電気容量と消費電力の違いとは?建築業での活用方法

電気容量と消費電力の違いとは?建築業での活用方法

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電気容量と消費電力の違い

電気容量と消費電力の基本
電気容量とは

建物や設備に供給できる電力の最大値を示す指標で、アンペア(A)やkVAで表示されます

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消費電力とは

電化製品や設備が実際に使用する電力量で、ワット(W)やkWで表されます

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両者の関係性

電気容量は供給能力、消費電力は使用量を表し、容量が消費電力を上回る必要があります

電気容量の定義と建築現場での役割

電気容量とは、建物や設備に供給される電力の最大量を表す指標です。具体的には、一定の時間内に使用できる電力の最大値を示し、主にアンペア(A)やkVA(キロボルトアンペア)という単位で表されます。一般的な住宅の場合、電気容量は100Aから200A程度が標準的ですが、大型の建築物や工場などではより高い容量が必要となります。

 

建築現場では、変電設備及び幹線サイズの選定において電気容量の見極めが極めて重要になります。容量が大きくなると機器が高価になると共に、設置場所を広く確保しなければなりません。逆に小さく見積もると、電力不足による機器の不安定な動作や故障、頻繁なブレーカー作動による業務の中断、最悪の場合は過負荷による発熱や火災の原因にもなりかねません。

 

電気容量の計算には、建物の使用予定や設備の種類、電力の消費量などを考慮する必要があります。エアコンや電気ストーブなどの大電力を必要とする設備が多い場合は、より高い電気容量が必要となります。

 

消費電力の定義と計算方法

消費電力とは、電化製品や設備を動かすために実際に消費される電力量のことで、ワット(W)やキロワット(kW)で表示されます。消費電力は「電圧(V)×電流(A)」という計算式で求めることができ、日本の一般家庭では電圧が100Vのため、例えば消費電力が1,300Wの食器洗い乾燥機は、1,300÷100で13Aの電流が流れることになります。

 

消費電力が大きい電化製品では、ワットではなく、キロワット(kW)で表示されている場合もあり、1kW=1000Wとなります。電気料金は、このワット数と使用時間をもとにして算出されるため、消費電力(kW)×使用時間(h)×電気料金単価(円/kWh)という計算式で電気代を求めることができます。

 

建築業従事者が知っておくべき点として、各電気機器や設備の消費電力を把握し、同時に使用される場合の最大消費電力を求める必要があります。例えば、キッチンでオーブン、電子レンジ、炊飯器を同時に使用する場合、それぞれの消費電力を足し合わせた値を使用して電気容量を計算します。

 

電気容量と消費電力の単位の違い

電気容量と消費電力では、使用される単位が異なり、それぞれの役割も異なります。電気容量はkVA(キロボルトアンペア)という単位で表されることが多く、これは電力の供給能力や設備の電力設計を行う際に使用されます。1kVAは1,000ボルトアンペアに相当し、実際の電力使用量(kW)とは異なり、装置の最大容量を表します。

 

一方、消費電力はW(ワット)やkW(キロワット)で表され、消費電力の制御や管理を行う際に使用されます。kVAをkWに変換するには、力率を考慮する必要があります。力率とは、実際に使用される有効電力と皮相電力の比率を示すもので、無駄な電力がどれだけ少ないかを表しています。

 

計算式は「kW = kVA × 力率」となり、例えば、kVAが5kVAで、力率が0.8の場合、kWは5kVA×0.8=4kWとなります。家庭用の電子機器では通常、力率は0.8から1.0の範囲にあります。建築現場で高圧電力を扱う場合、この変換が重要になります。

 

単位 用途 意味
kVA(キロボルトアンペア) 電気容量 電力供給能力・設備の最大容量
kW(キロワット) 消費電力 実際に使用される電力量
A(アンペア) 電流 電気が流れる量
V(ボルト) 電圧 電気を押し出す力

電気容量不足が引き起こす問題と対策

電気容量が不足すると、建築現場や建物運用時にさまざまな問題が発生します。最も一般的な問題は、過負荷によってブレーカーが頻繁に落ちることです。ブレーカーが落ちると、作業の中断や業務の停止につながり、生産性が大幅に低下します。また、電力供給が不安定になり、機器が正常に動作しない、最悪の場合は過負荷による発熱や火災の原因にもなりかねません。

 

マンションなどの集合住宅では、各住戸の電気容量の上限が建物全体の電力設備によって決まっています。無理にそれ以上の電気容量を上げると、多くの住戸がそれぞれに電気容量を上限以上に上げてしまい、電力幹線の限度を超えると、電力供給がストップ、つまり停電になってしまいます。

 

電気容量不足に対処するための対策としては、以下のような方法があります。

 

  • 容量(契約アンペア)変更を行う:オフィスのリソース拡大が軽微な場合に有効
  • 配線やブレーカーの交換:古い建物では配線やブレーカーが古くなっている場合、新しいものに交換することで電気容量を増やすことができる
  • 省エネ対策の実施:エネルギー効率の高い電化製品や設備を導入することで、同じ機能を持つ場合でも電力の使用量を減らすことができる
  • 電力会社への申請:供給容量を増やすための申請手続きを行う

空き回路があれば天井裏に配線をするなど、建物の構造を合わせて対策も考えられます。このような工事を行う場合は、必ず電気工事の詳しい専門家に相談することが重要です。

 

建築現場での電気容量計画の実践方法

建築現場で電気容量を適切に計画するためには、段階的なアプローチが必要です。まず、現場で使用するすべての電気機器や設備をリストアップし、それぞれの消費電力を把握します。建設作業用重機の多くは、ディーゼルエンジンを動力源としていますが、最近では電気式のものも増えてきました。また、夜間にも作業をする建設現場なら、照明なども設置する必要があります。

 

次に、各機器や設備の消費電力を合計し、同時に使用される場合の最大消費電力を求めます。一般的には、最大消費電力の1.25倍を目安に計算されます。これは、電気容量を余裕を持たせるためのものであり、将来的な電気機器の追加や増設にも対応できるようにするためです。

 

建設現場では、電力消費が500キロワットまでなら高圧小口、2,000キロワットまでなら高圧大口を選びます。2,000キロワットを超える場合には特別高圧の契約が必要です。高圧小口と高圧大口の契約では、6.6キロボルトの状態で電力会社から供給されるため、キュービクルという装置を使用して100Vや200Vに変圧する必要があります。

 

💡 電気容量計画のポイント

  • すべての電気機器の消費電力をリストアップする
  • 同時使用される機器を考慮した最大消費電力を算出する
  • 将来の増設を見越して余裕を持った容量を確保する
  • 専門の電気工事業者や設計士に相談する

工期が1年未満なら臨時電力契約を利用することができますが、料金が通常の電力供給契約と比べて2割程度高めになります。工期が1年以上にわたる場合には、通常の電力供給契約を締結することで、料金面でのメリットが得られます。

 

テナントビルや飲食店の電気容量計算について、kWとアンペアの関係を詳しく解説したこちらの資料
建築業従事者として、電気容量と消費電力の違いを正確に理解し、適切な電気容量計画を立てることは、安全で効率的な現場運営に不可欠です。電気容量は供給能力を、消費電力は実際の使用量を表すという基本を押さえた上で、専門家と連携しながら最適な電気設備を設計することが重要です。