第二種中高層住居専用地域の高さ制限と斜線規制の全知識

第二種中高層住居専用地域の高さ制限と斜線規制の全知識

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第二種中高層住居専用地域の高さ制限と斜線規制を正しく理解する

日影規制が指定されている敷地では、北側斜線制限の検討が不要になります。


📋 この記事の3ポイント要約
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絶対高さ制限はないが、制限はある

第二種中高層住居専用地域に「絶対高さ制限」はありません。ただし道路斜線・隣地斜線・北側斜線・日影規制という4種類の高さ制限が複合的にかかります。

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日影規制で北側斜線が不要になる

日影規制が指定されている場合、北側斜線制限は適用除外になります。この「どちらか一方のみ」のルールを知らないと、二重に検討して設計を過剰に絞る原因になります。

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高度地区・自治体条例にも要注意

建築基準法上の制限を満たしても、自治体が独自に定める「高度地区」の斜線制限が上乗せされるケースがあります。東京都の高度斜線は、北側斜線より大幅に厳しい場合があります。


第二種中高層住居専用地域における高さ制限の基本的な考え方

第二種中高層住居専用地域は、都市計画法に基づく13種類の用途地域のうちの1つで、「主として中高層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域」と定義されています。建築業に携わっていると、この地域の高さ制限を「絶対高さ制限がないから、ある程度自由に高く建てられる」とざっくり理解しているケースが少なくありません。


絶対高さ制限がないのは事実です。第一種・第二種低層住居専用地域では建物の高さは10mまたは12m以内に制限されますが、第二種中高層住居専用地域にはこの上限値そのものが存在しません。しかし、高さを規制する仕組みが全くないわけではありません。


この地域では、以下の4種類の高さ制限が重複してかかります。


































制限の種類 適用の有無 主な内容
絶対高さ制限 ❌ なし 上限なし(低層住居系のみ適用)
道路斜線制限 ✅ あり 適用距離20~35m、勾配1.25または1.5
隣地斜線制限 ✅ あり 立ち上がり20mまたは31m+勾配
北側斜線制限 ⚠️ 条件付き 立ち上がり10m+勾配1.25(日影規制指定時は除外)
日影規制 ✅ あり 高さ10m超の建築物が対象


これらは全て建築基準法(主に56条・56条の2)に根拠を持つ規制です。つまり、絶対高さ制限がないからといって自由に高く建てられるのではなく、斜線制限と日影規制によって実質的な高さの上限が決まるということです。基本はこれが原則です。


設計の段階でこれを見落とすと、確認申請が通らなかったり、最悪の場合は設計のやり直しというコストが発生します。「絶対高さ制限がない=何でも建てられる」という認識は、設計上の大きなリスクにつながります。


参考:第二種中高層住居専用地域の制限詳細(建ぺい率・容積率・斜線制限の一覧)
第二種中高層住居専用地域についてわかりやすくまとめた|イクラ不動産


第二種中高層住居専用地域の道路斜線制限と隣地斜線制限の計算方法

道路斜線制限と隣地斜線制限は、第二種中高層住居専用地域でも必ず検討しなければならない制限です。それぞれの仕組みを正しく把握しておくことが、設計の基本になります。


道路斜線制限は、道路の採光や通風を確保することを目的とした制限で、すべての用途地域に適用されます。第二種中高層住居専用地域での具体的な数値は以下の通りです。


- 適用距離:20m・25m・30m・35m(都市計画で指定)
- 勾配:1.25または1.5


例えば、勾配1.25・適用距離20mの地域の場合、道路の反対側の境界線から水平距離1mごとに1.25mずつ建物の高さが増やせるイメージです。勾配1.5なら、より高い建物を計画できる分、余裕が出ます。これは使えそうです。


隣地斜線制限は、隣地境界線を基準に建物の高さを制限するものです。住居系地域では次の計算式が基本となります。


> 立ち上がり高さ(20m)+ 隣地境界線までの距離 × 1.25 ≧ 建築物の高さ


ただし、「立ち上がりが20mか31mか」は用途地域によって異なります。第二種中高層住居専用地域を含む住居系地域では立ち上がり20mが適用されます。商業・工業系地域の立ち上がり31mと混同しやすいため、確認が必要です。立ち上がり20mということは、建物の高さが20m以下であれば、隣地斜線制限は実質的に問題になりません。



















