

窒化処理とは、金属製品の表面層に窒素を拡散させ、表面層を硬化する熱化学(熱)処理です。
JISの用語では、窒化後にできる硬化した層を「窒化層」と呼び、表面側の「化合物層(白層)」と、その下の「拡散層」に整理して説明します。
特に「白層」という呼び方は、窒化・軟窒化などで表面に形成される窒化物等を主体とする化合物層の別名として規格側にも出てくるため、現場の会話でも通じやすい用語です。
建築従事者の視点で重要なのは、「窒化=焼入れ」ではない点です。
参考)よくあるご質問 - 東海イオン株式会社|ガス窒化・ガス軟窒化…
浸炭焼入れや高周波焼入れが“焼入れ変態”を利用して硬くするのに対し、窒化は窒素の拡散と窒化物形成で表面を硬くし、工程設計の考え方が異なります。
この違いが、寸法安定性・再加工のしやすさ・溶接可否(後述)といった現場判断に直結します。
「層」をもう一段具体化すると、白層は一次防護膜のように摩耗・腐食に効く一方、脆性が問題になる場面があり得ます。
参考)表面改質の未来を拓く — 窒化処理がつくる“硬さ+精度”の最…
拡散層は、窒素が内部へ広がることで疲労強度や耐摩耗のベースを作る領域で、部材の“表面だけ硬い”を安全に成立させる土台です。
つまり、図面や仕様で「窒化」とだけ書かれている場合でも、実務では「白層を厚くしたいのか/抑えたいのか」を先に詰めたほうが事故が減ります。
窒化処理の代表的な種類として、ガス窒化、ガス軟窒化、塩浴軟窒化(タフトライド)、プラズマ窒化(イオン窒化)などが挙げられます。
JIS用語では「ガス窒化」はアンモニアガス中で加熱して窒化する処理、「プラズマ窒化」はグロー放電のプラズマを用いた窒化(イオン窒化とも呼ぶ)として整理されています。
また「軟窒化」は、窒素を主体としつつ炭素や酸素を同時に拡散させて軟窒化層を形成する処理で、ガス軟窒化や塩浴軟窒化などの枝分かれがあります。
ガス窒化は、炉内条件(温度、アンモニア分解率、処理時間など)で白層厚みや硬化深さを調整しやすい、という説明がされています。
さらに二段窒化法のように、表面側の白層を抑えながら拡散層を深くする考え方も紹介されており、耐摩耗と脆性のトレードオフを制御する“設計”が可能です。
建築向けで言い換えると、同じ「窒化」でも、摺動部品寄り・締結部品寄り・精度部品寄りで最適条件が変わるため、加工屋任せにしないほど品質が安定します。
一方、プラズマ窒化(イオン窒化)は、放電電圧やガス組成、圧力、処理時間などを細かく制御でき、白層厚さや硬化深さを精密に調整できるという説明があります。
参考)窒化処理、浸炭処理の違いは?種類やそれぞれの特性を解説|工業…
複雑形状や“狙ったところを狙って”性能を出したい場合に検討対象になりやすいですが、仕様の書き方はガス窒化以上に具体性が要ります(例:白層を残す/除く、目標硬さ、目標深さなど)。
要求が曖昧だと、同じ名称でも工場ごとに“最適化の方向”が違い、現場での体感がバラつく原因になります。
窒化処理は、浸炭処理に比べて低温側で行われ、寸法変化が少ないことが特徴とされ、耐摩耗性・耐疲労性・耐食性の向上が期待できると説明されています。
浸炭が約900℃の高温で行われるのに対して、窒化は約500℃で処理する、という温度差の説明もあり、熱による変形や歪みのリスク感をつかむのに役立ちます。
建築の金物・治具・機構部で“あと0.2mmの狂いが致命傷”のような場面では、この低温処理という性格が強みになります。
層構造の観点では、白層(化合物層)はHv1000前後の高硬度を持つ一方、脆性がやや高いという説明があり、ただ硬ければ良いわけではない点が示されています。
その下の拡散層は、窒素が内部へ拡散し、合金元素(Cr、Al、V、Moなど)と反応・固溶して硬化に寄与する、と説明されています。
このため、摩耗だけでなく疲労(繰返し荷重)に対する“表面起点の破壊”を抑える方向に効く、という理解につながります。
