燃料販売事業者と協定を締結すること等により1週間程度は災害対応に支障が出ないよう準備することを推奨しています。​
厚生労働省は、災害拠点病院の指定要件として、通常時の6割程度の発電容量のある自家発電機等を保有し、3日分程度の燃料を確保しておくことを求めています。このように、施設の種類や役割に応じて、ライフライン途絶時における自立期間の目標を設定し、それに対応した設備計画を行うことが不可欠です。​
平時からの維持管理体制
大地震時における建築物各部の点検及び継続使用の可否を判定するための手順を明確化し、使用者等に周知することが重要です。近年開発されている「構造ヘルスモニタリングシステム」を採用し、大地震後の建物状態を迅速に把握できる体制を整備することも有効な手段となります。さらに、大地震時に必要な資材等の備蓄や、代替設備の運転手順の事前整備など、日常的な準備が防災拠点の実効性を左右します。​
指定緊急避難場所の指定に関する手引き(内閣府)
避難所として指定される施設の基準や管理条件について、災害種別ごとの詳細な要件が解説されています。