

力率とは、電源から送り出される皮相電力のうち、実際に仕事として使われる有効電力が占める割合を示す指標です。力率は「有効電力(W)÷皮相電力(VA)」という計算式で求められ、0から1(または0%から100%)の範囲で表されます。力率が1に近いほど、電力が効率よく使われていることを意味します。
参考)https://dengen-navi.com/wp/glossary/%E5%8A%9B%E7%8E%87/
建築業の高圧電力契約では、力率が電気料金に直接影響する仕組みになっています。具体的には、力率85%を基準として、85%を1%上回るごとに基本料金が1%割引され、逆に85%を1%下回るごとに基本料金が1%割増しされます。この力率割引・割増制度により、力率を改善することで電気料金のコスト削減が可能になるのです。
参考)https://business.enechange.jp/blog/power-factor-discount
電力会社が力率割引制度を設けている理由は、力率が低いと送電線や変圧器に無駄な電流が流れ、設備への負担が増加するためです。建築現場で使用される電動工具やモーター類は、遅れ力率を発生させる負荷であり、力率が80%程度まで低下することも珍しくありません。
参考)https://d-advisers.jp/power-factor/
力率改善による電気料金削減効果を具体的に計算してみましょう。契約電力200kW、基本料金単価1,989円/kW・月の建築現場を例に、力率を80%から100%に改善した場合を考えます。
参考)https://j-net21.smrj.go.jp/development/energyeff/Q1232.html
力率100%の場合、割引係数は0.85(15%割引)となり、年間基本料金は以下のように計算されます。
計算式:基本料金単価 × 契約電力 × 割引係数 × 12か月
この計算から、力率を80%から100%に改善することで、年間約48万円もの基本料金削減が可能であることがわかります。力率85%と比較しても年間約36万円の削減効果があり、建築業の経営において無視できない金額です。
より簡易的な試算方法として、以下の式も活用できます。
削減金額 = 契約電力 × 基本料金単価 × 力率改善率 × 12か月/年
例えば力率を80%から100%に改善する場合、力率改善率は20%となり、この式に当てはめることで削減効果を素早く計算できます。
力率改善を実施する際には、適切な容量の進相コンデンサを設置する必要があります。進相コンデンサは無効電力を打ち消す「進み電流」を供給することで、力率を改善する装置です。
参考)https://denki-study.com/%E3%80%90%E9%AB%98%E5%9C%A7%E3%80%91%E9%80%B2%E7%9B%B8%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%87%E3%83%B3%E3%82%B5%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6/
必要なコンデンサ容量を計算する手順は以下の通りです。
ステップ1:有効電力を把握する
建築現場の最大電力(例:200kW)を有効電力として採用します。
ステップ2:皮相電力を計算する
皮相電力 = 有効電力 ÷ 現状の力率
例:200kW ÷ 0.8 = 250kVA
ステップ3:無効電力を算出する
無効電力 = √(皮相電力² - 有効電力²)
例:√(250² - 200²) = 150kVA
この計算により、力率80%から100%に改善するためには、150kVAの進相コンデンサが必要であることがわかります。ただし、実際の工場稼働時の平均受電電力を把握できれば、必要なコンデンサ容量はこれより小さくなる可能性があります。
進相コンデンサを設置する際は、通常、直列に小容量のリアクトルを接続します。これは開閉時の突入電流低減や電源高調波の抑制を目的としており、リアクトルの容量は一般的にL=6%が採用されます。実施に際しては、電気主任技術者や電気専門企業への相談が不可欠です。
参考)https://www.pref.osaka.lg.jp/documents/9214/r1kouzi-056a.pdf
進相コンデンサの設置工事にかかる費用は、容量や設置条件によって異なります。高圧進相コンデンサの実際の施工例を見ると、油入式L=6%・30kVar程度のコンデンサで約40万円程度の費用がかかります。より大容量の50kVar程度になると約59万円前後となり、これに直列リアクトルや工事費用が加算されます。
参考)https://www.kyouden.net/about/price.html
建築現場での設置工事では、以下のような作業が必要です。
参考)https://www.tsjiba.or.jp/wp-content/uploads/2021/09/211001_04utiwakesyo.pdf
参考)https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q14208072199
工事期間は通常2日間程度(実働)で完了します。設置場所は受変電設備内(キュービクル内)となるため、既設変圧器一次側(高圧側)に追加で取り付ける形が一般的です。
参考)https://www.fides-inc.jp/letter/letter-2309/
進相コンデンサの更新工事については、電力会社への申請は不要です。ただし、電気保安協会と契約している場合は、別途検査費用が発生することに注意が必要です。キュービクル全体の更新を伴う場合は、より大規模な工事となり、費用も数百万円から千万円台となります。
建築現場で力率改善を実施する際には、いくつかの注意すべき点があります。まず重要なのが、夜間や休日など負荷が少ない時間帯の管理です。進相コンデンサが投入されたままになっていると、力率が1を大きく超えて「進み力率」となり、異常電圧が発生する恐れがあります。
参考)https://www.ksdh.or.jp/information/saving/facility01.html
この問題に対処するため、力率自動調整装置の導入が推奨されます。この装置は進相コンデンサの投入量を自動的に制御し、負荷状況に応じて力率を適正範囲に保つ機能を持っています。建築現場では工事進捗により電力使用量が日々変動するため、自動調整機能は特に有効です。
参考)https://www.enegaeru.com/30-minutedemanddataanalysisguide
また、建築現場で使用されるインバータ機器が多い場合、高調波の影響にも注意が必要です。高調波対策として、進相コンデンサに直列リアクトル(L=6%)を接続することで、5次・7次高調波を主体とした影響を低減できます。
参考)https://jcmanet.or.jp/bunken/kikanshi/2005/03/054.pdf
力率改善効果を最大化するには、設置位置も重要です。負荷に近い場所にコンデンサを設置するほど、配線損失の低減効果が高まります。ただし建築現場の仮設電気設備では、受変電設備内への集中設置が一般的です。
参考)https://craft-setsybi.info/?p=18
定期的な力率測定と改善状況のモニタリングも欠かせません。電力会社との契約条件を見直しながら、8時から22時の使用時間帯における有効電力量と無効電力量を確認し、継続的な改善を図ることが重要です。
参考)https://sennan-denki.jp/column/detail/20250810090036/
力率割引の詳細な仕組みと計算例については、こちらの記事で具体的な数値を使った解説が参考になります
中小企業向けの力率改善方法と試算条件については、中小企業基盤整備機構のQ&Aサイトが実践的な情報を提供しています
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