地域区分 立ち上がり 勾配
住居系(第二種中高層住居専用地域など) 20m 1.25
商業・工業系 31m 2.5


実際の設計では、これら複数の制限を同時に満たす「最も厳しい線」を探すことになります。道路斜線・隣地斜線・北側斜線(または日影規制)のうち、最も制約が強い条件が建物の高さの実質的な上限を決めます。厳しいところですね。


また、道路斜線制限には「天空率」による緩和制度があります。通常の斜線制限をオーバーする設計でも、天空率(空の見える割合)が一定基準を満たせば適合させられる制度です。一方で、北側斜線制限の代替となる高度斜線制限には天空率が使えないケースもあるため、自治体ごとの確認が欠かせません。


参考:隣地斜線制限の計算方法と適用地域の詳細
隣地斜線制限とは|建築基準法をわかりやすく解説【後退緩和も】


第二種中高層住居専用地域の北側斜線制限と日影規制の関係性

第二種中高層住居専用地域における高さ制限で、最も誤解が多いのが「北側斜線制限と日影規制の関係」です。この2つには、建築基準法上の重要なルールが定められています。


北側斜線制限とは、北側隣地の採光・通風を確保するために、建物の北側の高さを制限するものです。計算式は次の通りです。


> 10m + 1.25 × 真北方向の水平距離(m)≧ 建築物の高さ


第一種・第二種低層住居専用地域では立ち上がりが「5m」ですが、第二種中高層住居専用地域では「10m」になります。つまり、北側から距離が離れるほど高い建物が建てられる余裕が増えます。


ここが重要なポイントです。 建築基準法56条第1項第3号の規定により、第一種・第二種中高層住居専用地域において日影規制が指定されている場合、北側斜線制限は適用除外になります。


つまり「日影規制と北側斜線制限はどちらか一方のみ」というルールが存在します。


🔑 実務上の重要な確認事項。
- 日影規制が指定されている → 北側斜線制限は不要(適用除外)
- 日影規制の指定がない → 北側斜線制限を検討する必要がある


実際には、第二種中高層住居専用地域のほとんどのエリアで日影規制が指定されているため、北側斜線制限を個別に検討するケースは少ないとされています。それでも「日影規制の有無」を事前に確認する手順を省くと、設計上の無駄な制限を加えてしまったり、逆に必要な確認を怠るリスクにつながります。


日影規制の対象と規制値も整理しておきましょう。




















項目 内容
対象建築物 高さ10mを超える建築物
測定面の高さ 4mまたは6.5m(都市計画で指定)
規制値の例 3時間-2時間 / 4時間-2.5時間 / 5時間-3時間


高さ10m以下の建物は日影規制の対象外です。つまり、3階建て程度(高さ約9~10m以下)の建物であれば日影規制を受けないということです。これだけ覚えておけばOKです。


北側斜線制限の検討では「真北」を使う必要がある点も見落としがちな注意点です。磁石が示す「磁北」とは約7度のズレがあるため、磁北で計算して設計を進めると、後で真北に修正したときに法規上アウトになるケースがあります。


参考:北側斜線制限と日影規制の関係を建築法規の専門家が解説
北側斜線制限とは?計算式や日影規制との関係性について解説|建築基準法.com


第二種中高層住居専用地域の高さ制限と高度地区・自治体条例の上乗せ規制

建築基準法上の制限を理解しただけでは、実務上は不十分な場合があります。多くの自治体では「高度地区」という都市計画上の制限を独自に上乗せしているためです。


高度地区は、建築基準法56条の斜線制限(北側斜線制限など)とは全くの別物です。こちらは都市計画法に基づいて各自治体が独自に定める規制で、その具体的な内容は自治体ごとに大きく異なります。


最も典型的な事例が東京都の高度地区です。東京都では第二種中高層住居専用地域を含む多くの用途地域に対して高度斜線制限が設けられており、その内容は建築基準法の北側斜線制限より明らかに厳しい場合があります。


