意外と見落とされがちなのが、「窒化層の深さ」をどの指標で言っているかです。
参考)窒化処理とは|処理方法の種類やメリット・デメリットを紹介
JIS G 0562では、窒化層深さ(全深さ)は化合物層深さ+拡散層深さの和で、実用窒化層深さは“母材硬さ+50”に達する位置まで、と定義されています。
同じ図面に「深さ0.3mm」と書かれていても、それが全深さなのか実用深さなのかで意味が変わるため、発注側が用語を固定すると検査トラブルが減ります。
参考リンク(用語定義:窒化、軟窒化、プラズマ窒化=イオン窒化、化合物層=白層の位置づけ)
JIS B 6905:1995 金属製品熱処理用語(窒化・軟窒化・白層の定義)
参考リンク(測定と表示:窒化層深さ/実用窒化層深さ、硬さ推移曲線の取り方)
JIS G 0562:1993 鉄鋼の窒化層深さ測定方法(定義と測定手順)
浸炭処理は約850℃~1050℃の高温雰囲気で行われ、窒化処理(約500℃)より処理温度が高い、という整理がされています。
その結果として、表面硬度は浸炭処理が高い一方、窒化処理は表面硬度では劣るが寸法変化が少なく、耐摩耗性・耐疲労性・耐食性を向上できる、と比較されています。
建築目線で噛み砕くと、「超高硬度で表面を作りたい(ただし歪みやすい)」が浸炭寄り、「狙った寸法を守りつつ、摩耗・疲労・腐食の底上げ」が窒化寄り、という使い分けになります。
ただし、現場での“失敗パターン”は、硬さの数字だけを見て工法を決めてしまうことです。
たとえば、摺動部で相手材がステンレスやアルミのように柔らかいと、硬い側が勝って相手材が削れてガタが出る、という別の不具合が表に出る場合があります(硬さ=正義ではない)。
このため、建築部材の機構部では「相手材」「潤滑」「面圧」「摺動速度」まで含めて表面改質を選ぶのが安全です。
さらに“施工後”の観点では、浸炭焼入れ・高周波焼入れと窒化は根本的に異なる、というメーカーFAQの言い切りがあり、同列に扱わない姿勢が重要です。
図面や仕様書のテンプレで「表面硬化」とだけ書いてしまうと、加工側が浸炭・高周波・窒化のどれを当てるか解釈が割れるため、狙う性能と制約(変形許容、後加工有無)を明記したほうが無難です。
建築分野で窒化処理を“独自視点”で見るなら、強度計算や防錆設計よりも先に「工程順序(溶接・切削・曲げ・締付け)」へ落とし込むのが実務的です。
理由は、窒化層は表面に形成されるため、施工後の研磨・切削・ネジさらい・グラインダ仕上げで性能の中核を削り落とすリスクがあるからです(窒化は“最後に効く”処理になりがち)。
つまり、窒化処理を採用するなら「窒化後にどこを触るか」を先に潰すのが、設計と現場の摩擦を減らします。
ボルトや締結部材の観点では、表面処理の世界はめっき・塗装が主役になりやすい一方、窒化処理の一種がボルト用途で言及されている例もあり、用途次第で選択肢になります。
参考)ボルトに用いられている主な表面処理
同ページでは、窒化処理の一種についてソルトバスに浸漬して化合物層を形成する、といった説明があり、塩浴系が“短時間処理”として語られる文脈が見えます。
建築の現場感としては、摩耗・かじり・繰返し締結が絡む箇所(調整ボルト、治具のネジ、金物の摺動)で、めっきの剥離や焼付きが問題になるときに窒化系を検討すると筋が通ります。
また、品質確認のやり方を“現場目線”に翻訳しておくと、受入検査で揉めにくくなります。
JIS G 0562では、硬さ試験で硬さ推移曲線を作って深さを測る方法や、金属組織で着色状況から深さを測る方法が示されています。
建築の発注でそこまでやらないことも多いですが、「深さの定義」と「測定法の存在」を知っているだけで、トラブル時に“どこまで確認すべきか”の会話が成立します。

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