

「講習を受ければほぼ全員が合格できる」と思っていると、修了試験で不合格になって受講料2万円以上を丸ごと損します。
地山掘削作業主任者は、労働安全衛生法に基づく「技能講習」の修了によって取得できる資格です。国家試験のような独立した筆記試験ではなく、講習の最後に修了試験(筆記)を受ける形式になっています。
合格率については公式の集計データが一般に公開されているわけではありませんが、実施機関である各都道府県の労働局登録教習機関の情報や受講者の体験談をまとめると、おおむね70〜85%前後で推移していると考えられています。
意外ですね。「講習を聞いていれば全員受かる」というイメージを持っている方も多いのですが、実際には10〜30%程度の受講者が不合格になる回もあります。
修了試験は正誤問題や四択問題が中心で、科目は「作業の方法に関する知識」「工事用設備・機械・器具・作業環境などの知識」「労働災害の防止に関する知識」「関係法令」の4科目です。各科目で40%以上、かつ全体で60%以上の得点が必要とされており、1科目でも足切りを下回ると不合格になります。
これが条件です。1科目だけ極端に弱いと、全体の点数が高くても落とされるという点が見落とされがちです。
| 科目名 | 概要 | 足切りライン |
|---|---|---|
| 作業の方法に関する知識 | 掘削方法・土留め・崩壊防止など | 各科目40%以上 |
| 工事用設備・機械・器具・作業環境の知識 | 使用機械・器具の種類と安全基準 | 各科目40%以上 |
| 労働災害の防止に関する知識 | 事故事例・リスクアセスメントなど | 各科目40%以上 |
| 関係法令 | 労働安全衛生法・規則の数値規定 | 各科目40%以上 |
特に「関係法令」は数字の暗記が求められるため、ここで点を落とす受講者が多いとされています。法令の数値(掘削深さ2m以上で主任者選任が必要、など)は正確に覚えることが合格への近道です。
一般社団法人日本安全衛生技術試験協会 関連情報ページ(技能講習の概要)
この資格を取得するためには、まず受講資格を満たしていることが前提です。受講できる条件は以下のとおりです。
つまり実務経験が条件です。年齢と経験年数を両方クリアしていないと、申し込み自体ができません。経験年数の証明は「事業者証明書」(会社の証明印が必要な書類)が必要になるため、事前に会社の担当部署に依頼しておく必要があります。
申し込みの流れは以下のとおりです。
受講料は機関によって異なりますが、20,000円前後が相場です。不合格になると再試験費用が別途発生する機関もあるため、一発合格を目指すことが経済的にも重要です。
登録教習機関は全国にあり、建設業労働災害防止協会(建災防)や各地の安全衛生技術センター関連機関が実施しています。自分の勤務地や自宅に近い機関を選ぶと通いやすくなります。
建設業労働災害防止協会(建災防)公式サイト|技能講習の実施機関として全国で地山掘削講習を開催しています
講習は通常2日間(計15時間)で構成されています。学科講習がメインで、実技講習は含まれない点が特徴です。
実技なしというのは資格の性質上のことで、現場では実際の掘削作業を安全に管理するための知識と判断力が問われます。そのため学科の内容は現場の実態に沿った実践的なものが多く、テキストを単に丸暗記するだけでは対応しにくい問題も出題されます。
出題傾向として特に注意が必要なのは次の3点です。
数字が多いですね。これらの数値は「なんとなく」覚えているだけでは試験で選択肢を絞り込めません。テキストの表を繰り返し確認して正確に覚えることが大切です。
関係法令については、労働安全衛生法第14条(作業主任者の選任義務)や、労働安全衛生規則(第360条〜第380条付近)の内容が出題されます。法律の条文そのものよりも、「何mのときに何が必要か」という実務的な数値の組み合わせを問う問題が多いのが特徴です。
講習テキストには過去問に準じた確認問題が掲載されている場合も多く、受講前にテキストを手に入れられる機関では事前学習が有効です。機関によっては受講者専用のWebページで練習問題を公開しているところもあります。確認するのがおすすめです。
合格率を安定させるためには、講習中のメモと復習の組み合わせが最も効果的です。講師が「ここは試験に出ます」と明示する箇所は確実にマークし、数値は別ノートにまとめる習慣をつけると整理しやすくなります。
効率的な勉強法として現場経験者から評価が高いのは、数値の一覧表を自分で手書きでまとめる方法です。掘削深さと勾配の関係、土止め支保工の点検タイミングなど、試験頻出の数値を一枚の紙にまとめると記憶に定着しやすくなります。
これは使えそうです。書く作業が記憶の定着を助けるのは学習心理学的にも支持されています。
また、法令科目は条文の文言そのものを追うより、「何が禁止か」「何が義務か」「どの数値が境界線か」という観点で整理するのが効率的です。以下のような視点で整理すると理解が深まります。
2日間の講習の直後に試験が行われるため、試験対策は事前準備が鍵を握ります。受講日程が決まったら最低でも3〜5日前からテキストの流し読みを始めることで、講習中の理解度が大きく変わります。
市販の参考書として「地山掘削作業主任者 技能講習テキスト」(中央労働災害防止協会発行)が広く使われています。この書籍は講習テキストとほぼ同内容であり、受講前の予習として非常に有効です。受講機関によっては当日配布されるケースもあります。
中央労働災害防止協会(中災防)発行テキスト情報ページ|地山掘削・土止め支保工関連の技能講習テキストが確認できます
資格を取得した後、現場での役割を正確に理解しておかないと法令違反につながるリスクがあります。これは多くの実務者が見落としがちな点です。
労働安全衛生法第14条は、掘削面の高さが2m以上となる地山の掘削作業について、地山掘削作業主任者を選任し、その者に作業を直接指揮させることを義務づけています。この「2m以上」という基準を知らずに現場を動かすと、労働基準監督署の監督・指導の対象になります。
厳しいところですね。主任者不在での作業は、事故が発生した場合に会社側の責任が大幅に重くなります。
さらに見落とされがちなのが、地山掘削作業主任者と土止め支保工作業主任者は別の資格だという点です。掘削だけでなく土止め支保工の設置・撤去作業が伴う場合は、土止め支保工作業主任者の別途選任が必要になります。両方の作業を1人で担当させたいなら、両資格を取得している人材が必要です。
2つの資格を混同して「地山掘削の主任者を選任したから問題ない」と思い込むと、土止め支保工の作業管理が法的にカバーされていない状態になります。これが現場でよく起きる選任ミスの一つです。
また、主任者は作業の直接指揮が義務づけられており、書類上の名前だけの選任(いわゆる「名義貸し」状態)は違反になります。実際に現場に立ち会い、作業員に指示を出せる体制を整えることが求められます。
建設業における元請・下請の関係でも、下請会社の作業員が主任者を担う場合は、元請からの適切な管理・連絡体制が必要です。安全書類(グリーンファイル)への記載漏れも是正指導の対象になるため、工事着工前の書類確認は怠らないようにしましょう。
厚生労働省|労働安全衛生に関する法令・通達・情報一覧ページ(作業主任者の選任義務の根拠法令確認に有用)