種別 勾配(第1種高度地区) 勾配(第2種高度地区・真北8m以上)
建築基準法の北側斜線 1.25
東京都・高度斜線制限 0.6(第1種) 0.6(第2種・距離8m超の場合)


北側斜線制限の勾配1.25に対して、東京都の第1種高度地区の勾配は0.6です。0.6というのは、水平方向に1m進むごとに高さが0.6mしか増やせないということで、勾配1.25と比べて建物をかなり低く抑えなければならないことを意味します。意外ですね。


さらに、東京都の高度斜線制限には「天空率による緩和が使えない」というルールがあります。建築基準法上の斜線制限なら天空率で緩和を受けられる場合でも、高度地区の制限には適用されないため、設計の自由度が大きく制約されます。


この点は設計の前半で必ず確認が必要です。高度地区の有無・種別・具体的な規制値は、敷地の所在する自治体の都市計画情報(多くの場合、自治体の公式サイトでGIS上で確認可能)で調べることができます。確認する前に設計プランを詰めすぎると、後から全て修正するという余分な工数が発生します。


高度地区が設定されているかどうかは、自治体の「都市計画情報・用途地域マップ」でワンクリックで調べられます。国土交通省の「国土数値情報ダウンロードサービス」でも確認できます。設計着手前に1回確認するだけで、大きなやり直しリスクを回避できます。


参考:国土交通省・建築基準法の集団規定に関する資料(高度地区の解説を含む)
建築基準法(集団規定)解説資料|国土交通省(PDF)


第二種中高層住居専用地域の高さ制限における設計上の落とし穴と実務ポイント

第二種中高層住居専用地域の高さ制限にまつわる設計上の失敗やトラブルは、実務の現場でも繰り返し起きています。以下では、建築業従事者として特に押さえておくべき実務ポイントを整理します。


落とし穴① 塔屋(ペントハウス)を北側斜線制限の高さから除外するミス


道路斜線制限や隣地斜線制限では、塔屋(ペントハウス)は建築物の高さから除くことが認められています。そのため「塔屋は高さ算定から除く」という認識が広まっています。しかし、北側斜線制限においては、塔屋は高さから除くことができません。




















制限の種類 塔屋の扱い
道路斜線制限 高さに含まない(除外可)
隣地斜線制限 高さに含まない(除外可)
北側斜線制限 ⚠️ 高さに含む(除外不可)


「道路斜線・隣地斜線は大丈夫だから塔屋もOK」と思い込んで北側斜線の検討をすると、後で塔屋が制限に抵触していることが判明するケースがあります。これは痛いですね。


落とし穴② 容積率の前面道路幅員による制限を見落とす


第二種中高層住居専用地域では容積率の上限が100〜500%と幅広く設定されています。しかし、都市計画で指定された容積率がそのまま使えるとは限りません。前面道路の幅員が12m未満の場合、次の計算が適用されます。


> 前面道路幅員(m)× 40(住居系地域は原則)= 上限容積率(%)


例えば、都市計画で容積率300%が指定されていても、前面道路が6mの場合は「6×40=240%」が実質的な上限になります。指定容積率と道路幅員容積率を比較して、低い方が適用されます。容積率の上限が思ったより低い、という結果が出ることがあるため、建物の高さや階数計画に影響します。


落とし穴③ 用途地域がまたがる敷地での制限適用を誤る


一つの敷地が複数の用途地域にまたがる場合、制限の適用方法が制限の種類によって異なります。


- 建ぺい率・容積率 → 敷地面積の割合(加重平均)で計算
- 高さ制限(斜線制限)→ 各部分がそれぞれの用途地域の制限を受ける


つまり、敷地の一部が第二種中高層住居専用地域に属していても、建物の各部分が位置する用途地域の高さ制限が個別にかかる点に注意が必要です。「敷地の大部分が第二種中高層だから全体をそれで計算」というやり方は誤りです。


確認申請前に、役所窓口や指定確認検査機関での事前相談を活用するのが、設計の手戻りを防ぐ最も実効性の高い方法です。複数の法規制が絡む案件では、相談1回で問題点が早期に発見できることも多く、結果的に大きな時間節約につながります。


参考:異なる用途地域にまたがる場合の制限の考え方
異なる用途地域にまたがる場合の制限まとめ|イクラ不動産